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SM誌を毎月購入するようになるのは、もう少し後だった。
AVを頻繁に見るようになるのも、もっと後。
緊縛の手順など知らない。
手首を後ろで縛って胸に縄を掛けるのは知っていた。
菱縄や亀甲縛りなどは写真で見た事あるが、どうやるのか知らない。
縛ってみたいと言ったが縄も持っていなかった。
 
彼女に縛って欲しいと言われて「私も同じだから」の意味が分かった。
同じ性癖を持っている、しかも互いに好意を持っている女性に出会えたのは奇跡としか思えなかった。
でも、どうして私が縛りたいという願望を持っていると知っていたのか?
 
彼女はクローゼットに仕舞ってあるバッグから1冊の本を取り出してきた。
SM誌だった。
表紙を見ると○○年○月号とある。
2年半くらい前の本。
「いつか好きな人にこういう風に縛られてみたいとずっと想っていたの」
パラパラとページをめくっていくと巻頭はカラーグラビアで緊縛写真が掲載されている。
その後はモノクロのページで官能小説や体験手記等の読み物、パートナー募集等が掲載されていた。
 
ページをめくりながら頭では他の事を考えていた。
縄はどこで買えばいいんだろう。
自分の願望を叶えられる機会がやってきた。
と同時に彼女の願望は何としても叶えてあげたかった。
SM誌の巻末にSMクラブやSMショップの広告が載っている。
今はなくなってしまった新宿のSMショップ。
購入先が決まった。
 
10代の頃から実年齢より上に見られる事が多かった。
所謂『老け顔』
私服を着ていれば高校生に見られる心配はなかった。
この点では親に感謝しなければならない。
老け顔の利点は年齢を重ねてくると、今度は逆に若く見られる。
モデルとの撮影を楽しんでいた頃は実年齢を言うと驚かれる事もあった。
 
「今度の日曜は用事があって出掛けるよ」
と伝えて1人でSMショップへ行った。
彼女を連れていかがわしい場所へ行くわけにはいかない。
 
雑居ビルの地下1階に目的のショップがあった。
狭い店内には至る所にSM用品が置かれ、或いは壁に飾られている。
手枷足枷首輪等の拘束具、当時は何に使うのかわからない道具もたくさん。
目的の縄を探す。
丁寧に纏められているものや壁に掛けられているもの等たくさんある。
種類も麻縄や綿のロープ、長さも5m、7m、8m、10mとか色々ある。
どれがいいんだろう。
グラビアで見たのは麻縄だった。
触って確かめてみる。
麻縄はザラザラしていて綿ロープの方が肌に優しそうな手触り。
綿ロープがいいかな。
色は黒と赤の2種類がある。
白い肌には黒いロープが合いそう。
所持金を確認して黒い7mの綿ロープを4本購入した。