目を伏せる
そして私はひとりになり、うつむいたまま動けずにいる。
声をかけるのに、何度あの人の後ろ姿を追いかけただろう。
友だちの多いあの人には、いつも誰かがガードしているようだった。
男友だちだったり、友だちのフリした女たちだったり。
だけれど、時々目が合う。
ひとりになれない、もどかしさを感じているだろうあの人を救ってあげたい。
何日もかけて観察する。
朝は中学から一緒だと言う親友もどきといる事が多い。
昼は同じ学部の友人と自称する人たちと、うるさい女たちが取り囲む。
駅で見かけるあの人は、いつも違う女に絡まれている。
腕を絡ませて執拗に迫る女たちに、顔をしかめる。
そんなあの人を見ているのが辛い。
私は、意を決してあの人には不要な人たちに分け入る。
そしてあの人が、私を呼ぶまで目を伏せて待っている。
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