猫の転嫁行動 記録

初めに、我が家の猫達はとてもお利口だ。
問題行動は一度も起こしたことがない。
そして私はそれに甘えていたのだと思う。

朝、妹猫が怪我をしていた
鼻の上の小さな傷
8時半から8時35分の間の5分間の出来事である。

我が家の猫は完全室内飼いのため
怪我をしたのはこれが初めてのことであった。

朝から病院に行った。小さな傷でも化膿してはいけないと心配になったためだ。

先生はこのくらい大丈夫ですよと笑った
そしてこの場所の怪我は自分の手足では出来ません。
同居猫の爪が当たったのではと付け加えた。

今までそんなことは無かったので私は驚いたが
喧嘩ごっこでもしたのだろうかと考えてあまり気には留めていなかった。

家に帰ると姉猫が、自分も病院に連れて行かれてはかなわないと隠れていた。
これもいつもの事である。
姉妹と言っても、血は繋がっていない。

年齢は同じだが、姉猫の方は元野良で壮絶な幼少期を過ごしたようだ。
そのため、臆病で神経質、分離不安の様な症状も見られ、飼い主を親と思いいつもべったりであった。
一方妹の方は友人から譲り受けたため楽観的で素直、こちらも飼い主を親と思っている様だった。

翌朝、5時ごろ目覚めるといつも通り2匹が私と一緒に眠っていた。
しかし、目覚めた瞬間姉猫が妹猫を威嚇し手まで出そうな状態であった。妹猫も姉猫の態度に耐えかねて威嚇を始めた。

私は慌てて2匹を引き離し、比較的環境の変化に強い妹猫を母に預けた。

事態は最悪だった。
もう少し遅ければおそらく流血沙汰の喧嘩になっていただろう。
こんな事は初めてだったので私は今にも卒倒しそうであった。

思い当たる節はあった。嫌いな病院の匂い、昨日行った爪切りは妹猫の怪我を心配し、いつもよりも少し強引だったと思う。また、帰ってきてからも妹猫の怪我を心配し、姉猫からの要求に気づいていなかった可能性もある。

私は酷く反省した。妹猫を預けて居る間、姉猫と2人の時間を過ごした。
姉猫は妹猫が居ないにも関わらずいつも以上にご機嫌で喉を鳴らしながら私のそばを離れなかった。

この時初めて、姉猫も妹猫も今までお互いにかなり譲り合って絶妙なバランスで共同生活を成り立たせていたことを知った。
同時に妹猫が居ないことに喜びを感じている姉猫が悲しくもあった。
今までお互い譲り合っていた部分が遂に爆発し、ぶつかり合いが始まってしまった。

私のせいだ。9年間ずっと、この子達に可哀想なことをしていたのだろうか。

調べると、姉猫のこの行動は転嫁行動というらしい。
ストレスの捌け口をストレス源ではなく弱い立場の同居猫に行う。
9年間一緒に過ごしてきて言葉はなくても猫たちの要求はある程度分かるようになっていたとは思っていた。
生き物を飼うということの難しさと責任を改めて感じた。

19時、妹猫を迎えに行きケージ越しに対面させた。お互い1人でゆっくり過ごした為、もしかすると仲直りできるのではないかと思った。

しかし、どちらか1匹が威嚇をするともう1匹も威嚇を仕返し、お互い譲らないまま1時間が経った。

2匹が威嚇し合うのにも疲れた頃、妹猫をケージから開放した。
すぐに姉猫が駆けつけてきた。
私は仲裁しなければいけないと思い2匹の大好きなおやつやおもちゃで気を引き
威嚇が始まる前に気を逸らした。

お互いがお互いを意識しながらも威嚇し合うことはなかった。
妹猫も姉猫に匂いを確かめられても気づかないふりをして目を合わせず喧嘩にならない対応をしてくれた事で
ギクシャクはしながらも同じ部屋で過ごしたり、遊びに参加したりできるようになった。

夜中3時。遊び疲れ妹猫が私のベッドで眠り始める。姉猫はその様子を注意深く見ていた。

明け方四時、妹猫が布団に潜り込み姿が見えなくなると、姉猫もベッドにやってきた。いつもより落ち着きはないが喉を鳴らしている。

このまま少しずつ元に戻ってくれると良いのだが、全ては本人の気持ち次第である。
調べると、突然仲違いする事は珍しい事ではなく、中には一生そのままのケースもあるようだ。

思春期の女の子達の母のような娘を思う気持ちに似ている。この気持ちになんと名前をつけようか。

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