タイトルで損してる『無職転生』が最高に面白い

『お兄ちゃんはおしまい!』という作品が面白かったので、同じ制作会社の作品を見ようと本作を見始めたところ、もう止まらないくらい面白く、私もパートナーも仕事があるのに3日間、夜更かしして、一気見してしまいました。

お勧め度 ★5(1~5)《超おすすめ》

滅茶苦茶面白い。ここ最近見た作品の中で★5だった作品は映画『閃光のハサウェイ』『サイバーパンクエッジランナーズ』くらいでした。
見た直後は、上記の作品を超えるんじゃないかと思うくらい面白いかったです。
よくある異世界物とタカをくくってい見ていると、画面に映るあらゆるものにぶっ飛びます。作画、背景、キャラの表情、音楽、効果音、求心力のあるストーリー。語りだしたらキリがないです。
ただ一つだけ文句を言うとすれば・・・・

スタッフ

監督:岡本学
作画監督:杉山和隆、高橋瑞紀
美術監督:三宅昌和
放送期間:2021年1月~12月(分割2クール)
アニメーション制作:スタジオバインド
原作者:理不尽な孫の手
原作連載期間:2012年11月~2015年4月
書籍:小説家になろう、原作小説はMFブックス(KADOKAWA)

あらすじ

日本に住む無職の中年男性が家から追い出されてしまい、路頭に迷っているところ、トラックにひかれてしまう。
目が覚めると、剣と魔法の異世界に転生していた。
前世ニートだった主人公は、今度こそ本気を出すと誓う。

タイトルが…

この作品が好きでタイトルも気に入っている方には申し訳ないです。
言葉を選ばずに申しますと、この作品、、、タイトルが面白くなさそうなんです…。

実際、私はこの作品をあらゆるSNS、サブスクでお勧めされていましたが、全く食指が伸びず、たまたま『おにまい』つながりで本作を見始めました。
実際、見てみるとめちゃハマり、アニメは2周して、原作もアニメ1期のところまで読み進めるほど(続きはアニメで見たく我慢してます…)となりました。

これまで、異世界モノといえば、「スマートフォン」(2017)だったり「スライム」(2018)だったり「慎重な奴」(2019)だったり(慎重勇者はマジお勧め)、いろいろなバリエーションがもう出尽くしてしまったところに「無職」ですもの。
よくあるMMORPGベースの世界に”転移”して、あえてジョブ(戦士や魔法使いなど)を選ばない的な話かと思うじゃないですが。

本当に"転生"して赤ん坊からやり直す壮大な大河ドラマとは思わなかったんです。『無職転生』と茶髪のショタがこっち見ているサムネだけではどうしても見る気起きませんでした…。
しかし、見終わった後はむしろ『無職転生~異世界行ったら本気出す』のほうがしっくりくるのがまた不思議です。

大河ドラマじゃん!

wikiにも書いてありますが、この作品は壮大な大河ドラマを描いており、1期では主人公の幼少期から青年期あたりまでを描いています。
その時点でまだ原作の半分にもいきません。本当に壮大な大河ドラマです(これアニメ完走できるんだろうか)。
この物語では、主人公の生まれから冒険までの過程が本当に丁寧に描かれます。
物語の冒頭では、田舎育ちで何者でもなかった主人公が、いろいろな経験を重ねることで徐々にその世界で存在感を増していく様は、まさにNHKの大河を見ているようです。

ストーリーを分割して語っていくよ

この物語、あまりに語ることが多すぎるので、アニメを勝手に5分割して語ります。

第一部 家族モノ

厳密には違いますが、疑似家族モノっぽいです。
理由としては、主人公が転生者であること、第四話『緊急家族会議』で起こる予想外の展開などがあります。家族会議のシーンはコミカルに描かれており声を上げて笑ってしまいました。
しかし、登場人物たちにとってはかなり切実な問題になっており、最後はちゃんと大人な結論を出したシーンでは、繊細な人間ドラマを感じました。詳しくは省きますが、この作品では、登場人物の性を描くことでキャラクター達がいわゆる「アニメ」っぽくない、肉感的かつ、立体的に描かれているなと思います。

