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短編小説✳︎青い朝顔 ❻ 届かない

飲み物を一口飲んだ後、雄介が小夜の肩に手をかける。
小夜も麦茶なのに、体が火照ってきて心臓が激しく鼓動する。
雄介は小夜にささやく。
「あのさ、浴衣、小夜は自分で着たの?」
「え?うん。自分で着られるよ」
「あぁ。そう」
少しホッとしたような顔を、小夜は見逃さなかった。
(そう言うこと?)
雄介は一つ年上だけど、ちょっと可愛いと小夜は思った。

キスをしながら、小夜の頭を優しく枕にのせた。
浴衣の帯をぎこちなく、外す。
浴衣をめくっても、腰巻が。
それをめくっても肌着が出てきた。

「え?着物ってこんなに重ね着してるんだ?」
つい驚いて雄介はつぶやく。
「ま、まあね」
「玉ねぎみたいだな。むいてもむいても、芯に届かない」
思わず吹いてしまった小夜。
雄介も笑う。
おかげでお互いの緊張が取れて、より自然に抱き合う事ができた。

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