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蓮の宇宙 松山俊太郎


怪人、碩学、天才。松山俊太郎についての本である。残念ながら、私は読んでない。読んでないのに、なぜ紹介するかと問われれば、いっぺん会ったことがあるからである。うちの大学の夜間で教えているという噂があって、ほんまかいな、と思っていたら、大学の帰りに遭遇した。勿論、話なんかしてない。顔もよくは見なかった。だが着物姿で颯爽と歩く偉丈夫には左手がなかった。少年の頃、趣味の手榴弾分解中、暴発が起こったのである。以降、松山は着替えが楽な着物を愛用した。
繰り返すが、著作は読んでない。たぶん読んでも私ごときでは理解できないと思う。
松山は東大でインド哲学を学び、蓮の研究に勤しむ。交友関係は広く、澁澤龍彦、種村季弘、巌谷國士、寺山修司、鈴木清順。藤田敏八、吉田喜重は同級生だという。60年代、70年代のあそこら辺りの一群である。探偵小説にも造詣が深く、東京創元社版の「黒死館殺人事件」の解説を書いている。澁澤龍彦が奥さんに余りに酷いので嗜めもしている。趣味は猫を捕まえて……これはやめとこう。とにかく文学史の表には出てこないが、大きな存在なのだ。例えるなら、小林秀雄、河上徹太郎、北大路魯山人、中原中也、大岡昇平、白洲正子の中にいて、彼らに大きな影響を与えた青山二郎のような存在だろうか。
もう一度、言う。私は一行も読んでない。では、なぜ紹介するのか。それは、私が一度見たことがある、という自慢ゆえである。

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