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閑話休題 雇われ院長はあり?なし?その2

雇われ院長になるにあたって、どういう点を注意したらいいのか?というか、どういう契約書を作るべきなのか?という点について書きたいと思います。

まず一番のメリットとかいた赤字でも給料が出るという点ですが、デメリットとして全額が自分のものにならないという点を挙げました。

ここについてはのちに将来不満がでて、経営者とトラブルになる可能性があることは間違い無いので、あらかじめ決めておく方がいいと考えます。

ただし同じクリニックに複数のDrが在籍する場合(訪問診療等)の場合は、交渉はさらに難しくなると思われます。

今回は普通のクリニックの一人Drで診療をする際の雇われ院長になる際の交渉になります。

あと、自分の将来をどのように描くのかにもよります。

もし、どんなに忙しく、稼いでも提示された金額がちゃんともらえるならそれでOK!という判断であれば、交渉は不要です。

ただし、赤字が続けば当然ですが給与減額のリスクはあります。

通常分院の院長は理事になりますので、法人に大きな赤字を作っていて自分の給料は絶対に減額は認めない!というのは通用しません。

なので、提示された金額が非常に満足でき、忙しくなってもこの給料でOKかつ、経営が悪化すれば減らされるのは仕方がないという事であれば交渉は不要です。

いやいや、増えないのはいいけど、減らされるのは嫌だ!となるとあらかじめ交渉は必要かもしれません。

あと、自分が将来、雇われ院長として長くいるつもりなら、やはり最初に交渉をした方がいいと思いますが、2-3年で辞めるつもりなら交渉はせずにある程度満足できる金額を受けれた方がメリットが大きいと思います。

長くやるつもりなら、次のような考え方をした方がいいと僕は考えています。

赤字の時は少ないのは仕方がないけど、黒字になったらある程度はしっかりともらいたいという人の場合、インセンティブ制度をあらかじめ提案しておくという方法です。

単純に自分が開業する際に得られるメリットと同じです。

ただし、募集時の年収は多分、経営者が今後得られる利益等を考えて出した最大限に近い数字だと思います。

というのも最近は在宅関連であれば1800万円〜が多い中で、1200万円〜では正直見劣りしてしまうからです。

1800万円を丸々受け入れた上で、インセンティブといっても、なかなか交渉は進まないと思います。

インセンティブがある=利益が出ているということですが、利益から赤字の時に支払った雇われ院長分の給料を回収し(それも税金を取られた後の金額です)、プラス経営者の取り分が生まれるわけです。

それをみすみす逃すことはしてくれません。

募集によってはさらにインセンティブもつけますというところもありますが、あまり多くはないと思います。

つまり、募集時の年収に雇われ院長が勝手に「インセンティブをつけろ!」といっても経営者側にはあまりメリットはないとも言えます。

ではどうしたら経営者側にもメリットがあり、かつ雇われ院長側にもメリットのある提案ができるのか?

それは募集時の年収を下げる代わりに、将来売り上げが大きく上がった時のインセンティブを大きくするという方法です。

1800万円で求人がでていて、それを年収600万円でいいとした場合、経営者側は1200万円浮きます。

つまり将来の黒字から回収する金額は減りますし、何と言っても経営者側のメリットは、雇われ院長の経営能力が未知の状態で、1800万円というもしかしたらそのまま全部赤字垂れ流しの可能性を回避できる可能性があるということです。

税金・社会保険料等は無視しますが、仮にインセンティブを利益の50%を支払うとした場合、年収が1200万円になるのに必要な利益は1200万円です。

基本給の600万円に50%のインセンティブで600万円なら法人利益は1200万円/年です。

この時に経営者に入る利益は600万円。

2年目に1200万円の利益が出れば、前年度に雇われ院長に支払った給料分は回収できます。

1800万円払っていた場合、600万円の基本給+1200万円の利益が出てもトントンで前年度分の院長分の回収はできていません。

つまり、将来大きく儲ける自信があるなら、赤字の時は安くていいから、利益がでたらインセンティブを大きくしてほしいという交渉は可能だと思います。

実際、僕は諸事情があり2年後にこのように交渉しました。

最初にしなかったのは、長くやるつもりがなかったからで、2年後に交渉したのは、最初の条件の変更を打診されたからです。

こちらに不利な条件変更を受け入れる代わりに、給与の条件はアップするということにしました。

当初は基本給をそこそこの上、残業を認めかつ、売上の一部を診療報酬手当で渡すという契約を示されましたが、2年程度でやめる予定だったので、良しとしましたが、それではいつまでたっても大きくは稼げません。

クリニックは限界利益率の高い商売です。

僕が勤務したところでは当初大体250万円までは利益は出ないけど(僕の基本給を含めて)、250万円を超えた分については、85-90%が利益になるのがクリニックです(人を増やしたりしなければ)。

仮に初年度の月平均売上が350万円であった場合、売上の8%を診療手当としして支払うにしても28万円でしかありません。

しかし、インセンティブを利益の40%とした場合、利益100万円増えると40万円増えます。

仮に450万円になった場合、単純計算では売り上げの8%をもらっても38万円ですが、利益の40%にすると70万円ちょっとです。

まあ、こんな単純になるわけではないのですが、それでも大幅に違います。

ただ当然ですが、経営者側はこの仕組みを知っているからこそ、売上の一部を報酬として渡すわけです。

その辺りを理解した上で対応・交渉することが必要であろうと思います。

当初の求人通りの年収1800万円+インセンティブとなると経営者は当分利益は出ない状態になる可能性もあります。

ただ、もともと利益が非常に出ているクリニックであれば話は別です。

自分が入るクリニックの状況を理解しないとそもそもどういう契約が経営者にとってメリットがあるかを判断できません。

そして相手が飲めるであろう契約内容もわかりません。

自分一人で飛び込むよりは誰か客観的に情報を得られる人を介在した方がメリットは大きいと僕は考えています。

知り合いや先輩で経営状況をちゃんと教えてくれるDrなら仲介は不要だとは思います。

経営者にとって一番まずい状態は、医者の給料を払うと赤字が続く状態です。

あとは辞められること。

それを回避できれば、クリニックは継続できます。

看護師と医療事務2人ずつの人件費は医者一人にも及びません。

つまり、医者の給料が大きいのです。

その辺りを勘案して契約書は検討する必要があります。

ただ実は給料はまだ交渉は簡単な部類に入るかもしれません。

次のその3ではもっと重要な契約について説明します。

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