BillboardJAPAN 2023年間 ニコニコ VOCALOID SONGSチャート総括

はじめに

 この記事は、"ボカロP Advent Calendar 2023"の参加記事である。私以外にも、様々なボカロPが様々な視点から記事を投稿しているので、チェックしてくださると非常に嬉しく思う。また、私自身も、Billboard JAPAN大好きボカロPとして、有意義な記事を提供できればと思う。

BillboardJAPAN 2023年間 ニコニコ VOCALOID SONGSチャート

 2022年11月28日(月)〜2023年11月26日(日)までを集計期間とし、12月7日公開週〜11月29日公開週までの、合計52週のチャートが対象となる、Billboard JAPAN 2023年間 VOCALOID SONGS TOP20。

 2023年度に新設されたチャートであり、今回が初の年間チャート発表となる。
 同チャートは、ニコニコ動画に投稿された、VOCALOIDやUTAU、Ce:VIOなどの、合成音声ソフトウェアを使用したオリジナル楽曲が対象となり、ニコニコ動画内でのオリジナル動画や二次創作動画などの動画再生数や動画総数、コメント数、いいね数などのデータにBillboard JAPANが独自開発した係数に乗じて、毎週上位20位までのチャートが生成される。

 この記事では、同チャートにチャートインを果たした20曲について、チャート動向を中心に記事内で紹介する。

 また、Billboard JAPANには、YouTube上での二次創作の人気を算出するチャートである『Top User Generated Songs』も存在する。同チャートでは二次創作が盛んな文化であるボカロ楽曲や、ボカロ界隈から排出されたアーティストが上位を獲得しやすいチャートであり、年間チャートでは『VOCALOID SONGS TOP20』と『Top User Generated Songs』の両方でチャートインしている楽曲も多く存在する。そのため、『VOCALOID SONGS TOP20』にチャートインした楽曲が『Top User Generated Songs』にもチャートインしている場合、そちらの年間順位も紹介する。

1位・ゆこぴ「強風オールバック」

 BillboardJAPAN VOCALOID SONGS 2023年間TOP20の首位は、2023年3月15日(水)に投稿された楽曲、ゆこぴ「強風オールバック」が獲得した。上半期チャートの時点では、5位にチャートインしていた同楽曲。下半期も更なる人気を集め、年間1位を獲得することとなった。

 「外出た瞬間終わったわ」などのインパクトのある共感性のあるフレーズと、リコーダーの音、小津の手がける歌愛ユキのかわいらしいアニメーションが印象的な楽曲。3月末頃からYouTubeやニコニコ動画を中心に人気が産まれ始め、4月〜8月にかけて多くの歌ってみたやMAD動画など、様々なタイプでの二次創作が登場し、大きく人気と認知を向上させ、ネット上でのブームメントに繋がった。
 同チャートのチャート動向においては、4月05日公開週に2位に初登場した。その後、人気の勢いが徐々に加速していき、4月12日公開週〜5月31日公開週まで8週連続で首位を獲得した。6月07日公開週では2位を獲得し、連続首位の記録は一度途切れたものの、6月14日公開週〜6月28日公開週まで3週連続で首位を獲得した。また、7月19日(水)には、カップヌードルのCM『夏は食っとけシーフード 篇』に同曲が起用されたことも影響し、再生回数や注目度、話題性が再び増加することとなり、7月19日公開週〜7月26日公開週まで2週連続で首位を獲得、通算13週の首位を獲得した。13週の首位獲得は、同チャートにおける通算首位獲得記録において最多記録である。また、8月02日公開週では、1位に、7月28日(金)に投稿された新曲、ゆこぴ「寝起きヤシの木」、2位に、ゆこぴ「強風オールバック」が獲得しており、同一ボカロPでの1位と2位の独占を達成した。
 その後、8月09日公開週〜8月16日公開週の2週間を除いた、10月04日公開週までTop10圏内へのチャートインを続け、同チャートにおいては、集計期間52週中、30週でTop20圏内にチャートイン。内、Top10圏内にチャートインしたのは25週である。
 なお、Billboard JAPANは年間チャート解説記事内で、『ポイントを見ると、オリジナル動画は僅差で2位だが、二次創作関連は1位を獲得。特に作成動画のいいね数は、2位と比較して1.7倍のポイントを獲得している。』『「強風オールバック」は、オリジナル動画が持つ驚異的な話題性、そして多く投稿されている二次創作動画が相乗効果となり、2023年の“ニコニコ VOCALOID SONGS TOP20”の首位を獲得した。』と解説しており、オリジナル動画の強い人気に合わさり、二次創作における根強い人気も合わさった上での首位獲得となった。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は362万回再生、マイリスト数は20,000回を記録。また、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で7,300万回再生を記録している。YouTubeでの総再生回数7,300万回再生は、YouTube上での2023年11月時点での全ボカロ楽曲の累計再生回数では6位であり、歌愛ユキ使用楽曲としては最多の再生回数である。投稿から僅か8ヶ月近くで一気に再生回数を伸ばし続け、ボカロ界隈を代表する1曲になったと言えるだろう。
 なお、YouTubeにおける1月01日〜11月30日に公開された年間音楽動画再生数ランキングTOP10では、インディペンデントのアーティストの楽曲としては最高位である、4位にチャートインをしている。また、YouTube上での二次創作の再生回数を算出する、2023年度『Top User Generated Songs』チャートでは、5位にチャートインを果たしている。オリジナル動画と二次創作動画が相乗効果を起こし、ネットシーンやボカロシーンの枠を飛び越えて、社会的に広く浸透した楽曲であると言えるであろう。

