『ファイナルギア-重装戦姫-』をプレイして見えてきたモノ ~「中国製日系ゲーム」とは
以前より『アズールレーン』、『ドールズフロントライン』といったゲームタイトルを興味はあったが、自身のプレイ環境(時代遅れのタブレット)から見送ってきた。
そんな中で『ファイナルギア-重装戦姫-』(以下、ファイナルギア)は「美少女×クラフトメカRPG」ということで自分の琴線に触れる内容だけに、環境を整えてプレイを決意。
いや、自分な好きなモノの詰め合わせモノだけにやっぱり面白い。
さて、「中国製日系ゲーム」、「日式遊戯」など色々と言葉があるが、中国製でありながらほぼ日本テイストの作品が多くなっている。先に挙げたタイトルもそうである。
これの理由に関してはよく分かっていなかったが、下記の記事を読んで何となく理解した。
日本人が辞書片手に『Wizardry』にプレイした経験から『ドラゴンクエスト』を生み出したように、今の中国クリエーターの源流は一昔前の日本のゲームなんだと。
ここから先に少し踏み込んだ話をするには、昨今の事情から避けるべきだろうか。なので、「ファイナルギア」に関して語りながら、そういった点を見ていきたいと思う。
人気声優の起用
中国製のゲームであっても、日本で活躍する声優の起用がされている。
確かにかけ声程度のボイスであれば、言葉の壁は支障がないだろう。また、中国であっても日本のアニメが人気だから、日本語にも慣れているのだろう。
「エースコンバット」でも日本人は英語音声を好み、海外では日本語音声を好むと聞いたことがある。
ちなみに「ファイナルギア」の本家での声優名表記を見てみると、漢字自体は簡体字ではあるが、ひらがなはひらがなで表記されている。
『アズールレーン』では、ひらがなは漢字で当てられていることを考えると、日本語に合わせた方がクールと感じてのことだろうか。
後、本家でのタイトルは『重装戦姫 Final Gear』と漢字(簡体字ではあるが)の方が優先され、海外展開では逆となっている。
さて、そんな中でアプリの紹介ページもなぜか推されているのが、南央美氏である。
有名所では『機動戦艦ナデシコ』のホシノ・ルリ。『こどもちゃれんじ』のしまじろうの声などが有名だろう。
ただ、失礼な話ではあるが、近年のアプリゲームでプレイヤーの興味を引かせるような旬な人物ではない。当然、メインやレア度の高いキャラには旬な人達で固めている。
ただし、ホシノ・ルリに代表されるような世代には、南央美氏だけで十分なネームバリューがある。
つまりはそういうことなのだろう。中国でも南央美氏を起用する価値があったのだ。
「中国製日系ゲーム」の源流となったであろう時代においては、『機動戦艦ナデシコ』を含め、ゲームでも有名所を担当されている。
また白髪、銀髪は中国において人気キャラとされる部分がある。
本作のヒロインもイブリンは人気投票でも1位、また、アナザーキャラもほぼ同数での票を集め、2位となっている。
そう、ホシノ・ルリも銀髪のキャラである。それだけに南央美さんの起用は中国国内としての「中国製日系ゲーム」にとっては重要な要素なのかも知れない。また、「美少女×クラフトメカRPG」という売りから『機動戦艦ナデシコ』を意識させる要素かもしれない。
この後でも触れるが、VTuberに置いても白髪、銀髪だけでBilibiliに置いては需要がある。そのため、神楽めあ氏の中国人気の要因の一つと言われている。当然、活躍ぶりも必要ではあるが。
BilibiliとVTuber
こちらの配信は企業案件である。
犬山たまき氏というと動画共有サイト、Bilibiliでも多くのフォロワーを持つだけではなく、Bilibiliにも強いパイプを持っている。そして、『雀魂 -じゃんたま-』以前から『アズールレーン』関連でYostarとは付き合いがあったとも聞く。
そんな、「ファイナルギア」はBilibiliによって運営されている。
「ファイナルギア」に関してはユーザー間だけでも十分に拡散力のある魅力、ワードが満載だ。だが、正式にその魅力を発信するには何かしらな場が必要である。
正式リリース直前には生放送が行われている。ただ、動画というプラットホームを持つBilibiliではあるが、日本国内ではそのプラットホームのシェアは全くない。
そして、それとは別に犬山たまき氏にも企業案件という正式な「ファイナルギア」の発信を行っている。
これは日本国内だけではなく、両国に強い繋がりを持つ、日本と中国の橋渡しとなる犬山たまき氏のような宣伝塔を重視してのことではないだろうか。
ここは少し私個人の考えすぎもあるだろう。そこに対する状況証拠も少ない。
ただ、公式でもきちんとした動画配信もしている中で、プラスVTuberにも宣伝して貰うのは今といえば今だが、こちらもメリットは弱い気がする。
確かにBilibiliとの繋がりがあるとはいっても、それは犬山たまき氏だけが持つ要素でもない。ただ、丁寧さによる犬山たまき氏の配信スタイルはマーケティング的には強みもある。
後、リリース前には樋口楓氏もPRをしている。
