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小説✳︎「紘太と結里子」 第11話

こちらは
「月明かりで太陽は輝く」
のサイドストーリーです。
宜しければ、まずは本編を
読んで頂けたらうれしいです。

二人暮らしを始めて、2年になろうとしていた。

結里子が夜勤の日
紘太は、いつかの夜店で買ったおもちゃの指輪を、こっそり持ち出してジュエリーショップへ行った。

「いらっしゃいませ」
「あの、このサイズの指輪を作りたいのですが」
紘太はおもちゃの指輪を差し出す。
「ご婚約指輪ですか?」
「あ、いえプロポーズする時にと思って」
「はい。それでしたら『プレエンゲージメントリング』になりますね。それにはこちらの方はいかがでしょう」
「プレエンゲージメントリングって言うんですか?」
「はい、まずはサプライズプロポーズでこちらのリングをお渡しして、婚約指輪はもっとグレードの高いものをお相手の方と一緒に選んで頂くお客様が多いですね」
「あ、そうなんですね」
「ええ、やはり一生ものでしたら、ご本人が選ぶ事が1番ですから」
「プレエンゲージメントリングはもう少し手軽で普段使いできるものです」
「なるほど」
「因みにお相手の方の誕生月は何月ですか?」
「6月です」
「誕生石をお贈りになる方も多いです。6月は、この辺りになります」

紘太が【JUNE】と書かれたショーケースを見ると、オレンジ色の石が目に入った。

「このオレンジのは?」
「こちらはオレンジムーンストーンですね。」「オレンジの月ってわけか」思わず紘太は言うと
「本当にそうですね」店員も同調してくれた。

太陽の色の月になる。結里子の様だ!そう思った紘太はすぐ
「これにします!」と店員に答えた。
「お持ちいただいた指輪でサイズはよろしいでしょうか?」
「あ、はい。ピッタリだと言ってました」
「承知いたしました。ではお預かりして……」


結里子に秘密ごとは初めてだ。
バレないかヒヤヒヤな紘太。
指輪はどうやってプレゼントしようか?

食事をして、デザートのケーキに添えるのは?
びっくりするかな?
その位のサプライズあってもいいよね?

後日、出来上がった指輪を
デザートと一緒に出してほしいと
前から結里子が気になると言っていたイタリアンのお店に頼みに行く。日にちは後日連絡しますと。

その日に着る服は
結里子が紘太の誕プレにくれた
お気に入りのブルーのシャツにしよう。

そうそうスーツも、クリーニング屋に出そうかな?
彼女がOKしてくれたら、結里の家族にもご挨拶だ。


紘太にとって、温かく思いやりある新しい家族を作ることは夢だった。
プロポーズの準備を進める。ワクワクとドキドキに最高の幸福を感じながら。

結里子も日々平凡ながら幸せなを感じ過ごしていた。一緒に暮らし始めてもうすぐ2年。不動産屋からアパートの更新を打診された。

あれから沙有里と颯人は留学を終えても、そのままイタリアで仕事を見つけ移住してしまった。その後にコロナ禍になり、帰国できずいる。変わらない2人の仲睦まじい様子は、時々送られてくるスマホの画面からも感じる。

そもそも紘太との出会いは沙有里と颯人の結婚式だ。お互いいわゆるお年頃にもなっている。出会った時から頭の隅に結婚が見え隠れしているのは事実。日々平凡だけど楽しく過ごせている分、もう2年になるんだと思うとどうなんだろう?
なんでも話はしてきたけれど、そこに関してはお互い、踏み込むチャンスを窺っているような気がする。

その日、結里子は夜勤のため、紘太を玄関で見送る。
今度の休みは、ディナーに行かないか?と誘われた。
(よし、その時に切り出してみよう!)
結里子はベランダからを見送り、大きく手を振る紘太の笑顔を見ながらそう決心した。




#紘太と結里子
#月明かりで太陽は輝く
#サイドストーリー

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