 なお、同曲は、11月29日(水)に配信開始したゆこぴのアルバム『アルバム1号』の収録曲としてサブスク配信がスタートしており、Billboard JAPANの2023年度内での配信はされていなかった。もしも仮に、サブスクやダウンロードでの配信を早く開始していた場合、Hot 100へのチャートインを狙える可能性もあったかもしれない。

2位・ツミキ「フォニイ」

 2位は、2021年6月に投稿された楽曲、ツミキ「フォニイ」が獲得した。上半期チャートの時点では、2位にチャートインしていた楽曲であるが、下半期でもチャートインを重ね、年間でも2位を維持する結果となった。

 "嘘"や"偽り"をテーマとした、考察性のあるリリックとダンサブルなロックサウンドと可不の歌声が印象的な同楽曲。2022年以前から、多くの歌い手やVtuberにカバーされ、2022年度『Top User Generated Songs』では2位にチャートインしており、2023年度以前から人気を獲得していた。
 同楽曲も、前年度からの人気が維持され、同チャートには52週中49週でチャートイン。中でも、上半期では、上半期の集計期間である26週の全ての週でのチャートインを達成していた。年間の内、Top10圏内にチャートインした週は41週と、同チャートにおけるTop10圏内へのチャートイン週では最多記録であり、上半期では26週中、25週でTop10圏内へのチャートインを達成した他、9月13日公開週には同曲初の首位を獲得している。また、Billboard JAPANの年間チャート解説記事の中では、同曲について、『ポイントを見ると、作成動画総数は2位、作成動画再生数、マイリスト数は1位を獲得している。』と解説されている。オリジナルの人気に加え、二次創作による根強い人気も合わさり、2位へのチャートインを果たした。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は302万回再生、マイリスト数は18,000回を記録。また、ニコニコ動画での総再生回数は、集計期間終了時点で837万回再生を、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で4,800万回再生を記録している。ニコニコ動画での総再生回数である837万回再生は、CeVIOオリジナル曲の中で最も多い数値であり、来年には1,000万回再生も視野に入ってくるかもしれない。また、同楽曲は、2023年度『Top User Generated Songs』では8位を記録しており、YouTubeでも根強い二次創作による人気が見受けられることとなった。
 なお、ツミキは、MAISONdesに提供した楽曲「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ feat. 花譜, ツミキ」が、2023年間Hot 100で47位を獲得、ツミキが作詞作曲を手がけた楽曲としては初めてストリーミング1億回再生を突破している。ボカロPとしての活動だけでなく、コンポーザーとしても、チャート上で大きく飛躍を遂げることとなった。

3位・いよわ「きゅうくらりん」

 3位は、2021年8月に投稿された楽曲、いよわ「きゅうくらりん」が獲得した。上半期チャートの時点では、6位にチャートインしていたものの、下半期に更なる人気を獲得し、年間ではTop3圏内入りを果たす結果となった。

 かわいらしくふわふわした曲調と、いよわ自身で手がけるループアニメーション、考察性のあるストーリーのリリックが印象的な楽曲である。
 2023年度開始以前から、いよわの代表曲として人気を集めていた同楽曲。上半期の時点でも、同チャートの全ての週にチャートインを果たしていたものの、下半期に更なる人気を獲得することとなった。
 2023年4月に、人気音楽ゲームアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』 内のユニット"MORE MORE JUMP!"への、いよわの提供楽曲「ももいろの鍵」が発表され、代表曲である同曲への注目度も増加することとなった。また、2023年7月には、「きゅうくらりん」の『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』内への実装がされることとなり、更に楽曲の認知と人気を向上させることとなった。ゲーム内に実装された直後の週である、7月19日公開週では2位を記録し、8月23日公開週には、同曲初の首位を獲得した。その影響もあり、下半期でも、26週中25週で同チャートへのチャートインを果たし、内23週でTop10圏内へのチャートインを記録した。投稿祭の影響で新曲が一気に上位に登場した週を除けば全ての週でTop10圏内入りを達成しており、下半期におけるTop10圏内へのチャートイン週では、同曲が最多記録を獲得している。
 Billboard JAPANの年間チャート解説記事の中では、同曲について、『本チャートが2022年12月7日にスタートして以来、2023年8月9日発表分をのぞいた全ての週でチャートインというロングヒットに。オリジナル動画関連のポイントは総合首位の「強風オールバック」を上回る1位を獲得した。』と解説しており、52週中51週とほとんどの週でチャートインを果たし、内40週でTop10圏内へのチャートインを果たした。そして、オリジナル動画を中心に人気を集め、年間Top3圏内へのチャートインを果たすこととなった。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は414万回再生、マイリスト数は19,000回を記録。また、ニコニコ動画での総再生回数は、集計期間終了時点で717万回再生を、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で4,600万回再生を記録している。ニコニコ動画においては、23年度集計期間で集計期間開始以前よりも倍以上に再生回数を増やしており、投稿は2021年であるものの、楽曲人気のピークは今年となったことが推測される。
 また、いよわは、同週間チャートにおいて、「地球の裏」「一千光年」「ももいろの鍵」「きゅうくらりん」の4曲で週間首位を獲得しており、ボカロPごとにおける首位獲得楽曲数では最多記録である。それにより、いよわとしての人気も大きく上昇させる年となった。

4位・すりぃ「ラヴィ(Lavie)」

 4位は、2022年10月に投稿された楽曲、すりぃ「ラヴィ(Lavie)」が獲得した。上半期チャートの時点では3位にチャートインをしていた楽曲。下半期でもチャートインを重ね、年間では4位を獲得する結果となった。

