削女の記憶
思い出すきっかけは何ですか?
付き合いのあった人との偶然の再会。
いつだったか、どのくらい付き合ったか。
もちろんすぐに思い出す事は無かった。
アイスクリームケースで向かいあった時ですら思い出す事はなかった。
それでも何かは感じたのか振り返ると、その人もこちらを見ていた。
思い出したのはレジに並んでいるその人の後ろ姿を確認した時。
お釣りを受け取る手に、覚えがあった。
私は人に頭を撫でられたりするのが嫌いだ。
上からの押さえつけも嫌だし、なでなでされるのも嫌だ。
それがどんなに優しさと愛情がこもってると言われても。
その人は、人間的な手をしていた。
大きい手、長い指。綺麗にきりそろえられた形のいい爪。
中指にたこがあって、細長いけど関節はしっかりしている。
私の大好きな手だ。
私がその手に見とれている間、そっと頭に置いてくる。
押さえつけるでもなく、なでるでも無く。置く感じ。
だから、嫌だと言うタイミングを逃してそれが当たり前になる。
そんなエピソードあっても、別れ自体はあまりいい感じのものには
ならない。いい別れなんて、存在しないものだから。
分かれた後は、その人との事は忘れるようにしている。
簡単に思い出さないようにするが正しい。
相手も同じだと思う。
私が思い出したように、相手もたぶん思い出しただろう。
アイスクリームケースで向かい合った時か、何かを感じ取って振り返った時か。それともどこかで私の後ろ姿を見ていた時か。
何が思い出すきっかけになったのだろうか。
ちなみに、成長が早かった私は、どの年代で出会った人にも「変わらないね。」と鼻で笑われます。
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