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『ロシデレ』の突っ込みポイント ~比較対象は声優?

『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』(著者:燦々SUN  イラスト:ももこ)に関して読んでいて、引っかかりのある突っ込みポイントが何度かあった。

ただ、そこはフィクションだけに気にするべきでないとは思ったが、読み進めるとまた新たな情報が出る度に更なる突っ込みとなっていた。

それは前々回に語った、舞台設定を名門学園にしていることが、悪さをしていると大きい思う。

ただ、それ以外の部分でも引っかかりはある。それは、少し前なら通用した設定であっても、現実を舞台にしているだけ比較してしまうと違和感になるところが多い。

例えば電話シーンで、こう書いたらどうなるだろうか。

 彼は電話をしながら、何気なく線を指で巻き付けていた。

これ今の若者だと何を言っているか分からないだろうが、昔の人間なら別に違和感はないだろう。実際、自身の経験だけでなく、こういったシーンは昔の作品にはよくあったからだ。

ただ、今は電話のほとんどは有線ではない。更に固定電話すら無くてもおかしくはないし、公衆電話も撤去される一方である。電話で線を指で巻き付けるシーンは今日ではほぼ無いのである。

ここまでは何しろ、ロシデレではそういった一昔前の設定を使っている所がある。これはこの作品に限ったことだけではないだろうが。

しかし、突っ込み所を語るというのは、作品のアラ探しもいえる。だが、校正的な観点でも違和感のある所を幾つかピックアップして説明していきたいと思う。

■アリサ・ミハイロヴナ・九条の謎

本ヒロインの名前は作中ではアリサ・ミハイロヴナ・九条と紹介されている。また、その姉はマリヤ・ミハイロヴナ・九条。

ロシア語のフルネームは名・父称・姓の三要素から構成される。この二人の名前を見ても、名・父称・姓であろう事が分かる。

一応、父称とは父親の名に基づく呼び名。ミハイロヴナだと、ミハイルの娘と意味している。だから、ヒロインの父親の名前はミハイルと分かる。

ただ、問題は姓、九条。完全に日本姓である。これはロシア人である父親の姓と考えていいのだろうか?
確かに養子とか、説明がつく理由があるにせよ。

また、作中で書かれていたのかも知れないが、公式SS「アーリャさん、配信はじめるってよ」ではヒロイン自身の口で九条アリサと自己紹介している。

後、この作品の原型となった短編での名前は次のようである。

牧アリサ。フルネームはアリサ・アレクサンドロヴナ・マキ。アーリャはその愛称で、彼女はクラスメートに自分のことをそう呼ぶよう言っていた。

時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん

九条という名字は謎であるが、これは現実の名前と比較することで解明することになる。

最近では声優外でも活躍を見せる木村昴であるが、彼の本名はスバル・サミュエル・バーチュ、木村昴は芸名であり、日本名でもある。そんな彼はドイツ人の父と日本人の母の間に生まれている。

この事から九条の名字は日本で暮らすため、日本名であり、母方の姓である事が推測できる。

同様に武田羅梨沙多胡という方もいるが、この方の本名はLarissa Takeda Tagoとブラジル名は一般的に「個人の名+母方の姓+父方の姓」だが、母方の姓を先頭に出して、日本風の名前にしたとある。

また、ロシデレのヒロインと近い感じの名前だと、ブリドカット セーラ 恵美(Sarah Emi Bridcutt)だろう。彼女の場合、姓名を日本に合わせて逆にしているようである。また、アナウンサーにはなるがハードキャッスル エリザベスも同様に姓名の並びで現在活躍されている。

確かにアリサ・ミハイロヴナ・九条という名前は中二病に響く名前である。それだけにライトノベルを読む層には適している。

また、九条という名字に関して調べてみると、ネット上の情報ではあるが全国で60人ほどしかいないとされる。

それもそうだろう、日本史でなく、歴史モノに詳しければ九条家は公家で、近代では公爵家である。小鳥遊レベルの希少名字であることは多少程度の知識からも不思議ではない。

希少名字という点でも中二病をくすぐる。ただ反面、フィクションより名前、アリサ・ミハイロヴナ・九条はやはり引っかかりを持ってしまう。

また、九条姓で有名なキャラクターといえば、『きんいろモザイク』に出てくる、九条カレンだろう。彼女の場合は日本人の父とイギリス人の母を持つハーフである。

彼女の場合は父親が日本人だけに姓が先、名前が後となっている。また、この作品の主要キャラの苗字を京都の通りから来ているので、希少名字から来る違和感というのは少ない気がする。