 『#コンパス 戦闘摂理解析システム』のキャラクター“ラヴィ・シュシュマルシュ”のテーマソングとして書き下ろされ、一曲の中で次々と変化していく曲調や、SPIKEがイラストを、よしだなすびが映像を手がけるアニメーションも印象的な楽曲である。
 投稿直後から大きな人気を獲得していた同楽曲。その伸びの勢いが、11月28日(月)からの本集計期間内でも維持され、高い水準での再生回数を記録した。上半期では、1月04日公開週〜1月11日公開週で首位を獲得し、ボカコレ2023春以前の3月15日公開週までの14週間においては、全ての週でTop5圏内を維持していた。下半期も、上半期よりは人気は落ち着きを見せつつも、同チャートにチャートインし続けるロングヒットを記録。集計期間の52週中、47週でチャートインを果たし、内31週でTop10圏内へのチャートインを果たした。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は380万回再生、マイリスト数は20,000回を記録。また、ニコニコ動画での総再生回数は、集計期間終了時点で431万回再生を、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で2,000万回再生を記録している。

5位・Kanaria「酔いどれ知らず」

 5位は、2022年5月に投稿された楽曲、Kanaria「酔いどれ知らず」が獲得した。上半期チャートの時点では1位を獲得していた同楽曲。下半期も、着実にチャートインを重ねたものの、年間では5位となった。

 Kanariaの持つ和の世界観と、考察性のある歌詞が印象的な楽曲。2022年度『Top User Generated Songs』では12位にチャートインしており、人気を獲得していた。
 2022年12月頃から、TikTokを中心に、同曲を使用した動画が急増し拡散された。その影響が、本家や歌ってみたの再生回数上昇や、更なるカバー、二次創作の増加に繋がり、大きく盛り上がりと楽曲認知を増すこととなった。1月〜3月にかけて、その盛り上がりはピークを迎えることとなり、1月25日公開週〜2月15日公開週、3月8日公開週〜3月15日公開週の計6週で、首位を獲得している。また、上半期の集計期間では、26週の全ての週でのチャートインを達成しており、内25週でTop10圏内へのチャートインを達成した。
 下半期も、上半期よりは人気は落ち着きを見せるものの、オリジナルや既存の歌ってみた動画の人気に加え、数々の歌ってみたが投稿され、チャートインを継続した。中でも、7月18日(火)には、Kis-My-Ft2の宮田俊哉と北山宏光による同曲の歌ってみた動画がニコニコ動画に投稿された影響もあり、7月26日公開週では、下半期における同曲の最高順位である2位を記録した。2023年9月に、諸事情により同曲で最も再生回数を記録していた歌ってみた動画が削除されるものの、その後もチャートインを継続した。集計期間の52週中、49週でチャートインを果たし、内39週でTop10圏内へのチャートインを果たした。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は296万回再生、マイリスト数は17,000回を記録。また、ニコニコ動画での総再生回数は、集計期間終了時点で395万回再生を、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で3,700万回再生を記録している。

 また、同曲は、Hot100においては、3月08日公開週に、週間での最高順位である34位を記録した。また、Hot100の構成要素であるカラオケ指標においては、4月12日公開週で、Vaundy「怪獣の花唄」、優里「ドライフラワー」、Saucy Dog「シンデレラボーイ」に続く4位を獲得している。また、ストリーミングにおいても、2023年に LINEMUSIC ランキングで上昇した・話題を集めた注目楽曲を紹介する、2023年度LINE MUSIC『トレンドアワード』にも選出され、ストリーミングによる人気も獲得していた。ストリーミング人気とカラオケ人気が合わさり、年間Hot 100チャートでは61位にチャートインを果たした。ボカロ楽曲が年間Hot 100チャートにチャートインを果たすのは、2015年度での、WhiteFlame feat.初音ミク「千本桜」(72位)、2021年度での、Chinozo「グッバイ宣言」(99位)に続く3曲目であり、ボカロ楽曲においては年間最高位を更新する結果となった。
 また、2023年度『Top User Generated Songs』でも、YOASOBI「アイドル」に続く2位を獲得した。こちらも、オリジナル動画と二次創作、双方で人気の相乗効果を起こす結果となった。

6位・ピノキオピー「神っぽいな」

 6位は、2021年9月に投稿された楽曲、ピノキオピー「神っぽいな」が獲得した。上半期チャートの時点では7位を獲得していた同楽曲。下半期でもチャートインを積み重ねていき、年間では6位へと順位を上げた。

 "神"をテーマとしたアイロニックな歌詞とピノキオピー特有のエレクトリックサウンド、時折挟まれるゆっくりボイスが中毒性を高めている同楽曲。Adoをはじめとした多数の歌い手やVtuberが同曲の歌ってみたを投稿したことも相まって、2022年度『Top User Generated Songs』では1位にチャートインを果たした人気楽曲であった。
 前年からの人気が牽引し、2023年度開始当初からチャートインを積み重ね、上半期の集計期間である26週の全ての週でのチャートインを達成した。その内、22週でTop10圏内へのチャートインを達成した。下半期に入ると、Top10圏内へのチャートイン回数は減るものの、Top20圏内へのチャートインを積み重ねていくが、2023年8月〜9月にかけて開催された『初音ミク「マジカルミライ 2023」』内での同曲の披露や、2023年10月には人気音楽ゲームアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』内への実装がされたことなど、トピックが積み重なった影響もあり、再び楽曲人気が拡大し、2023年9月以降は安定してTop10圏内へのチャートインを重ねる結果となった。中でも、『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』内への実装直後の週である10月25日公開週では、同曲の週間最高順位である4位を記録した。同楽曲は、集計期間の52週中、49週でチャートインを果たし、内34週でTop10圏内へのチャートインを果たした。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は286万回再生、マイリスト数は16,000回を記録。また、ニコニコ動画での総再生回数は、集計期間終了時点で729万回再生を、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で6,500万回再生を記録している。また、2023年度『Top User Generated Songs』では6位にチャートインを果たし、二次創作による人気も、前年に引き続き強く現れた。

