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嗣人
2021年10月21日 00:29
私の元へ一枚の葉書が届いたのは、年が変わって久しい一月末日のことだった。 文面には新年の挨拶と共に、去年の暮から入院していたという旨の内容が毛筆で記されていた。葉書の宛名には妻の名があり、差出人には『木山』とだけある。 身内や親戚、知り合いに木山という苗字の者は思い当たらない。 文面を読む限り、まだ妻が鬼籍に入ったことを知らないようだった。 妻が亡くなったのは昨年の夏のことだ。春に体を