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クリスマスの過ごし方

 公用車を庁舎に戻し、私用車に乗り換えてから帰宅に着く。
「あー、やっぱネクタイは息苦しいや」
 珍しく千早くんまでスーツ姿なのは、先ほど解決した案件が某高級料亭であったからだ。
 庁舎に戻りながら、夕飯について二人で散々に話し合ったのだが、なかなか話がまとまらない。それというのも、今夜がクリスマスであるからだ。私は行きつけのレストランの中で予約できそうな店に行くべきだと主張しているが、千早くんは家でゆっくりしたいのだという。
「せっかくのフォーマルなんですから、ドレスコードのある店に行きましょう。知り合いの店なら個室を用意して貰えますよ」
「何が悲しくてクリスマスに男二人で個室ディナーしなきゃならねぇんだよ。俺はもっとこう家で劇場版ドラえもん観ながら缶チューハイ飲んでほろ酔いとかがしたいんだよ。ケンタッキーでいいんだって。おしゃれなディナーなんてしゃらくさい」
「クリスマスにケンタッキーを予約なしに購入しようだなんて、無謀です。駅前の長蛇の列を見たでしょう。何時間並ぶか分かりませんよ」
「いいよ。俺、ここで携帯ゲームしてるから」
「お断りします。私の空腹もすでに限界です」
 新都のクリスマスイルミネーションを眺めながら、話がまるで前進しない。おまけに、この渋滞でさっきからまるで進んでいない。どこかで事故でもあったのか、窓の外に行き交う仲睦まじいカップルたちを眺めているだけのこの時間が苛立たしい。

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