7位・まらしぃxじんx堀江晶太(kemu)「新人類」

 7位は、2023年3月19日(日)に投稿された楽曲、まらしぃxじんx堀江晶太(kemu)「新人類」が獲得した。上半期チャートの時点では4位を獲得していた同楽曲。下半期でのチャートインは少なかったものの、上半期分に集めたポイントが効果的に働き、年間では7位にチャートインする結果となった。

 人気ボカロPである、まらしぃ、じん、堀江晶太(kemu)のコライト楽曲である同楽曲。サビなどで繰り返される「ウッホ ウッホッホ ウッホッホ」のリズムが中毒性を持つ他、堀江晶太(kemu)のベース、
まらしぃのピアノ、じんのギター、ゆーまお(ヒトリエ)の演奏と、びびがエディットする鏡音リンの歌声が火花を散らしていくような楽曲である。
 『The VOCALOID Collection ~2023 Spring~』(以下・ボカコレ2023春)に投稿され、大きな話題性と盛り上がりを集めた楽曲。同楽曲の楽曲の中毒性や話題性、ファンの盛り上がりなどが起因し、ボカコレ2023春のTop100で1位を獲得した。
 同チャートにおいては、3月22日公開週に2位に初登場を果たした。その後、3月29日〜4月05日公開週と、2週連続で首位を獲得。その後、5月17日公開週まで、初登場から通算9週連続でTop10圏内へのチャートインを獲得、内8週はTop3圏内へのチャートインを果たすこととなった。下半期では、7月27日(木)に、ボカコレ2023春企画の一環として、Adoによる同曲の歌ってみた動画が投稿され、8月02日公開週では8位にチャートインを果たした。下半期でのチャートインはその週のみであるものの、上半期に積み重ねたポイントが働き、年間では7位にチャートインを果たした。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は135万回再生、マイリスト数は7,800回を記録。また、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で200万回を記録している。また、同楽曲は、楽曲の盛り上がりに合わせた弾幕コメントによる加点が非常に多く、集計期間内でのコメント数はおよそ50万件を獲得、今回年間Top20圏内にチャートインした楽曲の中ではダントツの、集計期間内でのコメント増加数を記録している。

8位・ぬゆり「ロウワー」

 8位は、2021年11月に投稿された楽曲、ぬゆり「ロウワー」が獲得した。上半期チャートの時点では8位を獲得していた同楽曲。下半期も、Top10圏内へのチャートインこそ少なかったものの、Top20圏内に安定してチャートインを継続した。その影響もあり、年間チャートではTop20圏内にチャートインを果たす結果となった。

 『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』に登場するユニット、“25時、ナイトコードで。”への書き下ろし楽曲のバーチャル・シンガーVer.である同楽曲。その人気はプロセカ内だけに留まらず、歌い手やVtuberからの人気も非常に高く、2022年度『Top User Generated Songs』では、5位を記録している。
 同楽曲も、前年からの楽曲人気が牽引し、2023年度開始当初からチャートインを積み重ねた楽曲である。同楽曲は、本集計期間内では上半期、特に12月〜2月に楽曲の人気のピークを迎え、12月21日公開週〜2月22日公開週の10週連続でTop10圏内へのチャートインを果たした。その後はTop10圏内へのチャートインは少なくなるものの、年間を通して11位〜20位圏内にチャートインを果たした。同楽曲は、年間では、集計期間の52週中、45週でチャートインを果たし、その内12週でTop10圏内へのチャートインを果たした。年間を通してチャートインし続け、8位へのチャートインを果たした。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は281万回再生、マイリスト数は15,000回を記録。また、ニコニコ動画での総再生回数は、集計期間終了時点で624万回再生を、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で3,600万回再生を記録している。

9位・柊マグネタイト「マーシャル・マキシマイザー」

 9位は、2021年8月に投稿された楽曲、柊マグネタイト「マーシャル・マキシマイザー」が獲得した。上半期チャートの時点では13位を獲得していた同楽曲。下半期にも、人気を保ち続け、安定してチャートインを果たした結果、年間では9位に順位を上げることとなった。

 柊マグネタイトの人気を押し上げた自身の代表曲であり、考察性のある特有の言葉遊びと、エレクトリックなサウンド、可不の歌声が印象的な楽曲である。
 同楽曲も、前年からの楽曲人気が牽引し、2023年度開始当初からチャートインを積み重ねた楽曲である。上半期の期間は、Top10圏内へのチャートイン回数は2週と少なかったものの、Top20圏内には26週中、25週でチャートインしており、Top11〜20圏内へのチャートインが安定して続いていた。下半期になっても安定してチャートインを続ける他、Top10圏内へのチャートイン回数も増加していった。中でも、柊マグネタイト「マーシャル・マキシマイカ」が2位に登場した6月28日公開週に、「マーシャル・マキシマイザー」は4位に登場したり、柊マグネタイト「やめてください」が3位に初登場した7月19日公開週に、「マーシャル・マキシマイザー」は4位に登場したりするなど、柊マグネタイト自身の新曲の投稿に合わせて、代表曲である同楽曲も順位を上げるチャートアクションを起こしていた。年間では、集計期間の52週中、49週でチャートインを果たし、その内11週でTop10圏内へのチャートインを果たした。年間を通してロングヒットを続け、9位へのチャートインを果たした。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は260万回再生、マイリスト数は13,000回を記録。また、ニコニコ動画での総再生回数は、集計期間終了時点で583万回再生を、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で2,383万回再生を記録している。

