速聴への感謝と化物語とAudible
高校生の頃だったか。
担任の先生が突然、朝の時間にラジカセから倍速音声を流すようになった。
先生曰く、「これはとても大事な能力を鍛えられる」とのこと。
半信半疑ではありつつも、その先生に絶大な信頼を寄せていた当時の自分は、朝の時間に行われる倍速視聴……いや、映像は見ていないので”速聴”には、毎回真剣に向き合っていた。
その経験のおかげなのか、その後自分にとって倍速は実に馴染み、現在ではコンテンツを湯水のように消費できている。
今や大倍速時代であることを考えると、先生の先見性には驚かされる。
おそらく今頃はどこかの学校の校長とかをやっていることだろう。
というわけで、テレビやYoutubeなど世の中の多くのコンテンツは、倍速に慣れた人間にとってはあまりにも遅い。
未だに倍速対応していないサービスなんて、正直勘弁してほしいと思う。
そんな自分がついに使い始めたサービスがある。
それがAudibleだ。(30日無料体験)
いやもうめっちゃアフィリエイト誘導みたいな記事導入だが、そういう記事ではないので安心してほしい。(この言い方がもうマルチっぽいが)
Audibleは、本を音声で聞くAmazonのサービスだ。
声優や芸能人などが音声収録をしているため、非常に聴きやすかったり、ファンアイテム的な要素もありつつ、倍速にもバッチリ対応している。
これなら何か別作業をしながら本の内容を頭に流し込めるので最強である。
既にポッドキャストを環境音のように流している自分にとって、これはもうベストマッチどころではない。
……だがこのサービス、昔は本当に使い物にならなかった。
昔のAudibleはこうである↓
誰が使うの?
一応擁護しておくと、Audibleは一冊が超高い。
そりゃまあ何時間にも及ぶ音声収録をしているのでコストもかかっているだろうし、高くても当然とは思えるのだが、基本的に紙の本の2〜3倍の価格なのだ。
そして別個に文字データが手に入るわけではない。
手に入るのは音声データだけ。
(よくこんなサービスで内容でいけると思ったな……)
しかし、今のAudibleは進化を遂げた。
他のサブスクのように、『聴き放題』の登場である。
これがもう完全に狂っている。
自分が読むのに果てしない時間を要したプロジェクト・ヘイル・メアリーも、13時間の音声収録をしているのに聴き放題。
ちなみに月額1500円は変わっていない。
ぶっちゃけこの本だけで元が取れる。(下巻は6月30日配信予定)
そしてなにより自分が無料体験するきっかけになったのは、西尾維新の物語シリーズのラインナップの充実だ。
きっと自分と同年代はド直球の人が多いであろう物語シリーズ。
最新作の戦物語では「主人公の結婚」という自分に大ダメージなテーマで衝撃を受けたが、これをきっかけに過去作を読み返したくなった人も多いだろう。
……だがそんな苦行は諦めたほうがいい。
以前、noteでプルーストの「失われた時を求めて」についてちょっとだけ触れたことがあるが、世界最長の小説として有名な「失われた時を求めて」よりも、物語シリーズを全部読む方が長い。
なにせ物語シリーズは全部合わせたら30巻はあるし、講談社BOXなので文字もギッチギチなのだ。
それでも過去作が読みたくてウズウズしている人も居るだろう。
自分もそうだ。(ぶっちゃけ内容忘れてるし)
……安心してほしい。
Audibleなら、死物語(上)まで全部聴き放題だ。
これを紙の本で買おうとすると計3万円ほどかかるわけだが、なんで余計にコストのかかったAudible版が聴き放題なのかは謎である。
ちなみに物語シリーズの死物語(上)までのAudible収録時間を合計すると、281時間くらいだった。
じっくり本を読むか、音声で聴いて他のタスクもこなすか、
選ぶのはあなた次第……!!
本を読むというのは結構大変なのだ。
じっくり腰を据えて、体を安定させなければ本は読めない。
なぜ自分がKindleOasisを風呂読書にしか使わないのかといえば、それくらいしか本にだけ向かい合える時間がないからである。
例えばエアロバイクをこぎながら本を読むのは無理ではないが、なんかちょっとブレて不愉快。
それが音声コンテンツだったら実に快適。
腕も空くし、ダンベルでも握っちゃおうかな?
音声読書、最高!!
……とまあここまであれこれ褒めといてあれだが、もちろん盛大にデメリットもある。
やけに褒めてる人が多いAudibleだが、デメリットに全然触れていないのは気味が悪い。(きっと紹介料が高いのだろう)
もちろん、挿絵も皆無で文字だけの小説を読む分には音声だけでもまあまあ問題ないわけだが、Audibleで推しているビジネス書などの類は、音声では無理のある場面が頻出するのだ。
例えば成田悠輔氏の「22世紀の民主主義」。
この本だが、あくまでも読み手の台本は書籍を元にしている。
なので本に書いてあることを素直に読み上げる。
例えば、
「〜ということだ。脚注7」
というように、ひたすらに脚注+数字を文末で読み上げ続けるのである。
これはもう紙の本にそう書いてあるからしょうがないのだろうが、音声コンテンツなのでその場所に飛べるわけでもなんでもない。
Audibleには他にも数多くのビジネス書が読み放題にラインナップされているが、多くのビジネス書はグラフや絵をいっぱい書いてなんぼの世界なので、音声コンテンツとの組み合わせは最悪だ。
「図1を見ればわかるように…」とかいわれてもわかるわけがない。
これは音声コンテンツなのだから。
(PDFを手元で眺めれば見られるが)
そして音声なので、電子書籍を買った際に当たり前に使えるマーカー機能や、単語検索、メモ等も使えない。
音声コンテンツは現状、向くものと向かないものが明確に分かれるサービスなのだ。
Audible展開を考えている人は、紙や電子の本の段階でそれを見据えた書き方をしないと問題が起きるかもしれない。
というわけで褒めたりディスったりしてきたが、ベストなものを選んだら最高のサービスだと思う。
自分の読みたかった小説なんかがラインナップにある人は、月額1500円の元なんて即座に取れることだろう。
オフライン視聴もできるし、通勤やトレーニングでも大活躍だ。
自分もこれなら「三体」が読めるかも……!?
しかしなんだかポッドキャストに動画にAudibleにと、耳と時間が足りないにも程がある。
そしてもはや小説すらこんな価格で聴き放題になってしまったとは。
未来を描いた小説ではあらゆるものがほぼ無料になった世界が出てくることがあるが、本当にそういう世の中になっていくのかもしれない。
年間1万円でAmazonの全てのサブスクサービスが使えるコースとかあったら、サクッと入っちゃうかも……?
(アメリカだとPrime会員になるだけで年間2万円だけど)
そんなわけで、西尾維新ファンはAudibleがオススメというお話。
戯言シリーズに関しては、配信は来年らしいので1年待ちましょう。
いやはや、凄い時代だ……。
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