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ちょっとやそっとのトラブルくらいではめげない頼もしさと次に見えた課題|2023スプラウト・kAIware 福岡女子商業高校②

本学では後期が始まりました。昨日から。さっそく1コマ授業して、今日は2-4限と夜1限、さらにはそこから明日の仕事のために新幹線で移動とハードな1日。

noteを書き終えた頃、到着しました

加えて昨晩のエアコンの風が当たりすぎたのか、朝から喉の調子が悪く最悪なコンディション。そんな中でも来るものは来るので、今日をなんとか乗り切ろうと覚悟を決めました。

と私自身のことはさておき。後期1回目の3-4年ゼミは福岡女子商業高校でのコラボ授業。昼休みの間に移動し、13時集合、打ち合わせのあと、13:50からの2コマの授業に臨みました。

が、これが思惑通りいかず、今日はトラブルまみれの1日。いつも学生には「なんとなく授業に入るな」とか、「区切るべきところで区切ろう」といったことを言ってるにも関わらず、実は(体調不良を言い訳に)自分が確認を怠っていたのではないかと反省しているところ。

ということで、今日の授業の様子を覗いていきましょう。なお、これまでの女子商での取り組みについては、下記のマガジンをご覧ください。

レジュメがない!から始まる今日の授業…

9月1日に新学期が始まった高校生。そろそろ半月が経過して、ちょっとお疲れモードか。学生の授業に反応もするが、おしゃべりが過ぎるのが気になるところ。学生も「ヌルっ」と授業に入ってしまい、なかなか落ち着かない展開。

3-1は生成型AIを活用したビジネスプラン作成をテーマとする授業

そんな中で早々にトラブルが発生する。

講義レジュメが印刷されていない。

全クラスありません…。

3-2は従来型の模擬店出店を目指すアントレ教育=スプラウトを提供

このプログラムはこれまでも繰り返し書いてきたように、全ての講義に反転学習(事前動画にて予習し、そのふりかえりからスタートする)を導入しており、講義資料が無くては授業が進まない。クラスによっては事前動画もレジュメも全て連絡ツールである「Google Chat」で連絡しているにも関わらず、確認がされていない。

加えて、講義資料の印刷がされていない…。

ここで学生たちはよく我慢して授業に臨んでいた。嫌な顔1つせずに、今この状況をどうすれば打開でき、授業を安定的進められるかを考え、行動に移していた。余程、指導教員より我慢強く、淡々としている。素晴らしい。

生成型AIが動かない!

次に発生したのが生成型AIを活用するkAIwareでの事案。ChatGPTにもGoogleが提供するBardにも入れない。これで完全に詰んだ。ここまで予定していたカリキュラムがガラガラと音を立てて崩れた感じ。

今日は課題を決めてペルソナ作るまでが目標

ちなみに、kAIwareプログラムは全5回の授業で事業機会の探索→課題発見→仮説設定→調査→ペルソナ作成→バリュー・プロポジションの決定まで進むことになっており、今日の目標はペルソナ作成に至ること。が、前回授業でも発生したChatGPT事案により、課題の設定まで行けていない。

加えて当然のことと言えば当然のことながら、高校生が前回授業の内容など覚えているはずもない。大学生も授業の主導権を握ろうとするが、サポート役の学生が適切に声掛けできない。教壇に立つリーダーが声を出しても、説明しても前に進みもしない。スタックしてしまった。

今日の内容は盛りだくさん

これは完全に私の設計ミスではあるが、授業内容が盛りだくさんの上に抽象的。非認知能力高めの女子商ではなかなか厳しい授業内容だったかもしれない。が、5回で最後ビジネスプランの発表までを考えればやらざるを得ないし、だからこそ生成型AIを活用をして時短をしようとしている。

我慢強く授業を進めるクラスリーダー

加えて、保護者の承諾まで取ったにも関わらず、高校生が持つChromeBookではChatGPTに入れない。結局1回目同様学生に質問を入力してもらい、それをスクリーンショットで高校生と共有するという何とも冴えない対処方法にせざるを得なくなった。

実は後でわかることだが、これにはカラクリがあったのだそう。事前にChatGPTが動くかテストしておけば良かったのに、夏休みにかまけて手を打たなかった私の責任でもある。

ただ、学生たちは臨機応変に対応できることをしっかりと対応してくれた。目標としていた到達点までは進まなかったが、行けるところまでの理解をしっかり促すという判断は適切だったように思う。

スプラウトでも課題がたっぷり

一方、従来型のアントレプレナーシップ教育プログラムを展開する「スプラウト」のクラスでは、昨年から変わっている「女子商マルシェ」のフォーマットに対応して授業を進めたクラスと、そうでないクラスで理解度に差が出たというニュアンスの報告を受けた。