ただ、こちらは「PR」とあちらは「企業案件」とほぼ意味は同じだが、言葉が違っているのは興味深いところ。いささか、深く考えすぎだろうか。
この点は今後も動向を見て、答えを出すべき要素かもしれない。ただ、「ファイナルギア」同様、国をまたぐ存在で宣伝して貰う意味は大きいのは確かであろう。
---追記(2020/10/30)---
私が『アズールレーン』をプレイしていないため、記事を作成していた時に気が付いていなかったのだが、『アズールレーン』のコラボでバーチャル YouTuber 「キズナアイ」や『ホロライブ』ともやっていた。これは日本国内だけでのイベントではなかったようだ。
当然、他のゲームともコラボはしている。また、中国版ではBilibili自体ともコラボをしている。これは「ファイナルギア」でも同じだが、日本国内では『アズールレーン』の例からも日本国内では見る事は無いのだろうか。
さて、『アズールレーン』のコラボから考えても、BilibiliとVTuber、しいては中国とVTuberとはやはり重く見ているのは感じ取れる。
ただ、ここに関しては最近、いささか関係がこじれた節もあり、どうなるか含めて今後も注視するべき点であろう。
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互いに「中国製日系ゲーム」と、どう付き合うか
最後に少し深みに踏み込んでいこう。「中国製日系ゲーム」は日本らしくあればあるほど、日本人の起用が多くなっている印象がある。
それは声優だけでなく、音楽では『アズールレーン』でも一部、担当されたShade氏の名前も「ファイナルギア」には出てくる。主題歌自体も水樹奈々氏である。
---追記(2020/10/30)---
ここは完全に抜けていたのだが、キャラクターに関しても、じじ氏、駒都えーじ氏などが参加はTwitter上を始め、明言されている。
また、木shiyo氏などの他のゲームでも活動されている、中国のイラストレーターも起用されている。
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製造業でも中国が逆転的に日本を下請けとしている部分に似ている構造である。ただ、下請けといってもある側面では、それは質を維持するため措置とも言える。
しかし、これは今のだけの措置と言えるかもしれないが。今後は分からない。
実際、『ドールズフロントライン』のアニメに関して、コミカルなテイストな作品ではあるが、アニメーション制作は中国のアニメ会社、大火鳥アニメーションで作られている。
ここは単純に良い悪いの話ではないが、10年も前の常識で考えていると何も成り立たないほど、中国と日本は様々な部分で変化している。関係もその一つである。
それもあって製造業、アニメーションといえば、「メイドインジャパン」という図式は絶対ではなくなっている。では、逆に中国が塗り替えしたともいうには、まだ課題が残っている状態だ。
その一つが「中国製日系ゲーム」。いくらビジネス的に成功しても、日本のテイストから脱却できてていないでは、ある意味では問題の一つではないだろうか。
ただ、これも長く続けばクールジャパンも実は中国製という自体になるかもしれないが。そうなると、クールチャイナだろうか。
現に日本製のクールジャパンにしても、茶道、書道といった純和風のテイストも損なわれている。完全に現行カルチャーでしかない。
そう考えると「中国製日系ゲーム」だから、中国らしさがないと否定しても始まらないのかもしれない。
『Ghost of Tsushima』がいい例だろう。
後は今回は触れなかったが『原神』も注目していく必要はあるかも知れない。サービス開始からの負の側面は一旦抜きにしても。
ただ、こちらは「中国製日系ゲーム」というよりは完全に『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』である。確かにこれも日本ではあるが、これ今の流行に乗ったとみるべきだろう。
後、余談的な話だが、『アズールレーン』でも当初は日本の課金文化の違いで戸惑ったとも聞く。
ここは「ファイナルギア」のシステム周りでもそういった相違が見て取れる。レイドボスの難易度がノーマルでも異常に高いが、向こうではエンドコンテンツと位置づけられているかららしい。
だから、これは不具合、バグではなく、公式も「難易度の見直し、調整」と発表している。弱体化自体は容易であっても、ゲームバランスに影響する部分であるため、すぐさま対応できてないのだろう。
ともあれ、「中国製日系ゲーム」は認知はされてきているが、この先はどうなるか、どうあるべきかはそう簡単に分かる話ではない。
それに本国中国だけの話ではなく、そもそもがグロバール展開である。そうなると余計に難しい話である。そして、日本もこれにただ乗るだけでもいけない。
現状では、この件で明確な答えを出せる訳でもなく、まだ道半ばだとは思う。少し落ちはないが、今後を見ていく中で答えを考えていきたいといった感じで、今回はここまでとしたい。