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嗣人
2020年12月14日 22:10
茹だるような暑い夏の日だった。 五条旧街道もあまりの暑さに陽炎が揺らめいている。最近は舗装されている道も多く見かけるようになったが、まだまだ少ない。この街道のように凹凸の激しい地面ばかりだ。 風鈴の音色が耳に煩い。 ハンカチで汗を拭いながら、鞄の紐を肩にかけ直す。 街道に面した一軒の民家、表札には『福部』とある。玄関の戸を開け、中へ声をかける。「木山です。お約束のものをお持ちしました」