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ショートショート

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「こうだったらいいな」「ああなりたいなぁ」「もしもこうだったら怖いなぁ」たくさんの「もしも」の世界です。
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血のりはたっぷりのケチャップで(ショートショート)【音声と文章】

※note毎日連続投稿1700日をコミット中! 1645日目。 ※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む、 どちらでも数分で楽しめます。 おはようございます。 山田ゆりです。 今回は 血のりはたっぷりのケチャップで(ショートショート) をお伝えいたします。 ユミは肩に大きな重みを感じながら帰宅した。 今日のプレゼンはあまり良くなかった。 最後のあのタイミングで先方の責任者が難色を示した。 結局、「とりあえず上にあげてみます。」という終わり方になった。 つまりは今回の件は失敗に終わったのだ。 自分なりに頑張ったつもりだったからユミの落胆は大きかった。 こんな日は大好きな推しの動画を観て早く寝よう。 ユミは自宅の風除室に入った。 下は宅配便の荷物が入るようになっていて 上の段に郵便物を入れる、大きな白いポストがある。 その一番上にはかぼちゃとお化けの飾りが施された一角がある。 イベント好きな妹のカオリが季節ごとに飾っているのだ。 そういう事には無頓着なユミからすると、まめな妹だと思う。 来年の春からの就職先は内定済みで今が一番気楽な時期かもしれない。 ユミは鍵を挿し玄関のドアを開けた。 重厚なドアを開けた先の玄関は6畳くらいの広さがあり階段がすぐ目の前にあった。 そして階段のすぐ下に カオリがぐったりして倒れていた。 「カオリ!」 ユミは鞄を置いてすぐにカオリの肩をさすった。 顔は横を向いていて額に少し血がついていた。 お母さんはまだ仕事から帰ってこない時間だ。 お父さんは出張中で明後日帰ってくる。 と言うことは自分しかいない。 ええと、携帯、携帯。 ユミはハンドバックの中を荒々しく探った。 ところで救急車は何番だっけ? 一瞬でたくさんのことが頭の中で去来した。 するとカオリは笑い出した。 「あはははは~。お姉ちゃんおかえりー!」 なんだ、冗談だったのか。 もぉ! 額の血はケチャップだった。 お茶目でサプライズ好きの妹である。 ユミは怒りたい気持ち半分、安堵半分だった。 でも、さっきまでの落ち込みはこのドタバタにより無くなってしまったから、カオリに感謝してもいいかも。 でも、悪い冗談である。 こんなことは止めてほしい。 ** 10月の最終日、ユミはいつも通りの時間に帰宅した。 風除室のポストの上はまだハロウィンの飾りのままだった。 いつもだったら最終日にはすぐに次の飾りに変えているのに。 カオリにしては珍しいことだ。 内定先からいろいろとレポートの提出依頼が来ていると言っていたから、忙しいんだろうなぁ。 そう思いながら玄関に鍵を挿しドアを開けた。 目の前にカオリが倒れていた。 一瞬ドキッとしたがユミは落ち着いていた。 「もぉ!2日続いて同じことしたら効果ないんだから。」 「まー大変。カオリ、大丈夫(棒読みで)」 ユミはカオリを素通りしてトイレに入った。 トイレに座ってインスタを見始めた。 あっという間に5~6分すぎてしまった。 アブナイ、アブナイ。 こんなことで時間はあっという間に過ぎていくのよね。 ユミはキッチンで水を飲んだ。 はぁ~っと大きく息を吐きだした。 それは今日一日のたくさんの出来事を脳内から吐き出しているようだった。 ユミは仏間に入り、カネを3つたたいて合掌した。 そしてお供えのバナナを1本もぎ取り壁に飾られた数々の遺影を眺めながら食べた。 やっぱり家が一番安心する。 バナナを食べ終わって皮を捨てようとキッチンに行った。 ふと、カオリが玄関から戻って来ていないことに気が付いた。 想像していたリアクションをしてあげなかったから拗ねているのかな。 そう思い、階段のところにユミは戻った。 今回の血のりのケチャップは頭部につけていた。 これでは床にしみがついてしまうではないか。 早く拭かないといけない。 それにしても、頭部のケチャップはなんとなくさっき見た時よりも量が多くなっている気がした。 「カオリ~、そろそろご飯にしよう~」 ユミは倒れているカオリの肩をゆすった。 すると目を開いたままのカオリの顔がこちらに見えた。 目を大きく開け、上を向いていて、口が変なカタチで開いていた。 カオリはこんな顔をする子ではない。 えっ! そこで初めて事実が飲み込めた。 救急車は何番だったっけ? えーと、分からない。 「カオリ-!救急車は何番だっけー?」 あ、カオリはここにいるんだった。 ユミは混乱しながらやっと救急車を呼んだ。 今回は 血のりはたっぷりのケチャップで(ショートショート) をお伝えいたしました。 本日も、最後までお聴きくださり ありがとうございました。  ちょっとした勇気が世界を変えます。 今日も素敵な一日をお過ごし下さい。 山田ゆりでした。 ◆◆ アファメーション ◆◆ .。*゚+.*.。.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。 私は愛されています 大きな愛で包まれています 失敗しても ご迷惑をおかけしても どんな時でも 愛されています .。*゚+.*.。.。*゚+.*.。゚+..。*゚+