これまでも述べてきたように、今年度の「スプラウト」の目標は授業カリキュラムの標準化であり、作成したレジュメ、スライドを元に授業をすることで省力化を図ろうとしてきた。しかし、その前提となる学校での取り組み方が異なれば標準化は意味をなさない。

それまで「女子商マルシェ」を行う際には学年関わらずクラスを半分に割り、それぞれに担当店舗を貼り付ける形で運営が行われていた。それを昨年度からは3年生が組織のリーダーとしてリーダーシップを取って、1-2年生が言わば従業員的に動くという縦割りの組織構成になった。クラスをベースにした組織から、上級生にリーダーシップを求める形にした。

ここに壱岐商業高校向けの「マルシェに向けた経営理念・戦略」を作る授業内容をぶつけても仕方ない。ようやく組織編成が終わり、担当者もなんとなく決まっている状況では難しい。加えて1年生に何も考えずに壱岐商業高校向けに作った授業をぶつけてもどうしようもない。特に私は指示しなかったが、「基本的に」という指示をしつつも、理解度を高めるワークをどう作るか。クラスリーダーの授業運営の考え方が透けて見えた。

独自授業を作ったクラスは理解度深め

となると、当然のこと、そこにアジャストできたクラスとそうでないクラスとでは、ふりかえり時の学生のコメントの質が異なる。どんなに言葉で繕っても、高校生を置いてけぼりにしまった時点で気づかなければならない。

このプログラムが怖いのは「時間が取り戻せない」ということだ。1回の授業を余程慎重に組み立てないと、それを取り返す難易度は極めて高くなる。そんな印象を受けた。

一方、アジャストできたクラスは諸々問題がありつつも、高校生がジブンゴトとして考えていたことと合わせて、グループワークが相当に盛り上がったようだ。昨年まで至るクラスで実施していた縁日の模擬店で何をどこで売るかを考えるワーク。

チョコバナナのポップ

実際チラッとだけ見せてもらったが、なかなかにして上出来のポップ揃いであった。

あるクラスの経営理念と差別化アイデア

今年度はこちら側としても新たなチャンレジを仕掛けているが故に、うまくいくところ、いかないところがハッキリと出てしまう。加えて、kAIwareクラスでは難易度が高い上に、新技術を使っているから、学生も高校生も手探り状態。さらにここに来てのChatGPTが機能しない問題とストレスフルな状況が続く。

だから、高校生も退屈そうに、授業中に歩き出す、喋る、外に出る。今日の授業はそういう意味でも改善すべき点ばかりが出たという印象だった。

ふりかえり:どこに希望を見出すか

こうして授業は終了。私自身の体調不良も相まって、モヤモヤしている間に授業が終わってしまった。当然学生も不満足そうな顔をしている。

片付けをして場所を移したミーティング場所に行くと、学生は休憩することもなく、今日のふりかえりを始めていた。誰かが指示するというわけでもなく。ここにこれまで創り上げてきた文化的なものを強く感じることができた。これはゼミの強さだと。

議論は白熱する。各クラスのふりかえりも的確。特に、授業を最後まで進めなかった3-1のクラスリーダーは思うように進まない中でも冷静な判断で高校生が追いついて来るのを待っていた。もちろん途中で終えるということは、次回以降に積み残しが出るということだが、それを理解した上で判断を下していたようだった。

控室を変えてのふりかえりミーティング

さらにその上で、いくつかの課題・問題点のようなものを感じた。

とりわけ「問いを立てる」難しさは大きな壁になっている。課題だ何だと議論することはできるが、抽象的な概念操作が十分でない。課題の深掘りもどう掘って良いかが読めないので、適切な問いが出てこない。同じことを繰り返し尋ねるだけになってしまう。ただ、授業の難易度はますます高まる。そうした中でいかなる手を打つべきか。悩みは尽きない。

これを解く鍵は学生の力量にあるかもしれない。自分が使いこなせない技術を、十分に理解していない概念を、ただただ言葉を並べて授業をしても高校生は理解できない。

目の前に訳のわからないことを宣う大学生が先生役としている。

だけになってしまう。果たしてこの状況がこのプログラムの運営上適切と言えるのだろうか。「教えながら学ぶ」は単に授業すれば良いのではない。自分の力量を高めねば、この状況は打破できないだろう。そして、その打破の方法に気づき、運用しようとした頃には今年度の授業が終わってしまう可能性だってある。

今日はトラブルが多々ある中でも学生が冷静に対処したことにより事無きを得た。学生の力量を(より)信頼できるようになった。が、まだまだできるはずで、そこに期待せざるを得ないというのはこの職業に就いている人間のサガかもしれない。

まずはお疲れさまでした。次回は必ず忘れ物を取りに行きましょう。常にベストパフォーマンスを目指して。

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