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【つながる旅行記#32】むつ科学技術館で「みらい」を考える part.1

前回、浅虫水族館を満喫し、また電車に乗り込んだ。

そして今は道路をひたすら歩いている。

本来歩道だったであろう部分は雪に埋まっている。
「こんな歩道を歩くやつとかおらんやろ」という思いを感じる。

盛大に壊れている

あ、チェックポイントが見えた。

そう、今向かっているのは「むつ科学技術館」。

場所はと言うと……。

ここである。

前回からめちゃくちゃ移動しているが、浅虫水族館に行ったのと同日だ。

むつ科学技術館はバスで直接来れるようにはなっていない。
主要な道路からはちょっと離れた感じの場所にある。
日本原子力研究開発機構があるので、これも当然なのだろう。
そりゃ歩道も雪で埋まるはずだ。

さて、このときの時刻は15時

いや15時って……。


メタい事を言ってしまうが、本当にこのときの自分は何を考えていたのかがわからない。明らかに暴走している。
1月の夜中に富士山駅に行ったときと同じものを感じる。
ひたすらに、青森を巡ることしか考えていなかったのだろう……。

あと1km。
よく見てみれば、この謎の「手のキャラクター」も車に乗っている。

そう、まさか歩いてくる人間が居るとは想定していないのだろう。

しかもに。

動物の気配
日本原子力研究開発機構

ようやく到着。

時刻は15時20分くらい。
閉館は16時30分なので、1時間はどうにか見れる。

なんで盛岡の博物館と同じ失敗をしてるのか、これがわからない。
とはいえもう仕方がないので、急いで見よう。

まず出迎えてくれたのは「原子力船むつ」のプロペラ。

そう、この「むつ科学技術館」は、原子力船むつに関する施設なのだ。

原子力船むつ」は日本初の原子力船であり、
現状、日本最後の原子力船でもある。

一体どういうことなのか。中に入ってみよう。

声を作る機械
まさかのルビンの壺
ナゼポンねぶた

なんだか最初のフロアは子どもが楽しめそうなあれこれが用意されている。

そして来るときに見た看板の謎キャラクターの名前が「ナゼポン」だという事実がここで判明した。

生まれた由来:
たくさんの人の“なぜなんだろう?”という思いが集まって生まれた。

「科学の子 頭を使え 手を使え」という標語から、むつ科学技術館に来て、科学技術の“不思議”に出会い、手や頭等を使って新しい発見をしてほしい、という強い願いが込められている。

ということらしい。
頭と手を使え。確かに大事なことだ。

頭と手を使いすぎた結果、ナゼポンは頭が手になったのだろう。


深海の風景

そして突然の深海コーナーである。

チューブワーム
スケーリーフット(茶色いやつ)

で、JAMSTECの紹介。

国立研究開発法人 海洋研究開発機構

Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology

JAMSTECだ。

海に関する色々なことを研究している機関、と思えばいいだろうか。
最近では気候変動についても盛んに研究しているが、やはり有名どころではしんかい6500

さっき変な貝(スケーリーフット)の画像があったと思うが、
ああいう深海生物に関する研究結果を発表したりもしている。

たくさん船があるらしい
深海ジオラマ

船の模型もある。

これは「海洋地球研究船 みらい」の1/50スケールの模型だ。

そしてこの模型があるのには理由がある。

みらい」は、「原子力船むつ」を再利用して作られているのだ。

 

ここでようやく原子力船むつの話をしよう。

1963年、観測船として建造が開始された「むつ」は、
多くの人の期待と歓迎の中、1969年に進水。

1974年には出力上昇試験が太平洋上で開始され、
8月28日に初めて臨界に達した。

しかしその直後の9月1日、
原子力船むつは試運転中に放射”線”漏れを起こしてしまう。
(これは原子炉内の核燃料が流出するような「放射漏れ」とは異なるのだが、当時はマスコミが大々的に「放射能漏れ」と報道した)

風評被害を恐れたむつ市の漁業関係者と市民は「むつ」の寄港を拒否。
「むつ」は洋上に漂泊せざるを得なくなった。

1978年にようやく長崎での修理が決まり、
2年ほどかけて安全性の総点検補修工事を行う。

放射””漏れと放射””漏れでは天と地の差がある。
この報道によってむつ市の漁師は「放射性物質が垂れ流されてホタテや魚がやられる!!」と思っただろうし、そりゃ反対に回るのはわかる。
マスコミ、やってくれたな……。

とはいえ、マスコミがやらかしたのは事実だが、そもそもなぜ放射線漏れが起きたのかだ。

失敗知識データベースにはこうある。

(1) 放射線漏れの原因
放射線漏れは、原子炉上部の遮蔽リングで起こった。主として高速中性子が遮蔽体の間隙を伝わって漏れ出る「ストリーミング」と呼ばれる現象によって、放射線漏れとなり、警報ブザーが鳴った。

当時我が国には、遮蔽設計の実例が少なく、経験が重要なこの分野における本来の遮蔽設計専門家がほとんど育っていなかった。設計にあたって、計算にのり難い複雑な形状の遮蔽材の遮蔽能力についての判断力が足りなかった。
また、この設計を米国ウエスチングハウス社に確認してもらい、「ストリーミング」の可能性を指摘されていたが、なんら反映されなかった。

(2) 放射線遮蔽効果の確認不足
船体と原子炉が分割発注されたことで、遮蔽設計への取り組みが甘く、総合的な遮蔽効果確認がおろそかになっていた可能性が考えられる。

うーん……これを見ると、むつ側にもなかなか問題がありそうだ。

(1)でウエスチングハウス社に確認を頼んだあと、問題発生の可能性を指摘されていたのになんら対処をしなかったのは、言い訳ができないだろう。
(2)の分割発注による遮蔽設計の取り組みの甘さに関しても、日本に遮蔽設計の専門家が育っていないのなら、やはり海外に頼るべきだったのかもしれない。

その後、修理を終えた「むつ」は、色々な試験航海や出力上昇試験を終えて1993年に使用済み燃料を取り出し、1995年には船体を真っ二つにして原子炉も撤去。役目を終えることとなる。

そしてこの真っ二つにした「むつ」を再利用して建造したのが「みらい」なのだ。
前部にはむつの面影を残しつつ、後部は大規模に改修し、でも船名にはうっすらと「むつ」の字が浮かぶとかなんとか。

ちなみに、そんなみらいの娯楽室では進撃の巨人10巻が行方不明になったりしている。

こんな部屋があれば、長い航海も楽しいかもしれない。


しかしこうしてむつの歴史を見たあとでは、もし問題が起きなければ未来はどうなっていたのかをちょっとだけ考えてしまう。

2022年、脱炭素が叫ばれる世の中で、
欧州では「原発はエコだよね!」という風潮が生まれている。

これにより、船舶の動力源に原子力を使うことについても注目が集まっているのだ。

大量の重油を消費するのが現在の船舶だ。
今では船舶の電動化なんてのも本気で話されるようになっては来たが、原子力はそれらとは桁違いのエネルギーを生む。
一度原発に入れたウラン燃料は4年使えるともどこかで聞いた。

果たして今後の世界はどういう方向に行くのだろうか。


……と、長くなってしまったので一旦ここで切ろう。
岡田健蔵のときみたいに7000字を越えるのはまずい。

次回へ続く!!


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