見出し画像

嘘つきは猫泥棒の始まり 第3話


第3話

「恋人のミーが死んだんです」
「みー?」
「僕が小学生の時から、飼い始めた猫です」
私は一瞬脱力した。

「あ、そうなんだ」
「恋人だったんです。落ち込みますよね」
「ま、まぁね。でもそれだけ愛されていたんなら、そのミーちゃんも幸せだったんじゃない?」
「そうだと思ってます。でも悲しいです」
そこで、ハッとした。
「ね、ね。ミーちゃんの代わりと言ってはあれなんどけど、私さ、今、猫預かってるんだよ」
「猫?」
「アパートでは猫飼えなくてさ、大家さんには飼い主見つかるまでって頼んだんだけど、SNSとかに出してみようかと思ってた所」
「どんな仔ですか?」
「あ、この仔なんだけどさ」

スマホの画面を見せた時
いきなり拓実はそれを掴んだ。
「ミー!」
拓実は叫んだ。
「ミーにそっくりだ。ミーだ!」
「拓実くん、声大きいよ」
「ミー生まれ変わってきたんだね」
ポロポロ泣き出した拓実に
私もつられて泣きそうになる。
「会わせて下さい!」拓実は叫ぶ。


自分の部屋まで、拓実が来るのは
初めてだ。
しかもいきなり。

「ちょっと、待ってて」
私はドア開けて、中を覗く。
小さな部屋だ。
玄関からほぼ全て見渡せる。

部屋干しした下着は取り込んで
脱ぎっぱなしのパジャマは
掛け布団に突っ込んで。
テーブルの上の
置きっぱなしのグラスと
ペットボトルを流しにおく。

「あとは〜」
ぐるりと見渡す。
壁に飾ってある推しのポスターは……。
まぁ、いいかな。

「お待たせー。どうぞ」
「お邪魔しまーす。え?結構綺麗にしてるじゃないですか」
「どんな汚部屋を想像してたのよ」

軽く拓実の頭をこづいた。
「いて。あ〜!わ〜!ミー‼︎」

拓実は、私へのツッコミも忘れて
すぐに子猫の元へ駆け寄った。

「ミーだ!ミーだ!そっくりだぁ」
拓実はあまりにも無邪気に
子猫を抱きしめ微笑む。
いや、半べそだ。

「前島先輩!ミー。連れ帰って良いですか?」
「良いですかも何も、引き取ってくれたらこっちが万歳なんだけど」
「いやー。出会うもんですね。
俺、明日から前島先輩の言うことなんでも聞きます!」
「それは良いけどさ。ご家族に聞かなくても良いの?」
「良いも何も、うちの母もロスってたんですから!絶対喜びます」
「それなら良かった。
良かったね。あんたの面倒見てくれる人、見つかったよ」
拓実の抱く子猫の頭を撫でる。
拓実の顔がすぐ近くにある事に
はたと気づいて、ちょっとドキッとしている自分。
今、私の部屋で二人きり。
(子猫は居るけど)
意識するとドキドキとしてきた。

「どうやって連れて帰ろうかな?」
拓実が行った言葉に、私は我にかえった。



#恋人は猫
#生まれ変わり
#2人きり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?