『君たちはどう生きるか』感想メモ

・考えさせられた。といっても陳腐な意味じゃなくて、感覚が前のめりになって少しでも多くの情報を読み取ろうと必死になっていた。つまり夢中になっていた。

・荒唐だが無稽ではないプロット。一歩間違えればパプリカと化していたであろう世界観の飛躍を、王道ど真ん中のストーリーがギリギリのラインで繋ぎとめて華麗なアクロバットに昇華させている。

・おかげで目と耳が忙しかった。ここまでの飛躍が許されたのは今までのジブリ作品が着々と編んできたコードの効果によるところが大きいだろうし、思考停止でそれを受け取った視聴者のことを信頼してくれている。本人にとってはやりたい放題やっただけかもしれないけど。

・タイトルについて、あえてメッセージ性を見出すとしたら、ラストでマヒトが持って帰ってきた石が重要な意味を持っているだろう。それは世界の均衡を保つのはおろか、大した力を持たない石であった。その矮小な一石をどこに配置しようが他者に見咎められることはないし、そもそも世界に大した影響を及ぼすわけでもない。でも僕たちは知ってしまった。異なる世界でも親しい人たちがそれぞれの形で生きていて、自分はその果てしない連関の中にどうしようもなく立たされているという事実を。時空を超えて記憶を繋いだ以上、その縁となる物体を現世に持ち帰ってしまった以上、もはや知る前には戻れないのだ。タイトルの問い手はこの物語ではない。自分が、自分自身にどう生きていくべきかを無意識に問い続けることになるのである。

・根底にあるテーマは、超ざっくり言って人間讃歌だと解釈した。どうにも複雑で理不尽な現実だけど、腐らず石の置き場所を見極めていこうな。

・世界観の閉じ方めちゃくちゃ綺麗だったよね。


とりあえずこんな感じで。いい映画でした。


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