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嘘つきは猫泥棒の始まり 第6話

翌日、拓実はバイトを休んだ。
その次は出て来たけれど
小さな恋人を無くした拓実は
打ちひしがれて、すっかり元気がない。
そして、ずっと万里が寄り添っている。

私は、ミーはうちにいるよと、まだ
打ち明けられずにいた。

たまたまスーパーで、拓実の母親とすれ違った。
母親の方から声を掛けてきてくれた。

「華ちゃん。お久しぶり。
ミーちゃんいなくなってから華ちゃんもうちに来ないから寂しいわ。たまには顔出してよ」
「ご無沙汰しています。ミーいなくなってから、柳下くんも元気ないですね」
「そうなのよ。その代わりに女の子が入り浸っちゃって。悪い子じゃ無いんだけど、なんか泥棒猫みたいよね?華ちゃん取り返してよ、うちの息子。あ、それよりうちの息子じゃだめかしら?私も華ちゃんが好きなのに」

「ありがとうございます。でも私なんかより、あんなに綺麗な若い子の方が柳下くんも好みなんじゃないでしょうか?」
「やだ、違うわよ。抜け殻状態だから、そばにいるの許してるのよ。ミーを引き取ることにしたのは、華ちゃんを助けたかったのよ。もちろん先代ミーが、虹の橋渡ってそんな経ってなかったけど、もう悲しすぎるから猫とか飼わないって言ってたんだから」
「初めて、聞きました」
「華ちゃんと拓実、良い感じだったのに」
「そ、それは」
「あら、こんな時間!華ちゃんもごめんね。バイト行く時間?また、遊びにきてね!」

ミーを預かってるって又
言えなかった。

お母さんにも、嘘をついたことになった。

嘘つきは泥棒の始まり。

バイト先で拓実とすれ違うが
暗い顔で挨拶しかしない。
いよいよ心配になってきた。
本当にミーが居なくなって
落ち込み方が半端ない。

そんな時、万里がやってきて
「前島さん、拓実君あれからご飯も食べなくなって、夜も寝られないみたいで私が色々やっても口もきかないし
猫、見つからないと死んじゃうかもしれません。
元々、私が猫なんて大嫌いなのに、拓実君に近づきたくて共同飼育者になりたいなんて言ったからこんな事になってしまったんです。猫が戻ってきたら嫌だと思ったけど、あの姿は見てられません。どうやったら見つけられますかね?」
「笹元さんは猫嫌いだったの?」
「もう、諦めます。猫戻って来たら拓実君とは付き合えないし。ぼろぼろの今の彼は全然かっこよくないし。ただ責任は感じてるので、見つけるお手伝いはします」

万里ちゃん、思ったより良い子かも?

私も、いい加減
泥棒を続けるのはやめよう。

その夜、ミーを連れて
拓実の家へ向かった。

玄関に立つミーを抱えた私ごと
拓実は抱きしめて、号泣した。

「柳下くん、ごめん。私
嘘ついてた。本当はミーを
預かっていたのに」

しばらく声を出して泣いた後
拓実は言った。
「ミーが生きてて元気なら良かった。
嘘つきは僕です。ミーをだしにして
華先輩と付き合いたかった事、言わなかった。本当は好きだったのに、彼女にしたいのに、共同飼育者なんて言って。このままミーが見つからなかったら、どうしたらいいかわからなくて、僕……」

ミーは、ゴロゴロと喉を鳴らした。

#初耳
#もうやめよう
#号泣




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