道具と父
昨日ナイフの話を書いたけれど、道具を大事に丁寧に使う、というのは父の影響だと思う。
十年前に他界した父は、生前は星一徹みたいな人だった。
流石にちゃぶ台はひっくり返さなかったけれど、口数が少なくてあまり笑うこともない人だった。
だからあまり話をしたことはないのだけれど、家で仕事をしていたので、小さい頃はその様子を見ているのがスキだった。
父は石屋だった。
高校を卒業後、東京に出てきて、しばらく普通に会社勤めをしていたけれど、26歳の時に急に転職して石屋になったのだそう。
その頃は高度成長期で建設ラッシュだったりしたから、仕事もたくさんあったのだと思う。
しばらく石屋さんの会社で勤めて、すぐに独立したみたい。
今思うとすごく器用な人だった。
昔は機械なんてそれほどないから、石の加工も職人が一つずつやっていた。
墓地で使うツルッとした石は機械で磨いていたけれど、塀に使うものはそのサイズや角度を微妙に変えて人が削っていた。
小さな斧みたいなもので、地道に石を削る音がすごくスキだった。
すごおく薄く削ったり、時には模様を掘ったり、刃先を変えることでいろんなことができる。
父は適当に斧を打ち下ろしているように見えるのに、完璧にキレイな面を作るのだ。今でもその光景を音と一緒に思い出す。
道具箱にはいろんな刃先があって、子供は絶対に触れてはいけなくて、脇で座って中を眺めるのが大好きだった。
どの道具もキレイに手入れがされていた。刃先がキレイでないと上手に石も削れないので、日に何度も機械で研いでいたと思う。
そんな父の様子を見ながら大きくなったので、道具は大事にしていればいつまでも使えると思ってなかなか捨てられない。
だから今回ナイフを新調したのは、ワタシにしてみればかなり大胆なことだった。
でもやっぱり新しい道具は気持ちがいい。
そして、その手入れ方法を購入元に問い合わせてみたら、すぐに返事がきた。
なんと普通のお手入れでいいのだそう。
なあんだちょっとつまんない。砥石買おうかと思っていたのに。。
でも大事に使ったら、きっと一生使えるもの。
毎日台所で眺めてはウレシクなってる。
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