10位・wowaka「アンノウン・マザーグース」

 10位は、2017月に投稿された楽曲、wowaka「アンノウン・マザーグース」が獲得した。上半期チャートの時点では12位を獲得していた同楽曲。同楽曲も、下半期にも人気を保ち続け、安定してチャートインを積み重ねていき結果、年間では10位に順位を上げることとなった。

 wowakaにとってはおよそ6年ぶりのVOCALOID楽曲であり、初音ミクの10周年を記念したコンピアルバム『Re:Start』の書き下ろし収録曲である同楽曲。ボカロファンを中心に、根強い人気を獲得し続けていた。
 同楽曲は、12月21日公開週で初のチャートイン。その後、チャートインとチャートアウトを繰り返しながら、3月08日公開週、7度目のチャートインで同曲初のTop10圏内へのチャートインを記録した。そして、4月01日(土)に、ニコニコでの累計再生回数1,000万回再生を突破。その集計期間が反映された4月05日公開週のチャートでは、同楽曲の最高位である3位を記録しており、大きな盛り上がりを見せることとなった。その後、下半期では、Top10圏内へのチャートインは少なかったものの、Top20圏内へのチャートインを繰り返し、年間では、集計期間の52週中、34週でチャートインを果たした。また、その内6週でTop10圏内へのチャートインを果たした。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は221万回再生、マイリスト数は11,000回を記録。また、ニコニコ動画での総再生回数は、集計期間終了時点で1,135万回再生を、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で4,800万回再生を記録している。

 年間Top10圏内にチャートインした楽曲の殆どが、年間を通して30週以上のチャートインを続けるロングヒットを見せた。Billboard JAPANの年間チャートでは、楽曲の持続的な人気が最重要視されることとなる。

11位・かいりきベア「ダーリンダンス」

 11位は、2020年に投稿された楽曲、かいりきベア「ダーリンダンス」が獲得した。上半期チャートの時点では9位を獲得していた同楽曲。下半期でのチャートインは少なかったものの、再生回数や二次創作人気を積み重ねていき、年間では11位にチャートインを果たした。

 かわいらしい中毒性溢れるサウンドの中に、韻を踏みながらも病んでいるような気持ちを現したリリックが印象的な楽曲。2022年度『Top User Generated Songs』では、11位を記録し、人気を集めていた。
 同楽曲も、前年からの楽曲人気が牽引し、2023年度開始当初から、主に上半期にチャートインを積み重ねた楽曲である。同楽曲は、年間では、集計期間の52週中、21週でチャートインを果たし、内7週でTop10圏内へのチャートインを果たした。その内、上半期でのチャートインが20週であり、下半期でのチャートインは10月04日公開週の1週のみである。しかし、年間を通して再生回数を積み重ねた影響もあり、年間では11位にチャートインを果たした。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は205万回再生、マイリスト数は20,000回を記録。また、ニコニコ動画での総再生回数は、集計期間終了時点で538万回再生を、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で3,500万回再生を記録している。また、2023年度『Top User Generated Songs』では、15位を記録している。

12位・DECO*27 × ピノキオピー「デビルじゃないもん」

 12位は、2023年1月13日(金)に投稿された楽曲、DECO*27 × ピノキオピー「デビルじゃないもん」が獲得した。上半期チャートの時点では15位を獲得していた同楽曲。下半期にも、人気を積み重ねていき、年間では12位に順位を上げることとなった。

 DECO*27とピノキオピーのコライト楽曲であり、お互いの初音ミクの掛け合いをはじめとしたお互いの個性が強く溢れ出ているような楽曲である。
 同楽曲は、有名ボカロP同士のコラボ作品ということもあり、発表時点から大きな話題性を集めていった。同チャートでは、1月18日公開週で初登場1位を獲得、翌週の1月25日公開週では2位を獲得した。その後、上半期でチャートインを繰り返し、上半期では、集計期間26週中、9週でのチャートインを達成した。また、下半期開始当初はしばらくチャートインの機会を逃していたものの、10月に人気音楽ゲームアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』内への実装がされた影響もあり、9月27日公開週に19位に再登場を果たした。ゲーム内に実装がされた直後の週である、10月18日公開週では、3位を記録し、その後は安定してチャートインを積み重ねることとなる。同楽曲は、年間では、集計期間の52週中、19週でチャートインを果たし、内10週でTop10圏内へのチャートインを果たした。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は296万回再生、マイリスト数は12,000回を記録。また、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で1,100万回再生を記録している。また、23年度『Top User Generated Songs』では、20位にチャートインを果たしている。

13位・稲葉曇「ラグトレイン」

 13位は、2020年に投稿された楽曲、稲葉曇「ラグトレイン」が獲得した。上半期チャートではTop20圏内には入らなかったものの、下半期でもチャートインを重ね、年間では13位にチャートインを果たした。

 歌愛ユキの気だるげな歌声と、ぬくぬくにぎりめしが手がけるループアニメーションを主軸とした映像が印象的な同楽曲。ニコニコ動画内では、音MADなどによる二次創作も強い楽曲であった。
 同楽曲は、チャート開設1週目である12月07日公開週に初登場した後、チャートインとチャートアウトを繰り返し、年間では、集計期間の52週中、20週でチャートインを果たした。Top10圏内へのチャートインこそなかったものの、11位〜20位へのチャートインを積み重ね、年間では13位にチャートインを果たした。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は192万回再生、マイリスト数は9,400回を記録。また、ニコニコ動画での総再生回数は、集計期間終了時点で564万回再生を、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で4,700万回再生を記録している。