第二部 師弟モノ

主人公が師匠から教わり、師匠も主人公から教わり、お互いに成長する。
そうして、その後、今度は主人公が師匠になり、弟子から教わることで成長や気づきを得る、そういったパートになります。
ここで登場するじゃじゃ馬なヒロインが本作(アニメ第一期)に大きく関わってくるとは、登場当時はつゆほども思いませんでした。
詳細は省きますが、このパートのとあるダンスシーンが非常に良かったです。原作から多少改変されており、それがまた本当によくできていて、思わず涙腺が緩んでしまいました。ナイス改変です!
主人公は、師匠から苦手(トラウマ)を払しょくしてもらい、主人公も弟子の苦手を払しょくする。この師匠と弟子のバトンタッチが非常に良かったです。

第三部 英雄(?)冒険譚

王道ファンタジーものって最高だよね!!そんなパートです。
ざっくりとした目的地を目指して、最初はぎこちない冒険者パーティーが少しずつ絆を深めていく。本当に最高です。
私が見た異世界物の中でこんなザ・王道ファンタジーのような作品は実は見たことは無かったかもしれないです。非常に面白かったです。
このあたりが私としてはずっと見ていたくなるようなワクワク感があり、少年のころに夢中になって読んだファンタジー小説を思い出しました。(大男と少年と少女はまさに『デルトラクエスト』)
このパートは、特に背景美術や小物などの描き込みがえげつなく、主人公たちが訪れる地方ごとに、違う映画が撮れるんじゃないかと言うくらい、建物から食べ物から通貨から衣装から全く異なりました。通常の深夜アニメの10倍くらいの情報量です。もう情報量がありすぎてオーバードーズ(容量過剰)します。だのに作画がトップレベルでよくてストーリーも面白い、もう何だこれ!ジブリかよ!!

第四部 被災モノ

非常にきっついパートです。災害に巻き込まれた被災者の生活を描いたパートです。かなりシリアスで心にずしっと刺さるようなしんどいパートになっています。
ある日突然、当たり前の日常が失われる。実際、災害や戦争に巻き込まれた中世の人々もこのような流浪の民とならざるを得なかったのかと思いを馳せてしまいます。
第16話『親子げんか』は最近の作品で一番感動しました。たとえどんな境遇になっても家族と家族らしく過ごす、これがどんなに難しいことか…。

第五部 ジュブナイル(少年少女)モノ

少年少女の心の成長、体の成長、環境の変化などにより関係が変化していく、それにより大人に一歩近づく、そんなパートになっています。
ここは本作(アニメ第一期)で最も印象的な個所で、これまで述べてきた第一部~第四部までがないと成立しない内容となっているのもまたいいです。
まぁ、主人公は中身おっさんですが、ニートだったので、実質同い年ということで。
好きなジュブナイルモノは、映画なら『SUPER8』、小説なら『僕のメジャースプーン』、ドラマなら『ストレンジャーシングス S1』です。

女性まわりの描写について

私は非常に楽しめましたが、一緒に見ていたパートナー(性自認はバイセクシャル)は「今まで見てきた中でワーストに気持ち悪かった」とのことでした。
これは性自認がストレートの男性からするとちょっと驚きです。『この素晴らしい世界に祝福を』のカズマ(作中で「クズマ」と揶揄されるくらいの助兵衛)よりも気持ち悪いというのは心外でした。
確かに見返してみると第六話『ロアの休日』Aパートにて、コミカルなBGMもなく寝ている女性の胸を揉むシーンは、リアルな効果音も相まって「ガチ痴漢」感が強かったのは確かです。ですが、気持ち悪いとまで言われるとは…。
第一部の箇所でも書きましたが、この作品は正面から性を描くことで、キャラクターが立体的になるという利点はあるのですが、少々主人公のオイタがすぎるといった感じはあるかもしれません。
非常に面白かったので女性の知り合いや家族にも勧めたいと思っていたのですが、断念せざるをえませんでした。
'10年代のお茶目セクハラは'20年代ではもうガチ痴漢になってしまうということなのでしょうか。のび太の覗きや水戸黄門のお風呂シーンなどは茶の間から淘汰されました。
時代の変化とともに価値観が変わり、女性が生きやすくなるというのは非常に良いことなのですが、失われていく文化も同時にあるというのは悲しいことです。

総評

めっちゃくちゃ面白いのでぜひ男友達に勧めてみてください。
2023年の秋には二期が始まりますので、私も今から非常に楽しみです。

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