天秤はどちらに傾くの?(ショートショート)【音声と文章】

※note毎日連続投稿1700日をコミット中! 1643日目。 ※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む、 どちらでも数分で楽しめます。 おはようございます。 山田ゆりです。 今回は 天秤はどちらに傾くの?(ショートショート) をお伝えいたします。 「この場合の勘定科目は何になりますでしょうか。」 入社したてのA営業所のケイコから社内メールが届いた。 ユキコはすぐにあの科目だとは思ったが一応、これまでの総勘定元帳を調べて、同じものがあったかを調べた。 会社によって使う科目が違うから、すぐにはお答えできない。 最終的には、損金算入されるのだったら多少の科目の違いがあっても大丈夫なのだが しかし この時はこの科目 と、決めておかないと お小遣い帳とは違い、企業のものなのだから気を引き締めないといけない。 見た目以上に発想が自由なユキコは 自分事だったら、そのあたりは融通を利かせるのが本音だが。 「それは〇〇の科目になります。 会社によっては△△という科目を使用するところもありますよね。それでも間違いではありませんが、ウチの会社はこの科目で統一していますので、〇〇をご使用ください。」 ユキコは言葉を選んでメールをした。 まもなく、お礼のメールが届いた。 その中には、個人的な感情を書いている部分があった。 入社したてで何も分からない。A営業所は事務が一人で相談する人もいないなど。 「これはまずい」 ユキコはあたり障りのない文面を書いてメールを送り、トイレに立った。 そして、事務所から出て従業員出入口からこっそり外に出た。 すぅ~っと、ユキコの前髪が風に揺れた。 ザクッザクっと歩くたびに音がする。防犯の意味もあるその石たちを踏みながらユキコはお尻のポケットに忍ばせた個人の携帯電話を取り出し、A営業所へ電話をした。 ワンコールではきはきとした声のケイコが電話に出た。 ユキコからの電話だと知りケイコは驚いているようだった。 ユキコはそばに誰もいないかを確かめ、そしてメールをいただき嬉しかったことを伝えた。 そして次のことを伝えた。 「メールは送った人と送られた人の世界だから、つい、感情移入して自分の本心を書きたくなるよね。 自分がそうだから。 相手に感謝の気持ちを表すのはいいけれど、会社に対してとか誰かに対しての不満は社内メールには絶対書かないようにしてね。 なぜだと思う? それはね、私たちの使っている社内メールのやり取りを私たちの上司のB子さんが全て読んでいるかもしれないから。 それは確定ではないのだけれど、営業員のメールは全てB子さんが見られるように設定したと以前、社長がおっしゃっていたのよ。 これまでは社長がそれをされていて、社長がお忙しくなられて春からB子さんに委任したんだって。これは営業会議の議事録に書かれているから気になったらあとで読んでみてね。 でね、大事なのは、彼女、営業員のメールだけを見ていると思う? だから、嫌かもしれないけれど、社内メールは個人的なことや会社に対しての不満などは書かない方がいいから。 見られてもいいことしか書かない方がいいと思います。 なんか寂しい状況だけれど我慢するしかないかも。 それをお伝えしたくって、今、外に出て個人の携帯電話からかけているの。 ケイコさん、一人で大変ですよね。 歳が近いということもあり、私はケイコさんに親近感を勝手に抱いています。 そういうことで、社内メールにはビジネスライクな文面しか書けませんが本心はとってもあったかいつもりです。 これからもよろしくお願いします。応援しています。」 ユキコは少しだけ雑談をして電話を切った。 さぁ、仕事に戻ろう。 ユキコは今の仕事が好きだ。 やりたい仕事ができるのは幸せなこと。 だから、仕事以外のことで気に入らないことがあっても目をつぶることにしている。 ユキコだってたくさんの不満がある。 不満ではなく改善点を以前上司に申し上げたら 「そんなの、分かってるわよ。私に言わないで。」と言われた。 なんでも気が付いたことを言ってほしいと言われたから話したのに、逆にキレられてしまった。 やっている仕事が好きだから続けられる。 もし、会社や上司に我慢できなくなったらその時は辞めるしかない。 社長はある日おっしゃっていた。 「毎日、営業員のメールのやり取りを確認するだけで凄い時間がかかっているんだ。メールは毎日100通以上来ているから。」 そして、社長が多忙を極め、それを今度はB子がすることになった。 彼女の仕事がどんどん溜まって行っているのは、彼女のあの山積みにされた書類に埋もれている姿を見て想像がつく。 そのメールの確認、する必要があるのだろうか。 人の動きが分かるという利点はあるが、得るものと失うもの、天秤にかければどうなるのか。 世の中にはやるべきこと、やらなくてもそれほど差し障りが無いものがある。 その見極めは人それぞれ。 正しい目を持てるよう心掛けたい。 今回は 天秤はどちらに傾くの?(ショートショート) をお伝えいたしました。 本日も、最後までお聴きくださり ありがとうございました。  ちょっとした勇気が世界を変えます。 今日も素敵な一日をお過ごし下さい。 山田ゆりでした。 ◆◆ アファメーション ◆◆ .。*゚+.*.。.。*゚+.*.。.。*゚+.*.。 私は愛されています 大きな愛で包まれています 失敗しても ご迷惑をおかけしても どんな時でも 愛されています .。*゚+.*.。.。*゚+.*.。゚+..。*゚+