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銀河の一生(の一部)のおはなし

別の記事で、大きな銀河は周囲の小さな銀河などを食べて成長したと書きました。もう少し一般的に、銀河は成長もするし老化もするし、共食いもすれば捕食もするという、妙に生き物的な存在です。学術用語としても、銀河合体は銀河のカンニバリズム(人食い)と物騒な名前で呼ばれていたりします。

私達の銀河系もアンドロメダ銀河と数十億年後には合体してしまいます。 アンドロメダと銀河系の衝突合体はかなり精密に計算できるようになっていて、研究機関から公式の動画が公開されています。


ちょっと残念なお知らせは、ほぼ規模の同じ銀河系とアンドロメダ銀河が合体しても、夜空の星の数は増えますがほかの惑星系が近所にできる確率はほとんどないということです。これは宇宙物理系の大学院の講義で教える内容で、銀河は衝突しても星同士は衝突しないという大切な事実を示しています。星と星の間が空きすぎていて、銀河合体のような大イベントのときですら、ほかの星系と近づくことがないのです。いい知らせとしては、たとえばブラックホールが太陽系のすぐ近所を通過して人類の危機、という確率もほぼ0です。

一方、銀河同士の衝突で強い紫外線を出す重たい星が一度にできて、大多数は100万年ほどで超新星爆発を起こします。この影響のほうがずっと深刻で、運が悪いと地球の生命は超新星爆発からの強いガンマ線で絶滅します。こればかりは運がいいことを祈るしかありません。その後、超新星爆発で大量に作られた塵(ダスト)が夜空を隠し、一時的に赤外線でしか天体が見えなくなります。その後塵が晴れると、夜空はどう見えるでしょうか?

ほとんど同じ規模の銀河が衝突すると、物理用語でカオスと呼ばれる状態を経由して、だいたいは丸い楕円銀河に落ち着きます。上の動画でも、最後はなんとなく丸い銀河になっていることが分かります。銀河が丸くなってしまうと、夜空の見え方はだいぶ変わります。銀河系は渦巻きを持つ円盤銀河なので、その円盤に住む私達からは細い天の川として見えるわけです。ところが銀河が楕円銀河になってしまうと、天の川ではなく銀河の中心が明るく見え、そこから離れるとぼんやりと星が減っていく夜空になります。

銀河が小さい銀河を飲み込んだり、合体したりして大きくなっていくというモデルは、半世紀くらい前はさほど好まれていなかったのです。私が研究業界に入って数年経った頃、1990年代の終わりにようやく合体や共食いが重要であるということで最終決着しました。

星にも長いなりに寿命があり、銀河の星がすべて死に絶えると銀河も暗くなって見えなくなります。これを銀河の最期と考えることができます。

(2022年9月1日)

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