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『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』キャストによるキャラクター解説

 爆裂おもしろドラマこと『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』(日本ではU-NEXT配信中)。少女時代編の終了(S1e5)を区切りに、キャストたちによるキャラクター解説をメモしました。
 キャストたちはショーランナーとキャラ造形を固めていったようですが、あくまでも演者の解釈です。また、とくにレイニラ&アリセントは発言者が混ざってます。一応ソースも貼りましたが、重複している場合、後出キャラクターのほうには掲載していません。

作品概要

原作者ジョージ・R・R・マーティンいわく『ゲーム・オブ・スローンズ』はトールキン以降のハイファンタジー。『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』はシェイクスピア悲劇のような歴史小説。
TV版は、ショーランナーやキャストいわく「家父長制システム下、人生の決定権すらなかった女性二人」フォーカス。
ソース: 1

レイニラ・ターガリエン

演: ミリー・オールコック&エマ・ダーシー

幼いころからジェンダーギャップを感じ、自己実現のため反抗してきた。一方、必ずしも玉座を望んでるわけではなかった。女王になって周囲の環境を変えたい気持ちはあったが、母に世継ぎを求めつづける父親を見ていたため権力に懐疑的になった。母の喪失が非常に大きい。
デイモンは魂のかたわれ(似たもの同士)だと感じているが、それゆえ男女でゲーム/扱われ方が異なる性差も感じてきた。
ep4の娼館の時は、プラトニック/ロマンティック/欲望を判別できる年齢および生育環境ではなかった。いい感じだと思っていたものの、その関係によってどうなっていくか、どうしていくのかはわかっていない。当時、注目してほしかったレイニラのことを見てくれる人はデイモンとクリストンの二人だけだった。クリストンのことは好きではあったが、叔父と比べた場合、選びとる存在ではない。
アリセントとの関係は、プラトニックとロマンスの入り混じり。その感情、関係をあらわす言葉を知らない。そして再婚騒動のトラウマが互いの行動原理に組み込まれた。2人のあいだの根底に流れるのは嫉妬感情で、ep4は特にそう。

ep5-6のあいだの10年間、女性継承者ゆえに悪評を流されつづけられた。男性の継承者なら受けられる継承者教育、支援のバックアップも欠けていた。
王"女"であるため、特権はあるが、権力はない。アリセントも同様で、どちらも己の人生の主導権を追い求めている。王位継承戦を繰り広げる二人が根本的に求めているのは、玉座ではなく仲直り。状況がそれを許さないし、お互い相手に請いたがらない。
ターガリエン伝統として、うちなる炎の葛藤が渦巻いている。小評議会を焼きたい衝動に駆られている等。
父親のヴィセーリスと似ており、どちらもコミュニケーション下手。困難や問題につきあたると逃げる。それを親子間でも繰り返しながら、深き愛、打ち解けること(unification)への羨望がある。袋小路な二人。

ソース 123456

ヴィセーリス・ターガリエン

演: パディ・コンシダイン

「王ではない王」。ただの善人で、王の器ではない。学者肌で、平和を保とうとしていた。なるべく全員を喜ばそうとして、最終的にすべての人に悪影響を与える。己に巣食うドラゴン(憤怒や破壊願望?)を押さえ込もうとしている。
ドラゴンライダーをやめたのは、ドラゴンが原子爆弾級の危険な力だと考えているから。力の重要性も理解しているため、取り扱い方に注意を払っている。
まだ若き身体を蝕むハンセン病のような病は、王の重圧のメタファー。レイニスが継承していたほうが人生良かったであろう人物。
エイマとは相思相愛だった。突然妻を失ったため、父親としての娘への接し方がわからない。ep1後半でレイニラに秘密を話したのは、玉座がどれほど危険な立場か教えたかったから。
デイモンのことは愛しているが、王という立場が兄弟間の距離を生んだ。弟が無責任にギリギリな振る舞いをするたび擁護してまわっている。
王の手の解雇は、弟と娘の噂の真偽以前に、オットーがいかにして自分とアリセントの策略婚を企てたかわかったから。

ソース: 123

デイモン・ターガリエン

演: マット・スミス

関心があるのは権力ではなく混沌、権力への妨害。できるかぎり問題を起こし続けることが生き甲斐。反動的で衝動的、暴力的だが、彼なりのモラルがあり、本人なりに正しいことをしている自認。
玉座よりも兄へのコンプレックスで動いている。よくある複雑な兄弟関係。兄とは変なところが似ていて、変なところが似ていない。レイニラとの関係にしても、彼女との交流で変化はしているものの、根本的には兄の存在とつながっている。とにかく複雑な状況。
いくら兄と姪に対して問題行動をしたとしても、2人のために命を賭けて闘うのがデイモン。ヴィセーリスとレイニラもそのことをわかっている。
演者マット・スミスいわく、噛みつく先がコロコロ変わるロットワイラー(犬種)。

