見出し画像

忠犬ハチ公に涙した

ワタシは人のカラダに触れる仕事をしている
そして手指を通してそのカラダの声を聴いている

今日は仕事中に思わず涙した

そんなこと、20年近くもこの仕事をしていて初めてのことだった

涙したのはある人のカラダに触れている時

職場で罵詈雑言を浴びながらも辞められない、と涙ながらに訴えていたその人のカラダだった

そしてカラダの持ち主は、ようやくその職場を辞めたのだった

とても安堵した様子のその人
ワタシもそれを知ってとても喜んだ

でもカラダに触れた時に、何かの叫び声が聞こえた気がした

そして知った
彼女のカラダが
ものすごく耐え忍んでいたことを
もうギリギリだったことを

忠犬ハチ公のように主人の言うことを聞いてしまうカラダ
そう
カラダはとても無垢な存在

まるで飼い犬のように
何の疑いもなく主人の言うがまま思うがままに従順でいてくれる

そんなカラダの健気さを知って思わず涙が流れてしまったのだった

そう
誰しもカラダは自分のもので意のままだと思う

でも違う
カラダはいつでもあなたを喜ばせようとしているだけ

どんな無理難題だって
ダイスキな主人のためにいつでも聴いてくれようとする

でもカラダにだっていつか限界が来る

そんな時に人は病気になるのだ

彼女が病気になる前にひどい状況から抜け出せて本当によかった
彼女の忠犬ハチ公が無事で本当によかった

彼女はワタシの手の下で眠っていた
だからワタシの涙を彼女は知らない

ワタシは決めた

いつでも誰かの忠犬ハチ公の味方でいようと
そうやってカラダの声をこれからも聴いていこうと

そして
その主人に伝えていこう
時には忠犬ハチ公の声を聴いてくれるようにと

それが何より大事だから


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?