見出し画像

小説✳︎「紘太と結里子」 第10話


こちらは
「月明かりで太陽は輝く」
のサイドストーリーです。
宜しければ、まずは本編を
読んで頂けたらうれしいです。



2人で過ごす休日。いつもの喫茶店でまったり。
紘太のLINEに澄美からの連絡が入る。
お中元のいくつかを、持って行ってくれないかとの話だった。
「また、同じ手を使ってきたよ」
紘太は笑いながら、結里子にメッセージを見せた。
「お母様、紘太に会いたいんだよ」
「結里も一緒なら行っても良いかな?」
「え?私も?」
紘太は母親に今から行っても大丈夫か尋ねた。すぐに返事が来て、2人は紘太の実家に向かう。

結里子も少し緊張しながら
「ねえ、紘太。このままでいいかな?着替えなくていい?」
「別にいいよ。母さんはもう会ったことあるし、今更気取る必要無いよ」

大きな門の前に2人は立つ。
「ここが、紘太の育ったお家なんだね。うちとは全然違う」
「古い家だよ」そう言いながら、紘太は呼び鈴を鳴らすと澄美の声がすぐ聞こえた。
門を開けてよく手入れをされた庭を少し行くと、駐車場と玄関が見えて来た。

玄関の前に澄美が待っていた。
「ようこそ、結里子さん。一緒に来てくれて、嬉しいわ!」
「私の方こそ、すみません。一緒に来ちゃいました」
「結里が一緒に行ってくれるから、来たんだよ」
「また、そういう言うかたするんだから。さあ、どうぞ入って入って」

玄関ホールは吹き抜けで
天井には大きなシャンデリアが光っていた。
「わー綺麗」つい声に出してしまった結里子。
玄関の端には沢山の箱が積まれている。
「結里子さん、頂き物ですけどこの中のどれでも好きなもの、持ち帰ってね」
各地の特産物から、調味料、スイーツやコーヒーやお酒などの嗜好品。缶詰、瓶詰めetc……。
まるでデパートのお中元売り場のように、色々な物が置いてあった。
「こんなに沢山!迷っちゃいますね」結里子は澄美に言った。
「もう消化しきれないのよね。ありがたいとは思うのだけど。まぁ、後でゆっくりご覧になってね。まずはお茶でもどうぞ」
澄美は2人に笑顔で、リビングへ促した。

結局、何箱ものお中元を持ち帰るには
ちょっと大変だったので、澄美の車で
2人と荷物を載せてアパートまで送ってもらうことになった。

アパートの前に着き、荷物を運ぶ。
澄美は「ここなのね。もう、紘太1人じゃないから、住所は聞いてたけどお邪魔しちゃいけないと思ってたの。駅からもそんなに遠くないし、住みやすそうでいいわね」と紘太達に向かって言う。
「うん、結構いいよ」紘太は答えると
「それは、結里子さんが一緒ならどこだっていいんでしょうけど」
ちょっと悪戯《いたずら》な目で、澄美は結里子に笑いかけた。
「また、いつでも遊びに来てくださいね。私も結里子さんと一緒におしゃべりするの楽しいのよ。親子共々、よろしくね」

全て運び終わると、紘太と結里子は澄美にお礼を言い澄美も「またお会いしましょう」と車を走らせた。

紘太は母の澄美が、本当に結里子を気に入ってくれて安心した。
白土家の1番の理解者で味方だった澄美が、受け入れてもらえたら……。

少しづつ紘太は結里子との、これからを意識する様になって行った。



#紘太と結里子
#月明かりで太陽は輝く
#サイドストーリー


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?