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ろうそくで灯す飯舘の輪

──飯舘村でものを作る楽しさと魅力を発信する。

東日本大震災で村全域が避難区域になるなど、原発被害で厳しい現実に見舞われた飯舘村。そこで復興の一助として「地域おこし協力隊」として移住しキャンドル制作を行う「工房マートル」をオープンさせた、東北芸術工科大学(以下芸工大) プロダクトデザイン学科卒・大槻美友さんに活動に至った理由から現在までを迫る。

工房マートル(大槻美友人さん) 
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Instagram https://www.instagram.com/atelier.myrtlee/


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──赴任先の北海道で出会ったキャンドル

元々、芸工大のプロダクトデザインを専攻していた大槻さんは、ものづくりに関心があり習ってきたことを軸に、ものを作る楽しさを伝えたいと考えていた。しかし最初についた仕事はものづくりと無縁で、大学でものを作る楽しさを知っていたからこそ、どうしても心残りが消えなかった。たまたま就職先の北海道の雑貨屋でキャンドル制作体験をした際に、ものづくりを自分の仕事としてやりたいという気持ちがさらに膨らみ、心の中で安らぎを求めていたこともあり、キャンドル作家として活動する決意につながった。

──飯舘村に移住し活動することになったきっかけと出会い

キャンドル作家を初めて一年目の2019年、福島市で開催されたイベントに、現在大槻さんの先輩に当たる、「地域おこし協力隊」の方がイベントに足を運んできた。その方とは初対面であったが、飯舘村は震災後に花農家が花づくりに力を入れている村だと教えてもらった。花を扱う大槻さんは興味を持ち、自身も「地域おこし協力隊」として作家活動を行うため飯舘に移住することになった。
「飯舘に来なければ地元の福島でやっていくつもりだった。そのきっかけがなければ飯舘の花、花農家さんを知ることがなかったし、もちろん今の工房(職場)も持つことはなかった」と話している。

「地域おこし協力隊」とは
人口減少や高齢化等の進行が著しい地域において、地域外の人材を積極的に受け入れ、地域活動を行ってもらい、その定住・定着を図ることで、意欲ある都市市民のニーズに答えながら、地域力の維持・強化を図っていくことを目的とした制度。


──「よそもの」に優しい村民の方に支えられて

一昨年の2020年から飯舘村で、キャンドル作家として活動を始めた大槻さん。花を使ったキャンドルを扱うからこそ花農家さんとの関わりやコミュニケーションが大切になってくる。最初の方は役場の方に花農家さんを紹介してもらい、移住に繋がる機会を得ることから村民との関わりが始まった。関わっていくうちに農家さんの方から「花が余ってるから使えないかな」と連絡が来たりと、よそものを受け入れてくれる村民の方々の優しさを実感すると話している。

──「プロダクトデザイン」と今の活動のつながり

大槻さんに、大学で学んでいたことが今の活動にどんなところで役に立っているかと尋ねてみた。「特に山形の四年間で学んできた全てが生きていく軸として成り立っている。」と話していた。同時に、専門的に学んだプロダクトデザインのスキルは、形をデザインする上でどんなもの作りにも適用するし、広報や書類等で必要なスキルだからこそとても助かっているとのことである。

今回の取材を通して、自分の得意分野を生かしながら飯舘を盛り上げていこうという強い気持ちや、地域住民と連携して絆を深めていこうとする大槻さんの行動力に関心を持った。同じ福島県出身の人間として私自身も地域のために何か行動できる人間になりたいと感じた。

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高田彩由佳
東北芸術工科大学 総合美術コース

                         

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