14位・Kanaria「KING」

 14位は、2020年に投稿された楽曲、Kanaria「KING」が獲得した。上半期の時点では16位を獲得していた同楽曲。下半期でもチャートインを重ねていき、年間チャートでは14位に順位を上げた。
 Kanariaの人気を大きく上げるきっかけとなった代表曲であり、『Top User Generated Songs』では、2021年度では1位、2022年度では4位と、二次創作人気も非常に強い楽曲である。

 同楽曲も、稲葉曇「ラグトレイン」と同じく、Top11〜20圏内へのチャートインを積み重ねた楽曲である。12月14日公開週に初登場した後、チャートインとチャートアウトを繰り返し、年間では、集計期間の52週中、31週でチャートインを果たした。Top10圏内へのチャートインは、2月01日公開週の10位のみとなるが、11位〜20位へのチャートインを積み重ね、年間では14位にチャートインを果たした。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は166万回再生、マイリスト数は12,000回を記録。また、ニコニコ動画での総再生回数は、集計期間終了時点で757万回再生を、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で7,300万回再生を記録している。また、23年度の『Top User Generated Songs』 では9位を記録し、3年連続でTop10圏内へのチャートインを続けている他、YouTube上での2023年11月時点での全ボカロ楽曲の累計再生回数では5位であり、二次創作による人気とオリジナルの人気が相乗効果を起こし続けている。

15位・john「春嵐」

 15位は、2019年に投稿された楽曲、john「春嵐」が獲得した。同楽曲が初登場したのは8月30日公開週と、下半期に初めてチャートインを果たした楽曲であるが、週間Top20圏外ながらも上半期にポイントを積み重ね、下半期に人気を加速させた同楽曲であり、年間チャート15位にチャートインを果たした。

 疾走感のあるメロディとそれを歌い上げる初音ミクの歌声、john自身で手がけるアニメーションがインパクトを持つ楽曲。上半期ではチャートインこそなかったものの、johnが手がけるソロ活動での名義、TOOBOE「錠剤」のヒットの影響も相まって、同楽曲の再生回数も積み重なっていった。2023年11月になると、人気音楽ゲームアプリ『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』内への実装がされ、同曲の注目度も大きく増加した。実装直後の週である、11月15日公開週では、同曲最高位である4位を記録し、その後Top10圏内へのチャートインを維持している。
 年間では、集計期間の52週中、11週でチャートインを果たし、Top10圏内へのチャートインは、その内4週であり、チャートインした週は、全て下半期の期間内でのチャートインである。11月にかけて大きく追い上げを見せ、年間15位へのチャートインを果たした。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は261万回再生、マイリスト数は11,000回を記録。また、ニコニコ動画での総再生回数は、集計期間終了時点で571万回再生を、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で2,600万回再生を記録している。

16位・wowaka「ローリンガール」

 16位は、2010年に投稿された楽曲、wowaka「ローリンガール」が獲得した。上半期チャートの時点では10位を獲得していた同楽曲。下半期でのチャートイン回数は少なかったものの、上半期で記録した再生回数が働いた他、着実に再生回数を積み重ね、年間では16位にチャートインを果たした。

 wowaka特有の疾走感溢れるロックサウンドの中に響き渡る、「もう一回, もう一回。」と繰り返されるサビのリリックが印象的な楽曲である。また、2010年に投稿と、今回の年間チャートのTop20へのチャートインを達成した楽曲の中では、最も投稿日時が早い楽曲である。
 同曲は、ニコニコ動画が公式で出している、ボーカロイド好きのための音楽アプリ『ボカコレ』アプリのYouTubeなどで展開される広告に起用されたこともあり、1月頃から再生回数が急増。1月04日公開週に初登場し、徐々に順位を上げていった。また、2月04日(土)には、ニコニコ動画における累計再生回数1,000万回を達成し、大きな盛り上がりを見せた。その集計期間が反映された2月08日公開週のチャートでは、同楽曲の最高位である2位を記録している。その後、3月15日公開週まで連続してチャートインを続け、上半期期間内では、計26週中、12週チャートインを果たし、その内8週はTop10圏内へのチャートインを果たしている。ただ、下半期にチャートインを果たした週は9月13日公開週に獲得した20位の、1週のみとなった。しかし、上半期にポイントを大きく積み重ね、年間16位へのチャートインを果たした。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は211万回再生、マイリスト数は14,000回を記録。また、ニコニコ動画での総再生回数は、集計期間終了時点で1,164万回再生を、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で2,400万回再生を記録している。

17位・Chinozo「グッバイ宣言」

 17位は、2020年に投稿された楽曲、Chinozo「グッバイ宣言」が獲得した。上半期チャートの時点では18位を獲得していた同楽曲。下半期でのチャートインは少なかったものの、着実に再生回数や二次創作人気を積み重ね、年間チャートでは17位にチャートインを果たした。

