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ある女の話。

友人たちが続々と家庭を築いている。

一緒に地元のショッピングモールで遊んでお昼にケンタッキーを食べてた赤い眼鏡フレームのあの子も、
少し仲が拗れて夕方の教室で一緒に号泣した黒目がちな茶道のお点前が美しいあの子も、
音楽室の前の階段の踊り場で暮れた光に照らされながら緑色のベースを弾いてたあの子も、

気付けば皆結婚した。

ポツンと感じるこの疎外感って何だろう。結婚の報告を聞くたびに、季節に置いて行かれているような気がするのだ。
勿論気が知れた友人たちなので、帰省のたびに連絡をくれたり、ごはん行こうよと誘ってくれる。有難いことに。

とはいえ周りがこうだと焦りが出てくる。

会って喋って話を聞いて話題が一段落して次の投げられる言葉はこれだ。

「何かいい事(出会い)あった?」

寝て起きて職場へ行く日々なのでそう出会いなんぞない。駅で落としたハンカチが拾われる事も本屋で手が触れ合う事もない。
恋愛ごとは常にソーシャルディスタンスである。密どころかどうやって距離縮めるの?

頻度や度合いはさておき、何か気軽に連絡が取れるような異性がほしい。
てことで思い立ったが吉日、マッチングアプリに登録してみた。
おすすめで出てきたのか、わたしがいいねしたのかははっきり思い出せないがひとりの年下男性と早々とマッチングした。

顔はイケメンだと思ったし、恋愛の出会いではなく友達がほしいとプロフィールに書いてあったのは覚えてる。
たしか独身(未婚)の記載もあったと記憶。海外旅行に行ったであろう写真もプロフィールにあり、多分住む世界が少し違うなとも思った。これって価値観の違いとも言えるのかな。

アプリ内のメッセージ機能で1日やり取りを交わし、向こうからスマートなLINEにしませんかとの提案にのりスムーズにLINEでやり取りをするも慣れてるなあと思った。程々に遊んでる感じか、と。

久々と言っても過言ではない異性とのやり取り、気持ち的には少し浮ついたが、あくまでもネットでの出会いではあるので慢心になってはいけないと自分を戒めた。熱をいれ始めたら目覚めたときに火傷を負うと。いつまでも熱を持ち傷が残るようなことはしたくない。そう思いつつも交わされるトークは少しむず痒くて楽しかった。

そうこうしている間にやり取りをし始めて3日目、一度会いませんか?のライン。早くない?そんなものなの?どうかな、大丈夫かなと色々出る不安は一息で飲み込んで返事はイエス。かくして第一回目の顔合わせが決まった。15時から予定があるからその前に。じゃあそっちの都合のいい店でいいよ。決戦は日曜の12時半に某有名コーヒーチェーン店。どうなる?臓器でも売られるのかな?

と、思っていたところ木曜の夜。急に土曜仕事休みになったから会わない?の連絡。てことは日曜が土曜に変更か~~まあ日曜はゆっくり休みたいしと思いと了承すると、日曜も会おうねとの返し。何で?年上の女に2日連続で会っても楽しい事ないと思うけど??たかられんのか?金の巻き上げか?と思うも、少しの嬉しさと照れを交えつつ、よろしくお願いしますと返事。前哨戦は土曜14時半別店舗の某有名コーヒーチェーン店。どうなる?契約書にサインでも求められるのかな?

いつも通り、指輪もピアスもフル装備してきれいめに見える色みの落ち着いたパンツスタイルで時間に遅れつつも待ち合わせ。

現れた今のいままでLINEでやり取りしていた男性と一言二言言葉を交わし、それぞれ飲み物を買い席につく。道が思ったより混んでて遅れてごめんねなどと言葉を交わすも店内は騒ついててうまく聞き取れない。ん?なんて?と聞き返すと次に向こうから飛び出た言葉は、

「おれ、既婚者なんだよね。奥さんいるの」

道理で。とここで納得。何ならLINEに移ったあと自撮り送られてきたけど後ろのカーテンが花柄なのがずっと気になっていたのだ。女の影には一応敏感ではある。

とはいえシングルと思い込んでいた・と思いたかったのも事実で「は?そうなん?!」とまあまあデカいリアクションをしてしまった。まあそうでしょ。

話を聞けば結婚して地元を離れこっちに来た。友達がいないから友達作ったら?とマッチングアプリを始めた。奥さんも知っている。男女の出会いではなく友達がほしいなどなど。大丈夫か?修羅場に巻きこまれるんじゃないだろうな?刺されるのか?

話は正直盛り上がったと思う。メイクの話や服、お互いの生活の事など適度な情報開示をしつつ話した。
美容の話になり件の奥さんの話が出てきた。トータルビューティーやインナービューティーなど美容に詳しいと。写真を見せてもらったが確かに綺麗な方で、話を聞いても奥さんのことが好きなのはわかった。

正直言い方が悪いが人のもの、相手がいる人には全く興味がないので仲を裂くみたいな事はしたくないし、まあマッチングアプリを勧めるのはどうかと思うがお互いがお互いにいい関係だなと話を聞いてて純粋に思った。そのまま話し込んでいるとひとつの提案を投げられた。

「明日奥さんと会わない?」

おい、刺されるのか?

友人が次々と結婚していく中、ひとり焦りを感じるわたし。果たしてこの2人との出会いはわたしに与えられたチャンスとなるのか。次回「嘘と沈黙」

本当にどうなっちゃうのわたしですし、よくある話らしいね。

人生はドラマじゃなくてバラエティだとラジオで聴いてなるほどなあと思った。

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