ソース: 12

アリセント・ハイタワー

演: エミリー・キャリー&オリヴィア・クック

内向的で、義務(duty)を重んじる性格。少女時代、レイニラより家父長制の構造を俯瞰できていたからこそ、自分に欠けている(親友の)反抗エナジーに惹かれた。
指いじりは自傷行為でありストレス発散。
親友の父親の寝室行きを命じられても、尊敬する父が自分を政略に巻き込むとは思っておらず「意味」を考えないようにしていたが、扉がしまって状況が(頭に)降りかかった。自らを政争の当事者と認識したあとも、自分の感情、自分がどうなりたいかわかっていなかった。そもそも選べる境遇ではなかったのに(父親に?)選択の主体性があると思わされていたことが問題だった。
ヴィセーリスには情も覚えていったが、ロマンス感情はゼロ。
激昂する父を見たのはep5がはじめて。それでも王女と王を信じていた。嘘が発覚して激怒したのは、様々な感情の混合。大きかったのは、レイニラが「私の母の思い出に誓って」と言って嘘をついたこと。感情を表に出せない彼女にとって、互いの母の喪失をいたわった思い出は、人生一度きりの感傷の吐露だった。緑のドレスは父親の側についた表明、およびブチギレ宣言。

撮影現場での二つ名は「家父長制の産物」。ep5〜6のあいだの10年間、どんなことを放棄しても許されるレイニラ、および夫子との立場の違いを突きつけられつづけ、「産む機械」しか求められない人生を正当化しようとしつづけて歪んだ。「私は完璧にやってきた、なにも問題ない」と思い込もうとしつづける実存危機。
まわりには自分を利用してくる男しかいないため、孤独で宗教にハマる。
レイニラは人生最初で最後の友人であり初恋。成長し敵対してもその根源がつきまとっている。

ソース: 1234

オットー・ハイタワー

演: リス・エヴァンス

ep5の去り際、娘に言いたかったことは「お前を愛している、心配だ」。しかし、そういうボキャブラリーはなかった(愛情表現ができない)ためあの罵倒になった。
ハイタワー親子は、感傷を抱いた際、抱擁、涙、愛を伝えるべき時に言い争いをはじめる。それが愛情の示し方になっている。コミュニケーションの壁(バリアー)がハイタワー家の特徴。

ソース: 1

サー・クリストン・コール

演: ファビアン・フランケル

ep1ではじめて王都に来るまで、非常に孤独な人生だった。そしてトーナメントで喝采を受けた。王宮では、民族、出自的マイノリティ。
元々「チンピラ(thug)」設定。その個性が描かれたep1では、デイモンを煽るためレイニラに話しかけ、王弟の背中を打った。ep2以降、おとなしく見えたのは政治の世界(の強制力)でパーソナリティが見えづらくなっていたから。しかし、政治の文化には慣れていない。衝動的な気性がep5で暴発した。
憤りの理由は、レイニラに求婚を断られたからではなく、その後、解任されずキングズガードの職に留められ、婚姻式の護衛に立たされた(騎士道精神を穢された?)ことの屈辱。

ソース: 1

コアリーズ・ヴェラリオン

演: スティーヴ・トゥーサント

家名を高める大志を抱く野心家。自力で富をなしたことが誇りであり、それが憤りを生む原因にもなっている。小評議会のエリートに怒っているものの、ゲームのルールは守り、ルール上で戦う主義。
レイニスが戴冠されなかったことに関して(性差別を理解しており、「リッチだからいいじゃない」と彼をいさめている)妻よりもパーソナルに受け止め、不満を唱えつづけている。ときにその態度こそが妻を傷つけてる風。
キャラクター造形で重視されたのは父親像。

ソース: 1

レイニス・ヴェラリオン

演: イヴ・ベスト

演技のモデルになったのはヒラリー・クリントン。最高の候補だったにもかかわらず性別理由に敗北した(とされる)存在。人生最大の傷を負ったあとも、ユーモアを携えた公人であらなけらばいけないプレッシャーに晒されている。
継承者に選ばれなかったのちは役割を失っていたが、前例やぶりでレイニラが継承者に選ばれたことで (長年かけて癒していた)傷が開いてしまった。その後もみずからの復讐心をおさえようとしている。
情熱的な夫とは反対の政治戦略。受動的で、一旦机において俯瞰する。最大の目的は子どもを護ること、娘を自分と同じ目に遭わせないこと。

ソース: 1

余談感想

キャストのインタビューを呼んでいくと、『ゲーム・オブ・スローンズ』ファンの少なさが目立ちました。主要キャラだと、大ファンっぽいのはコアリーズ役のスティーヴ・トゥーサントくらいかも。「ファンタジージャンル好きじゃなかったから……」系統が多いです。「逆に『GoT』をちゃんとチェックしていたらプレッシャーを感じすぎてオーディションがうまくいかなかっただろう」(エマ・ダーシー談)パターンなのかもしれません。

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