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秋風秋雨人を愁殺す 武田泰淳


漢文調の言葉遣いは、なんでこんなにカッコイイのだろう。例えば「二十歳にして心朽ちたり」李賀の詩の一節である。あんまりカッコイイんで、これをそのまま書名にした本もある。読んでないけど。
作者は武田泰淳。中国通の大家である。小説「富士」は私が読んだ小説の生涯のベスト1である。
「風媒花」も読んでよかった記憶がある。もう全部忘れちゃったけど。
本書は、「秋瑾」なる女性革命家の話である。清朝を打破すべく立ち上がった革命闘士の伝記である。辛亥革命前史の人である。ジャンヌ・ダルクみたいだ。志半ばで殺されちゃうわけだが、彼女を主人公にした戯曲も挟み、泰淳和尚の筆は冴える。読んでて、ハリセンの音さえ聞こえそうである。いやいや、まだ100頁しかよんでないけど。
このまま、最後まで読むかわからない。最近は、飽きればすぐにやめるから。でも、100頁までは面白い。面白いは不謹慎かな。革命に至る革命戦士の生き様は、でも面白い。
だが、泰淳和尚は、秋瑾を坂本龍馬の様には書いてない。
人間「秋瑾」を書こうとしているように見える。が、やはりロマンの人として書こうとしているようにも見える。決めてないのだ。読み手が右に行こうとすれば、いやいや左だよ。左で納得しようとすれば、いや右だ、と人物像を確定させない。それは他の人物もそうである。実際の秋瑾を描き、戯曲の、文学で語られる秋瑾も書く。最終、どんな秋瑾が立ち現れるか楽しみである。まあ、最後まで、読めたらの話ではあるのだが。
全然別の話。中国の人名、地名が読めなさすぎる。ルビふってほしい!

秋風秋雨人を愁殺す 秋瑾女士伝  武田泰淳 筑摩書房 https://amzn.asia/d/0hYAvFB

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