曲がる歯ブラシを作る思考
例によってポッドキャストの話なのだが、今日は『不器用な研究者がホントに伝えたい話』を聞いた。
研究者をゲストに呼んで話を聞いていく番組らしいのだが、
第1回のゲストは東京工業大学の西田佳史教授。
当初は高齢者福祉を専門としていた西田さんだったが、自分の子供が生まれたことをきっかけに、日本に子供の福祉が欠けていることに気づく。
さっそく誰か研究している人がいないかを検索したところ、
子供の事故についての大家である山中龍宏先生のHPを発見。
速攻電話して関係を構築し、子供の福祉について研究していくことになる。
さて、高齢者も子供もケアラー(介護者)が必要になってくるが、
子供の事故の場合は大体親が責められる。
「ちゃんと見てろよ」
「目を離すからそうなる」
「まーー!!」等々…
世間が親に対して責めまくりな空気を自分も感じている。
しかし西田さんが「実際に子供が転ぶ場面」を集めて調べてみると、
子供が転ぶのにかかる時間は0.5秒だった。
そして人間が映像を見て事態を認識するまでには、最低でも0.2秒かかる。
つまり親は残り0.3秒で転ぶ子供を救い出す必要があるのだが、親が1mのところで見守っていた場合でも、瞬時に時速24kmまで加速しなければならない。
なんだか空想科学読本みたいな話になってきたが、
つまり、子供が転ぶことを親が防ぐのは難しいということだ。
となれば、必要なのは「親の意識が足りない!!」とか騒ぎ立てることではなく、周りの環境を変えることが重要になってくる。
そんな流れで生まれたのが曲がる歯ブラシ。
きっと多くの人が、転んだときに歯ブラシが刺さって大事故になるという話を聞いたことがあるだろう。
実際これは軽い話でもなんでもなく、
2018年には500人以上の子供が大事故どころか命を落としている。
※以下は参考文献だが、ちょっときつい画像があるので注意↓
https://www.hospital.asahi.chiba.jp/common/pdf/section/consultation/pediatrics/er06.pdf
西田さんは「座らせて磨かせる」などの助言はもっともだが、激しく動き回る子供の事故防止としては現実に即していないと判断。
「転ぼうが刺さらない歯ブラシを作るべきだ」という結論に至り、企業と協力して曲がる歯ブラシが誕生した。
「全てが安全に守られた社会が良いのか?」という問いに対しては、
西田さんは「多少の怪我はすれど、致命的なダメージを負わないようすることが重要」だと言っている。
そして、「全部ナチュラルがいいんだ」「自然がイチバン!」という意見には明確に異を唱えており、そこは人工的に制御して手に負えるレベルくらいにはしていくべきという考え方のようだ。
たしかに……!
いやはや、自分は今までぼ~~~っと生きてきたんだなあと気付かされた。
子供が転ぶのを防ぐのは親の役目だと自分も思っていたが、たしかに今まで自分が見てきた転ぶシーンは、親がどうこうできるものではなかったように思う。勝手に走って即転ぶし。そして泣くし。
自分も親に歯ブラシの危険性を注意されたことや、実際軽く喉奥を突いてめっちゃ痛かった思い出はあれど、それをどうにかする製品を作ろうということなんて何十年も生きてきて考えたことがなかった。
人を救う製品が作れる人は憧れる。
しかし2018年でも500人の死亡者とは……想像以上だ。
去年結婚した友人に子供が出来たら、
曲がる歯ブラシを送るべきかもしれない。
そんな事を考えた、独身の冬。
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