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「あの写真、いい写真だな」 誠治の声で僕は鮮やかな思い出から現実に戻った。 「僕もそう思…
工事の作業現場を横切った時、不意に彼女は懐かしそうな口ぶりで言った。 「あのヘルメット…
石畳の道は、ヨーロッパの方が印象的で外国の文化だと思っていた。だけど、初めて見た神楽坂…
大学のある駅から乗り換えを含めてニ十分の駅、その最寄り駅から徒歩十七分の場所にある築三…
逆転サヨナラ負けを喫した敗戦投手のように肩を落とし、沈んだ気持ちで大学へとやってきた。…
「私が、御社を志望した理由は御社のカメラを長年愛用し続けており、その性能の良さを日々実感…
「和樹、お前のお客さんだ」 マスターの声で振り向くと、そこにはリクルートスーツ姿で、長い髪をポニーテールにまとめている彼女が気恥ずかしそうに立っていた。戸惑いが表情になる。この手のドッキリは苦手だった。思わぬ展開に単発的な怒りが現れそうになり、思わず彼女ではなく誠治たちを睨んだ。美沙がさっき言っていた言葉の真意をようやく理解した。 「和樹、悪いな」 ドッキリを画策した代表者として、誠治は謝罪の言葉を口にした。 「カズ君、ゴメンね。美沙の話を聞いていたら、私もお願いしたくな
「よぉ、和樹」 店に入ってきたリクルートスーツ姿の男が誠治だと認識するまで時間が掛かっ…
美しい桜のピンクが新緑へと移り変わり、ゴールデンウイークで賑わう街に辟易していた。この…
「お疲れ様。どんなエントリーシートだったの?」 公な決まりはないため、企業によってエン…
飲み会の帰り道、一人で歩く夜道は切なさの色を含んでいる。切なさに色彩が存在していないこ…
「ねぇ、和樹。今でも茜のこと好き?」 とても鋭い牽制球だった。けれど僕は美沙が何かを切…
誠治たちがいる席は何度も通されている掘りごたつの個室だった。廊下と席を仕切る薄い引き戸…
卯月の夜の高田馬場駅周辺は、異様な雰囲気が漂っている。新歓という名の飲み会を周辺の大学に通う学生が企画して、今からデモを行うと言っても不思議ではない程に若者で溢れ返っていた。その多くは近くの有名大学の学生ではあるが、ちらほらお仲間の顔もそこにはあった。 この景色を見るのは四回目。活気が漲り、若さで全てを乗り越えられると言わんばかりの雰囲気が広がっている。この雰囲気への抗体は付いていると思っていたが、いざ、この場所にいると特殊な賑わいに慣れないままであることを突きつけられる