傘越しの青い羽根

どうもこんばんは.

窓の外で降り注ぐ雨を眺めていたら,少し前に傘を失くしたことを思い出しました.

ある日大学から帰ろうとしてエントランスの傘立てを探してもみつからなかった,オフホワイトの地に濃淡のある青で羽根がプリントされたお気に入りの傘.

18歳の頃から使っていたので,おそらく4年間くらいは連れ添ったはずです.湿気のせいでくせっ毛が自分の手に負えなくなる憂鬱な雨の日,どんなに家の外に出るのが億劫でも,その傘を握ればなんとなく心が軽くなるような相棒でした.

失くしてしまってとても悲しい.

こんなことなら普段から,失くしてもさほど精神的ダメージが大きくない100均のビニール傘を使っていればよかったかな,
と心の中でぼやいてから,それは間違っているなと思い直しました.

失くしてもなんとも思わないようなどうでもいいもので身の回りを固めて,
どうでもいいものが人生に溢れかえってしまったら,それこそどうでもいい人生になってしまいそうです.

代替可能なものを次々に取り換えていく,代替可能な人生.
そんなものに私はきっと価値を見出せません.

代わりのないものを失くしてしまうのは怖い.だからこそ,
大切なものを大切だと自覚した上で、
いつか無くなってしまう事も知った上で,
それでも自分のそばに置いて生きることを強さと呼んでいいと思います.
人間もそう.

少し前までは,全ての人間とはいつか関係に終わりが来てしまうと思っていたから,素敵な人と出会う度に
「こんな人生の序盤で出会ってしまったのが悔やまれるな,
もう少し遠い先の未来で出会いたかったな.」などと思っていました.
本当は,今会えたからこそ素敵な人だと思ったり,惹かれたりしているはずだし,関係が続かないことを前提に考えるのではなく,その素敵な人間と長い関係を構築するための努力を惜しまないことのほうが重要なはずなのに.

失くしてしまうのを怖がっていたんだなぁ.
傘を失くしたことがきっかけで気が付きました.

あの傘だって,5年後の私がお店で見かけても心が惹かれることはなかったかもしれません.
4年間もの間,雨の日の私の相棒になることもなかったかもしれません.
18歳の私が出会ったからこそ,私にとって大切な傘になったのでしょう.

青い羽根の傘は私の傍から離れてしまったけど,大事なことに気付かせてくれました.出会えてよかった.
時間はかかるかもしれないけど,失くすことを怖がりつつも大切なものを傍に置いていられる強い人になるよ.

これを読んでくれたあなたも,失くしてもいいようなどうでもいいものを傍に置いたりせず,大切なものをちゃんと大切にしてくれたら嬉しい.

ではまた.