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2010年代ミュージック・ビデオBEST10

20組の有名人から2010年代アメリカ社会を追った著書『アメリカン・セレブリティーズ』刊行を祝して、個人的な2010年代ミュージックビデオBEST10を発表します。アメリカ中心で、好き嫌いではなく「ポピュラーカルチャーへの影響」基準、そして並びはランキングではなく時系列順です。それぞれに類似作品をつけた合計20作。

1. Lady Gaga - Telephone (2010)

MTV脱獄

レディー・ガガとビヨンセという世紀のディーバがタッグを組んだ、9分半に及ぶ長編ミュージックビデオ。これの一番のポイントは「4分経たなければビヨンセが登場しない」ところです。1980年代、つまりマイケル・ジャクソンとマドンナが現代ポップスターの原型を創造した時に強力な媒体であったMTVネットワークでは有り得ない贅沢仕様。事実、当時「我々はクリエイティブなジェネレーションだ」と語っていたガガは「アンチMTV検閲」を掲げ、この短編映画のような、音楽が始まるまで3分もかかるMVを監督しました。それを可能にしたのはYouTubeカルチャー。後年本人が「失敗」と語るほど詰め込みすぎてダラダラしてる気はあるのですが、「YouTube時代」幕開けの記念碑としては、詰め込みすぎでちょうどいいでしょう。

ちなみに、ラストの"To Be Continue...."ですが、監督のインタビューによると「その場のノリでつけた」そうなので、続編は無い模様……。

類似: Rihanna - Bitch Better Have My Money (2015)

「MTV脱獄」の5年後、リアーナの議論を呼んだ『Bitch Better Have My Money (2015)』が降臨。奇しくもレディー・ガガ『Telephone』と同じクエンティン・タランティーノ風。詳しくは著書『アメリカン・セレブリティーズ』に書きましたが、フェミニズムや教育界隈でも議論を読んだ18禁レーティングな過激なバイオレンス表現。そのスキャンダラスさによって「YouTube時代」ポップスターのミュージックビデオの幅を広げた作品と言えます。実は、リアーナって「MTV時代の終焉」を象徴するスターとも論じられたんですよね。「最後のMTVスター」とされた彼女が功労賞的なヴァンガード部門を摂ったのが2016年のMTV VMA(ビヨンセのメドレーやカニエの大統領選挙出馬演説が話題を呼んだ回)。その後のVMAは、トラヴィス・スコットなど、MTVではなくストリーミングで躍進したアーティストがそこまで重要視しない「遊び場」となり、例えばニッキー・ミナージュとマイリー・サイラスの激突やニッキーとテイラー・スウィフトの和解みたいな「VMA主軸の話題」が起こりにくくなるフェーズに突入しました。振り返ると、ポップスターのクリエイティブをより拡張した『Bitch Better Have My Money (2015)』がレディー・ガガの行った「MTV脱獄」の終点地なのかもしれない、と。

2. Katy Perry- Firework (2010)

ホワイトネス・ヘテロ・ロマンチシズム終焉花火

ケイティ・ペリーの楽曲『Teenage Dream』が、アメリカにおける「白人異性愛ロマンチシズム」覇権の最後だった、みたいなことは『アメリカン・セレブリティーズ』のあとがきで書いたのですが。しかしながら、同名アルバムからの3rdシングル『Firework』では、「白人異性愛ロマンチシズムの次」を提示しています。アメリカ合衆国独立記念日のアンセムとなったこの曲のMVでは「一人一人に個性がある」的な多様性肯定を行っているんですよね。こうした多様性ムーブメントの動きは、ブルーノ・マーズ『Just The Way You Are』(2010)マックルモア&ライアン・ルイス『Same Love』(2012)』でも行われております。

類似: Halsey -Ghost (2015)

この繋ぎで面白いのは、ソーシャルメディアでの活躍を通して2014年にメジャーデビューしたホールジーが、『Firework』を創出したケイティ・ペリーの初期代表曲『I Kissed A Girl』(2008)を批判したことです。デビュー初期からバイセクシャル、つまりセクシャルマイノリティであることを「大げさな演出」なしにカミングアウトしてみせたホールジーは、ケイティやデミ・ロヴァート『Cool for the Summer』のような、ヘテロ認識される女性ポップスターによる「セクマイを危険な売りとする作品」を批判したのです。そのホールジーの『ghost』は、「同性同士の性愛」を「禁断視」することなく映像表現に昇華させています。彼女は「初のクィア・ポップスター」と喧伝されたりもしましたが、巨大レーベルがプッシュするポップスターとして「禁断視」なしにセクシャルマイノリティな表現が輩出されたことは、ある種ケイティ・ペリー『Fireworks』路線のあとにあるとも言えます。

