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めっちゃディープなツバメな日


ツバメが南から渡ってきて子育て真っ最中です。
子育て中のツバメとヒナの撮影をしているのですが、その中の一つの巣での一日の出来事です。

トラックに誘拐される!!

そろそろ巣立ちを迎えたツバメの巣。巣立ちは明日の早朝だろうと早起きをしたもののあいにくの雨。それも結構強い雨降りだ。
雨が止むまで待とうと30分ほど二度寝してしまった!
起きると雨はほとんど上がりかけている。
「ヤバい!」
飛び起きて巣に向かったのが5時30分。
現場に着いたら巣の中には4羽しかいない・・・6羽のヒナだったから2羽がもう巣立ってしまったようだ。
辺りを見回すと巣立ちヒナが電線に止まっている。
「きっと雨の中巣立ったんだね」
カメラをセットして巣の中のヒナたちを撮影していたら巣がある建物のオーナー(ツバメの大家さん)がやって来た。
「おはようございます! 立ち会えませんでしたが、ちょうど巣立ったようです」とヒナが止まっている電線を指さした。
「そうか、巣立ちましたか」
大家さんは朝の日課としている糞受けの段ボールを変えたりホウキで糞の掃除をはじめた。掃除道具をしまってある倉庫のドアを開けたとたん、びっくりしたのか一羽が巣から飛び出した。
「あっ!飛んだ!」
そのまま道路に飛び出てなんと信号待ちのトラックの屋根に止まってしまったのだ!

あろうことかトラックの屋根に止まってしまったのだ


「このままじゃ、トラックに誘拐されて親から餌をもらえなくなる!!」
三脚からカメラを外して三脚をもってトラックに向かって走った・・・
トラックの屋根から飛ばそうと思ったからだ。
でも、もう少しのところで信号が変わりトラックが走り出してしまった。
「大変だ!」大家さんも声を上げている
でも、車が少し走ったところでヒナが飛んでくれた。
巣に向かってパタパタと今にも落ちそうに飛んで行く。
ようやく巣まで戻ってきたものの巣のそばで失速!
手前のドアの上に止まった。
しばらく休んで巣の壁にへばりつき、ようやく巣に戻れました。良かった良かった!

壁にへばりついた巣立ちヒナ


写真を見ると4羽うち一羽だけ育ちが遅くあと1~2日はかかるだと思うヒナが混じっています。
この後、この一番のおちびさんに災難が降りかかってくるなんて誰も想像していませんでした。

あれ?6羽に戻ってる


いったん仕事に戻り数時間後に見に行ったら巣立ったヒナが戻ってきて6羽になっていた。ヒナはいったん飛び出しても、また巣に戻ってくることが多いです。
様子を見ていたかったのですが、仕事でまた戻らなければいけなくなって現場を離れました。世の中うまくいかないもんです。

また4羽になった

仕事を片付けツバメたちを見に行くと今度は4羽になっていた。残念ながらまた2羽が飛び立つシーンを逃してしまったようです。
トラックの屋根に止まったヒナが夕方にもう一度飛び立つかもしれないので、粘る事にしました。
1時間経ち2時間経っても全然動きがありません。巣の中で目をつぶってウトウトしています。
これは今日は飛ばないかもしれない…

そうこうするうちに大家さんがやって来た。
「まだ撮ってるの?大変だね」
あれこれ雑談をしていると急に空が騒がしくなった。
ツピー!ツピー!!
ツバメの警戒音が響き渡っている。ムクドリも混じっている。
「猛禽が2羽飛んでますね。あっ、チョウゲンボウがヒナをつかんでいる。大きいからどうやらムクドリのヒナっぽいですね」

チョウゲンボウのつがいが!

ツバメが激しくモビングをして追い払おうとしているけど、しつこく上空を旋回してしている。2羽飛んでいてつがいのようだ。そのうちの一羽がヒナをつかんでいた。
今撮影している場所には5つの巣があってチョウゲンボウは虎視眈々と狙っていたのかもしれません。それとも、近場でムクドリのヒナをさらったのをツバメに見つかり追いかけられたのかもしれない。

上空でモビングをするツバメ


激しくチョウゲンボウにアタックする親ツバメ

大家さんは
「大変だ、うちのツバメが襲われてしまう!なんとかしなくちゃ!」
そう言うと、ヒナが生まれると毎年つけているカラスよけをつけはじめてしまった。

カラスよけをつけはじめてしまった

「今つけたらヒナたちがびっくりして飛んじゃいます。今飛んだらチョウゲンに獲られます。ここにいればチョウゲンボウは襲ってきません」
そう言っても大家さんはパニックになっていて作業をやめません。
ツバメの大家さんになってだいぶ長く、カラスよけをつける時期とか良く理解しているのにヒナを守りたい必死さが伝わって来ました。
すぐに2羽が飛び出してしまいました。そしてもう一羽。
ヒナが飛び立つ瞬間を狙っていましたが、それどころじゃありません。
飛び出した3羽はもう巣立っても良いくらい大きいのでなんとかやって行けそうです。
そして最後の一番小さいヒナが飛んでしまった・・・
ふらふらと道路に飛び出して向かいの植木の中に落下してしまいました。
それを見たチョウゲンボウは様子をうかがいに向かいのビルの上に降りたちます。

向かいのビルの上に降りたチョウゲンボウにモビングする親ツバメ

周辺のツバメが10羽くらい集まり追い払おうとするので上空はツバメの警戒音だらけになっています。
チョウゲンボウはボケッとしたとぼけ顔で飛ぶ様子は全くない。
業を煮やした大家さんは鍋を持ち出し激しくたたき出した!
音にびっくりしたチョウゲンボウがいったんは飛んだけどすぐに戻ってくる。

ざわつく商店街

通行人も何事かとビルの上を見上げる

また鍋をたたく・・・チョウゲンが飛ぶ・・・を2回繰り返しようやく諦めたのかどこかへ飛んで行った。

空が落ち着いたのでちびのヒナが落ちた植え込みに行ってみるとヒナが下の方で小さくなっている。

大家さんに
「いま巣に戻しても飛んでしまうでしょうから、小さめの段ボール箱に入れて暗くしてヒナを落ち着かせましょう。付けたカラスよけを外して暗くなったらそっと巣に戻せば落ち着くはずです。カラスよけを親ツバメは見ていませんから外さないと怖がって餌をあげないかもしれません。」
そう言ってヒナを預けました。
「親は餌を運んで来てくれますかね?」
「大丈夫、親ツバメを信じましょう」
こういうときには野生動物救護ボランティアをして勉強した知識が役に立ちます。

それにしてもドラマのようなイベントが多すぎてディープでした。
30年以上ツバメを観察していますが一番ハードな一日でした。

そして翌朝


カラスよけが外されてヒナがいた!

早朝から仕事のため少ししか見ることが出来なかったのですが、ちゃんとヒナは巣の中にいました。
帰りに見てみたらヒナはいませんでした。
ちゃんと巣立ったと信じることにしました。
巣立ったツバメに幸あらんことを!来年も元気で戻って来てね。





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