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嗣人
2021年4月15日 22:37
木山さんは屋敷町の外れ、千曲坂の近くに住んでいた。 鬱蒼と茂った竹林の間にある小路を進むと、古い屋敷が見えてくる。竹林は暗く、笹が擦れる音がささやき声のように聞こえて気味が悪い。胸に抱いた風呂敷の中身を隠すように、私は身をかがめて小走りに駆けた。 塀で囲まれた古い日本屋敷、その物々しさに思わず腰が引けてしまう。表札には『木山』とあり、門の脇には家紋の入った提灯が吊るされている。丸に百足