西XX駅下車

昼下がり、列車は駅に到着し、私は降りた。降りた乗客は、私一人。
駅前には不格好な街路樹が一本と、男の胸像、タクシーのいないタクシープールがあった。

「ここに列車が停車することは歴史の必然ではなく、彼の努力の賜物だ。」とのこと。その彼の胸像は、鳩の糞にまみれていた。
歴史の必然が無い場所に、糞まみれの銅像男のせい、望まれることなく生を受けたこの駅の周囲には、歴史の必然として空地が広がる。
その一画に、どの空き地にでも載せられる形に、安価な素材の寄せ集めで、壊す前提で建てられたような建物はあり、看板を見る限り軽食店を名乗っていた。
私は、昼食をとる必要を感じていたので、この軽食店に入る必然が生まれた。店構えを見れば、料理を注文する気にはならないが、トーストとコーヒーなら料理とは言わないだろう。

この町が私の想像を上回ったことは、トーストとコーヒーだけでも私を失望させるのに充分だったことだった。

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