3. Rihanna - We Found Love (2011)

ムードの暗鬱の刹那

2010年代の代表曲。リアーナに暴力を振るった元恋人クリス・ブラウンによく似たキャスティング含めて、2011年リリース当時は十分「過激」な映像作品でした。このあと、メリナ・マツォウカス監督が描いた「危険でエモーショナルな青春ムード」は、テイラー・スウィフト『 I Knew You Were Trouble』(2012)アリアナ・グランデ『Into You』(2016)カミラ・カベロ&マシンガン・ケリー『Bad Things』(2016)など「女性ポップスターの流行り」になっていくんですけど。しかしこの「エモいムード」、30Days Challenge記事でも書いたんですが、アカデミー賞を受賞したバリー・ジェンキンス監督作『ムーンライト』にも通じると思うんですよね。2016年当時はビビッドで構図がキマった『ラ・ラ・ランド』こそ「Instagram文化」だと思われていたものの、後年は『ムーンライト』や、後続ドラマ『ユーフォリア/EUPHORIA』のような「ムードの断片」を表現した幻想的な表現こそインターネットカルチャーの主流になったという。バリー・ジェンキンスが『ムーンライト』を撮る前に深く嫉妬した映像は、映画『Portrait of a Lady on Fire』(2019)を監督したセリーヌ・シアマによる『Girlhood』(2014)の黒人女性たちがリアーナ『Diamonds』を踊って蒼く光るシーンです。つまり、2010年後期を座頭した「エモーショナルなムードの断片」は、リアーナの(人種やジャンルの壁すらも越える)歌声によって産声をあげた疑惑すらあるのです。

類似: Lana Del Rey - Video Games (2011)

アナーキーなポップスターとして暗鬱ムードな青春シーンを創ったリアーナと、何が相反するのか? そうすると、「ポップスター」にならぬままオルタナティヴなポップを行ったラナ・デル・レイかな、と思いました。「アメリカーナな大衆文化」を偽造するかのような初期作『Video Games』は、映像の加工からして「ノスタルジー」意識が濃厚です。こういう、あえて「画質の悪いビデオ録画」を模したアプリって2010年代SNSで流行りましたね。Rolling Stone Japanでも書いた、過剰で高速な「ノスタルジア」ジェネレーションの代表かつ始発は彼女しかいないでしょう。

4. Miley Cyrus - Wrecking Ball (2013)
スキャンダラス少女

章題の「スキャンダラス少女」、ちょっとももいろクローバー的な昭和風漂う「少女」はわざとです。ディズニーによるティーンドラマ『ハンナ・モンタナ』によって若き頃からスターになったマイリー・サイラスは、2013年、「ドラッグまみれパーティー三昧な全裸ポップスター」としてキャリアを一転させました。その転向として、ヒップホップサウンドも取り入れた4thアルバム『Bangerz』からのシングル『Wrecking Ball』。ワークアウト風なタンクトップとショーツを身につけたマイリーが「壁」を破壊する浅間山荘風ビデオは大きな話題を博しました。この話題沸騰ビデオから流行したのが、ニッキー・ミナージュ『Anaconda』等に見られる「YouTube初速視聴レコード樹立」系のショッキング・ビデオ。2020年の今ではBTSやBLACKPINKなど、コアファンの多いK-POPアイドルが強い「初速視聴レコード」ですが、この頃はとにかく「ショッキングな話題沸騰映像」が強かった。そしてもう一つ。大資本ディズニーを筆頭とする「良い娘ちゃん」を商業的に課する権力に対抗する「女性の自由を表する露出表現フェミニズム」ポップカルチャー・ムーブメントの象徴的な始まりです。

Lorde - Royals (2013)

マイリー・サイラスが始めた「良い娘の破壊」のその先。それは『アメリカン・セレブリティーズ』で触れた「良い娘でもみんな地獄行き」を表現したビリー・アイリッシュ『I Knew You Were Troubleall the good girls go to hell』でもいいのですが。しかし、『Wrecking Ball』と同年、同じく天才「少女」と喧伝されるロードが『Royals』をリリースしています。これは、MTV VMAでロビン・シックと全裸祭りをしたマイリーその人を糾弾するような「私たちはポップスターと違って贅沢な生活を送っていない」オルタナティヴなインディ風ポップ。『アメリカン・セレブリティーズ』で書きましたが、この後、ホールジーやBTSなどの「身近なポップスター」像の布石となりました。

5. Beyoncé - Beyoncé (2013)

US音楽シーン、そして世界中にフェミニズムを宣言し普及させた『 "***Flawless』(『アメリカン・セレブリティーズ』参照)を掲載していますが、ここで指すのは2013年のセフルタイトル・アルバム『Beyoncé』全体です。これ、Rolling Stone Japanで触れたように、そのあと本人が注目を一身に集めたことを自慢するほど話題になった「サプライズリリースのビジュアル・アルバム」だったのですが。つまり、アルバム全体、全14トラックで「一本のミュージックビデオ」としちゃったんですねビヨンセは。この記事の1番で紹介した、ビヨンセ参加のレディー・ガガ『Telephone』による「MTV脱獄のYouTube時代」のその先をiTunesで派手にやってみせたのです。短編映画を超えて、まるで一本の長編映画。ガガ登場以降、「歌が始まるまでクソ長いショートムービー風MV」が増えまくったのですが、「フルアルバムまるごと一本の映像作品」としたビヨンセのおかげでダルいビデオが一気に減少したという一消費者としてありがたい功績があります。