ともあれ、アニメキャラの比較なら違和感がなくとも、近年の多種多様な人が活躍する声優業界の名前と比較対象としてしまう、逆に違和感を生み出している。
特にライトノベルとアニメ、声優というのは密接である。だからこそ、今日にとっては、現実よりな名前では逆に違和感となっている。

いっそ、ロシア文学の『罪と罰』のように、キャラの役割に合わせて、何かをもじっていた方が違和感を感じなかったかも知れない。これもこれで極端なケースかもしれないが、それでも『罪と罰』でのネーミングは西尾維新らの様なセカイ系のネーミングといわれていたりする。

さて、次に語ることも声優に関連した事だが、ロシア語が分かる点である。これに関して、宣伝展開含めて致命傷なミスを犯している。

そうPVでの起用もしている、上坂すみれの話である。

■上坂すみれはロシア語が出来る

上坂すみれに関しては高校時代に旧ソ連時代の書記長演説や旧ソ連国歌に影響を受けて、ロシア語学科へ進学したとある。

そうでなくとも、上坂すみれという人物を知る人間には、ロシア語エピソードはよく知れた話である。あと、お酒に関しても…
ともあれ、ロシア語を理解しているだけにロシア語を語るキャラを演じる機会も多い。

このロシデレの主人公も幼少時代にロシア映画からロシア語を習得したとある。それはいい。

しかし、名門学園を舞台にしている以上、ロシア語で語るがいればヒロインがいれば、それを切っ掛けにロシア語を理解しようとする人物が出てくるの流れは不思議ではない。

現に上坂すみれは高校時代にロシア語に触れて、調べているのだから。

これがエジソンやナポレオンのような超人的な存在なら無理と思うのも仕方が無い、声優というまだ身近な存在のエピソードで達成しているのだから、ここも違和感でしかない。

そして、ロシア語を話せる上坂すみれをPV等で起用していることは、否応なしにその事を気づかせてしまっている。

ロシア語が誰も分からないから成立する設定も、名門学園だけでなくとも、上坂すみれの実績でも破綻している。まあ、上坂すみれの学歴自体も名門とはいえ。

あと、ロシア語を日頃から呟いていれば、何らかの切っ掛けで気づかれる可能性もあるだろうに、そこに気が付かないアーリャさんはツンデレというよりは、へっぽこの方が案外に合う。そもそも、へっぽこ属性というのは案外作中でも描かれていることだし。

ただ、アーリャさんは周りからも優等生として見られ、”孤高のお嬢様”と異名も持つ。ただ、この異名はよくよく考えるというか、イラストを見ていると違和感がある。

今度はそこを語って見たい。

■イラストが示す底辺高校ぶり(舞台:名門学園)

ロシデレの原作イラストからそうだが、オフィシャルの紹介漫画を見ても、みんな制服ラフに着こなしている。

いや、普通の学校ならこの着こなしでも気にならないんだけど、作中で名門とあり、ヒロインは”孤高のお嬢様”の異名を持ち、生徒会にも所属している。

ただ、こういう制服なのかも知れないが、名門学園ではやはりあり得ないだろう。着こなしは完全にギャルである。

ここに関してはロシデレは「かぐや様は告らせたい」を真似ているのでは前々回で自分は語っていたが、ラフな制服の着こなしからこの線はないような気がしてきた。

あの作品も名門学園だけに制服の着こなしはきっちりとしている。一部、例外はあるにせよ。
「かぐや様は告らせたい」を真似しいるとするなら、イラストに反映されているハズであった。それがないとするなら、この説の落ち度だと思う。

ただ、伝達という点ではボイスコミック版と漫画を比較すると誤字があったりとする。この事でも、うまくビジュアルのイメージが伝わってなかった可能性もある。

これに関しては、いささか強引な結びつけではあるとは思っている。それでも名門学園の着こなしではないというのは間違いない。ただ、底辺高校が舞台とするなら、話は別だが。

■最後に

いささか、野暮な突っ込みではあったと思うが、それでも現実が舞台でしている以上、比較対象を目をする機会が多いだけに違和感が出てくることも仕方が無い。

また、今度のVtuberデビューに関しても、冷静に考えると名門学園の学生が配信活動するというのも、昨今で校則にも抵触しそうな部分がありそうだ。香川は極端な例としても。

ここらは途中でも例に出した『きんいろモザイク』の様に、少しファンタジー要素を多めにしておけば良かったのかも知れない。
ただ、ラブコメだと読者との親近感が深いため、こういった現実とリンクして、違和感が多くなってしまうのだろうが。

しかし、2巻でこれらの点が修正というか、補正されている可能性もあるので、読んで調べてみるのも面白いとは思う。それはそれで読み方として正しいのかは怪しいが。


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