 「引き篭り 絶対ジャスティス」といったリリックが印象的な、Chinozoの人気を大きく押し上げた楽曲。2021年にTikTokを中心に大きなバズを引き起こし、『Top User Generated Songs』では、2021年度では4位、2022年度では6位と、根強い二次創作による人気も併せ持った楽曲である。
 本チャートにおいては、1月18日公開週に初のチャートインを果たしたあと、3月15日公開週まで連続してTop20圏内にチャートインを果たした。上半期期間内では、計26週中、10週チャートインを果たし、その内3週はTop10圏内へのチャートインを果たしている。下半期でのチャートインは、11月01日公開週に獲得した13位の1週のみにとどまるものの、上半期にポイントを積み重ねた影響や、下半期にも着実に再生回数を積み重ねた影響もあり、年間では17位にチャートインを果たした。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は134万回再生、マイリスト数は10,000回を記録。また、ニコニコ動画での総再生回数は、集計期間終了時点で501万回再生を、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で1.2億回再生を記録している。YouTube上での2023年11月時点での全ボカロ楽曲の累計再生回数では、1位を維持し続けている。また、23年度の『Top User Generated Songs』 では17位にチャートインしており、二次創作人気も健在である。

18位・かいりきベア「ベノム」

 18位は、2018年に投稿された楽曲、かいりきベア「ベノム」が獲得した。上半期チャートの時点では19位を獲得していた同楽曲。下半期でのチャートインはなかったものの、着実に再生回数や二次創作人気を積み重ね、年間チャートでは18位にチャートインを果たした。

 かいりきベア特有のポップなギターサウンドと、負の感情を描いたリリックにより、かいりきベアの人気を大きく押し上げた楽曲であり、二次創作人気も強い楽曲である。
 本チャートにおいては、12月28日に初登場し、二次創作による人気も牽引して、1月4日公開中には同曲最高位である2位を獲得した。同楽曲のチャートインの実績は、年間では計52週中、7週チャートインを果たし、その内1週はTop10圏内へのチャートインを果たしており、チャートインした週は、全て上半期の期間内でのチャートインである。しかし、チャート圏外ながらも再生回数や二次創作人気を積み重ね、年間では18位へのチャートインを果たした。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は165万回再生、マイリスト数は12,000回を記録。また、ニコニコ動画での総再生回数は、集計期間終了時点で915万回再生を、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で5,800万回再生を記録している。

19位・ピノキオピー「転生林檎」

 19位は、2022年6月に投稿された楽曲、ピノキオピー「転生林檎」が獲得した。上半期チャートの時点では17位を獲得していた同楽曲。下半期でのチャートインは少なかったものの、着実に再生回数を積み重ね、年間チャートでは19位にチャートインを果たした。

 ピノキオピー特有のエレクトリックサウンドに、様々な人物に転生した視点のストーリーが印象的な楽曲であり、えいりな刃物が手がける映像も楽曲の世界観を増強させている。
 同楽曲は、本チャートにおいて、Top10圏内へのチャートインはなかったものの、上半期の集計期間の26週中、計13週のチャートインを達成。前年からの人気が牽引し、安定したロングヒットを見せていた。下半期期間でのチャートインは、6月14日公開週に記録した18位の1週に留まるものの、再生回数やマイリストを安定して積み重ね、19位へのチャートを果たした。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は244万回再生、マイリスト数は13,000回を記録。また、ニコニコ動画での総再生回数は、集計期間終了時点で360万回再生を、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で3,200万回再生を記録している。

20位・原口沙輔「人マニア」

 20位は、2023年8月06日(日)に投稿された楽曲、原口沙輔「人マニア」が獲得した。2023年下半期に投稿された楽曲では唯一、年間Top20圏内へのチャートインを果たした。

 2018年に"SASUKE"名義でメジャーデビューし、2023年5月より本名である"原口沙輔"で活動しているトラックメイカー原口沙輔の、初のUTAU楽曲である同楽曲。「ビバ良くない!」というフレーズやところどころに差し込まれる叫び声のSE、重音テトの歌声が印象的な楽曲である。
 『The VOCALOID Collection ~2023 Summer~』(以下・ボカコレ2023夏)に投稿され、投稿直後から大きく話題を集めた楽曲であり、ボカコレ2023夏のTop100で11位を獲得した。同チャートには、ボカコレ2023夏直後の週である8月16日公開週に4位に初登場を果たした。その後、ジワジワと人気と認知をが伸ばし続け、Top10圏内へのチャートインを維持していた。9月に入ると、TikTokや YouTube Shortなどで同曲の二次創作が大きく増加した。また、歌い手やVtuberなども同楽曲の歌ってみたを数多く投稿し、一気に楽曲の認知や人気が広まった影響もあり、9月20日公開週で初の首位を獲得した。その後、楽曲人気や拡散、二次創作の投稿が更に加速され、2023年度の集計期間内においては、2023年度の集計期間最終週である11月29日公開週まで11週連続で首位を獲得した。中でも、10月18日公開週では、1位に、原口沙輔「人マニア」、2位に、10月10日(火)に投稿された新曲、原口沙輔「ホントノ」が獲得しており、同一ボカロPでの1位と2位の独占を達成している。同楽曲は、初登場から16週連続でTop10圏内へのチャートインを続けている。年間でポイントを積み上げるチャートの設計上、下半期に投稿された楽曲は年間チャートにおいては不利になる傾向がある中、年間20位と、年間Top20圏内へのチャートインを果たした。

 同楽曲は、集計期間内で、ニコニコ動画における再生回数は243万回再生、マイリスト数は12,000回を記録。また、YouTubeでの総再生回数は、集計期間終了時点で1,000万回再生を記録している。

 なお、同楽曲は、2024年度最初のチャートである、12月06日公開週でも1位を獲得しており、連続首位獲得記録を更新中である。また、12月06日公開週の『Top User Generated Songs』でも1位、『Heatseekers Songs』では4位を記録している他、12月06日公開週のYouTubeでの『ウィークリー楽曲ランキング』では、6位にチャートインしていることなど、現在進行形で楽曲の人気拡大が続いている。今後更に楽曲の拡散と人気拡大が続けば、Hot 100へのチャートインも射程圏内かもしれない。

