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踏んづけると痛い

冬の終わりを感じるこの日。ある者は整々とした終わり。ある者は名残惜しい終わり。泣く者笑う者。小さな人生の節目。そんな中、生きてきて一度も意識したこともないであろう私の事を、ある年齢の者たちが、秘めた想いを胸にそわそわと思い出す。長年の劣化で、黒ずんだりへこんだりしていても、その者達には、輝く宝石や全ての災いを払う魔除け。はたまた唯一無二のレアアイテムとなるのだ。
しかしながら、愛の力はあわれ、信じる力は無力。数年もしくは数ヶ月、ひどい時には次の日には、ただのゴミ。しかも燃えないゴミになる。そうして家人にも嫌われ、よもや踏んづけた暁には、その者を痛みでのたうちまわらせるのだ。しかしながら、それでも0.03%くらいは、大事に大事に、綺麗な小箱にしまわれ、いつかその者を甘酸っぱい青い林檎の時代に呼び戻す。それは記憶の小さな鍵。なんと、なんと羨ましい!
私はといえば、前述のように家人を痛みで飛び上がらせ、掴んで投げ捨てられた挙句、川べりまで転がって、今このクソガキに水切り遊びされようとしている。

なぁ、少年
切れんと思うよ、私では。

私は制服の第二ボタンだ。



 頬張れば  青いりんごの  味がする

 あなたにもらった  第二ボタン

 なわけないけど

 そんなときめき  第二ボタン



                みかん

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