総括

 以上、Billboard JAPAN 2023年間 ニコニコ VOCALOID SONGSにチャートインした20曲を、チャート動向の観点から紹介した。

 なお、同チャートのポイントは年間を通しての積み上げ式であるシステム上、集計期間の途中である2023年内に投稿された楽曲は、同年間チャートでは不利になる。特に、2023年度においては、1月〜2月においては、ニコニコ動画が提供するオーディオ再生アプリである「ボカコレ」アプリの広告が、YouTubeなどで広く展開された影響もあり、新規リスナーが増加し、ロングヒット楽曲の再生回数やマイリスト数の規模が大きく増加した。その影響などにより、2023年内に投稿され、同チャートの年間Top20圏内にチャートインした楽曲は、「強風オールバック」「新人類」「デビルじゃないもん」「人マニア」 の4曲である。

 年間でのTop20圏内入りを逃したものの、2023年度の集計期間内に投稿された楽曲では、文月フミト「また誰もいない部屋に辿りついてしまった」、バルーン「花に風」、ピノキオピー「匿名M」、いよわ「一千光年」、いよわ「ももいろの鍵」、Ayase「HERO」、Omoi「トゥー・ユー・グリーンライツ」、ゆこぴ「寝起きヤシの木」、柊マグネタイト「リアライズ」、DECO*27「ブループラネット」が1週、いよわ「地球の裏」、稲葉曇「リレイアウター」が2週、週間首位を獲得した。また、2023年度以前に投稿された楽曲では、wowaka「ワールズエンド・ダンスホール」が1週、週間首位を獲得した。

 また、週間首位の獲得は逃したものの、てにをは「ザムザ」は9週、DECO*27「ラビットホール」は21週の期間、週間Top10圏内にチャートインしており、同チャートにおいて大きく存在感を出した。なお、「ザムザ」「ラビットホール」の2曲は、ニコニコ動画における再生回数は200万回を突破、マイリスト数は10,000近い数値を記録するヒットを見せたものの、惜しくも年間Top20圏内へのチャートインは逃すこととなった。
 ただ、それらのヒット曲が更にロングヒットを続ければ、翌年の年間チャートにチャートインする可能性も充分考えられる。

 Billboard JAPANにボカロチャートが新設されたことにより、大手メディアから「今聴かれているボカロ曲」についてのチャートが発表されるようになったことは、ボカロ界隈の発展において非常に意義のあることのように思える。
 2024年度も、どんな楽曲が産まれ、どんなボカロPが新たに人気を獲得し、チャートインを果たすか、そして1年後の年間チャートがどのような結果となるか、今から楽しみである。今後も、同チャートにチャートインした楽曲は、できる限り紹介をしていきたい。

 最後に、23年度“ニコニコ VOCALOID SONGS TOP20”チャートイン楽曲にチャートインした楽曲は、全部で201曲であり、内、23年度の集計期間が始まった2022年11月28日(月)以降に投稿された楽曲は、151曲である。上記は、1週以上チャートインした楽曲をまとめたマイリストであり、活用していただけると嬉しく思う。

 なお、Billboard JAPANでは、ボカロチャートだけではなく、Hot 100、アルバム、ストリーミング、ダウンロード、UGC、TikTok、Heat seekersなど、様々なチャートを設立し、様々な角度からヒットを可視化させている。
 中でも、総合ソングチャートである、2023年間Hot 100チャートでは、アニメ『【推しの子】』のオープニングテーマとして書き下ろされ、2023年4月12日(水)に配信開始、初登場から21週連続で週間首位を獲得した、YOASOBI「アイドル」が年間1位を獲得している。ストリーミングでは史上最速で5億回再生を突破して1位、ダウンロードでも50万回を超えるDL数を記録して1位を獲得しており、歴史的なヒットをすることとなった。
 また、2022年秋に配信開始され大きく人気を集めた、Official髭男dism「Subtitle」が2位、米津玄師「KICK BACK」が4位、なとり「Overdose」が9位にチャートインを果たした。また、2023年に更にアーティスト人気を拡大させたアーティストである、Vaundy「怪獣の花唄」が3位、Mrs. GREEN APPLE「ダンスホール」が7位を獲得、満を持しての自身初の年間Hot 100のTop10入りを獲得した。そして、アニメ映画とタイアップを組み大きく話題を集めた、10-FEET「第ゼロ感」が5位、スピッツ「美しい鰭」が10位にチャートインしており、ベテランアーティストの活躍も見逃せない結果となった。また、2022年度の年間チャートでもTop10圏内となり、2年連続でのTop10圏内となった楽曲では、Ado「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」が6位に、Tani Yuuki「W / X / Y」が8位にチャートインしている。
 また、2023年にリリースされた楽曲で、11位〜20位に登場した楽曲では、Ado「唱」が17位に、MAN WITH A MISSION × milet「絆ノ奇跡」が18位にチャートインを果たした。

 Billboard JAPANにおけるボカロチャートとHot 100チャートの動向は、似たような推移を辿ることもあり、並列してみるとよりチャートを楽しめることもある。Billboard JAPANのボカロチャートをきっかけに、ボカロチャートだけではなく、Hot 100などのBillboard JAPANの他のチャートにも触れてくださると、非常に嬉しく思う。
 2024年度も、どのようなヒット曲やアーティストが産まれ、どのような現象を巻き起こすのか、楽しみにしたい。

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