類似: Beyoncé - Formation (2016)

ビヨンセを超えられるのはビヨンセだけ。ということで、セルフタイトルアルバムの次に放たれた『Lemonade』リードシングル。ケンドリック・ラマー『Alright』(2016)のように、アメリカで生きる黒人としての境遇がシリアスに表現されています(それは結果的には「政治的」とされる)。ビヨンセの場合、マイケル・ジャクソンのごとき「国を代表するスーパースター」としてそれを堂々行い、「黒人女性でいること」を描いている。彼女ってよく「優等生」と言われるんですが、実質的には、拙書でも書いたように、「新たな"優等生"の道筋」を大きなリスクを背負いながら切り拓いた「革命家」だと思います。

6. Meghan Trainor - All About That Bass (2014)

ビヨンセの次にこれかよ!って感じですが。そのビヨンセも絶賛した「ボディポジティブ」賛歌でございます。これ、アメリカで大ヒットして、2010年代の終わりにかけても「アメリカ人のワークアウトBGM」としてエミネム『Lose Control』と並ぶ人気を誇っているんですよね。事実、このパステルカラーのMVをまだ覚えている人は多いと思います。これって要するに「世間的に太ってる扱いされようと私は素敵!」系のエンパワメントなのですが、結構叩かれたんですね。この後もメーガンは音楽メディアのワースト楽曲常連でしたし、「私は怠ける専業主婦で旦那はAMT」みたいな曲も出してフェミニズム界隈からバッシングされた。この曲にしても、異性からのセクシー認定を誇れる価値観にしていたり細身の女性を馬鹿にしていたりと、リリース当時から「進歩的」とは言えない内容です。しかしながら、ポップでキッチュな「ボディポジティブ・ビッグビジネス」はこの大ヒットから派手に始まった、という点でやっぱり重要だと思います。

類似: Maroon 5 - Girls Like You ft. Cardi B (2018)

2010年代前半に女性ポップスター間でフェミニズムが流行したあと、2018年ごろには男性ポップスターによる「女性賛歌」が流行ります。これと同年のドレイク『Nice for What』(2018)もそう。どちらもあざとさを感じさせる「商業メガポップ」ライクで、実際成功を収めているのですが、今振り返ると、大企業的だからこそ思想の浸透を感じさせる作品でもあります。この翌年には、豊満な体型を誇るリゾがHOT100ナンバーワンを獲得するポップスターとして登場します。

7. Taylor Swift - Bad Blood (2015)
インスタ映えBFFの虚構

女優やモデルなど「売れ線女性セレブ」がテイラーの親友軍団として登場したブロックバスターなミュージックビデオ。これ、2015年当時も批判が多かった作品で。自分も『1989』シーズンなら「メディアでバッシングされる自信のパブリックイメージ」を演じた『Blank Space』(2016)のほうがテイラーらしい文芸と知があって好きなのですが(2020年5月現在ではこちらの再生数が高い)。だけど、大衆から「ビジネス目当てのキラキラ親友集団」と揶揄されたこちらのほうが、このときの「きらびやか主義Instagram文化」、そしてその虚構を象徴してると思うんですよね。ここらへんからテイラーはフェミニズム的なスタンスを前面に出し始めましたが、それにしても、「フェミニズムのポップな商業化」と評されました。後年テイラーが「刹那的な友情だった」と語ったように、2020年には形骸化してしまった時代精神が宿っているのです。あと、SNS時代にはPVにつながりやすい「コラボレーション文化」なブロックバスター。このあとには、ラップ流行もあって豪華コラボレーションが流行りまくりました。DJ Khaled『 I'm The One ft. Justin Bieber, Quavo, Chance the Rapper & Lil Wayne』とか。

類似: Ariana Grande - thank u, next (2018)
ケアフルなシスターフッド

『Bad Blood』的な「キラキラ友情」の流行りがおさまったあと、音楽界でも映画界でも「ケアフルなシスターフッド(気遣いあう女性たち)」が流行しました。元カレを批判するツイートからPRが始まったアリアナ・グランデの『thank u,next』のMVって、その流れと逆流するように、『ミーン・ガールズ』や『キューティ・ブロンド』をオマージュした「女性同士の連結」ばかりの映像なんですよね。ティーンドラマ『リバーデイル』でも模範されたデュア・リパ『New Rules』(2017)もそう。2000年代から2010年代前半にかけて、「女性スター同士の対決」は儲かるものとして売り出されていきましたが、人気ミュージシャンが権限を大きくさせた後半期には「女性同士の連来」がニュースタンダードとなっていきました。

8. Rae Sremmurd - Black Beatles (2016)

みんなとつながるソーシャル民主主義

2016年Billboard HOT100の"Black Beatles"から"Bad and Boujee"の首位獲得の流れは非常に印象に残っているのですが。「俺達こそ黒人版ビートルズ」と宣言するこの"Black Beatles"は様々な意味で「USポップミュージックの新時代」を宣言しました。ラップスターをポップスターとしたサウスなトラップの統治はもちろん、ヒラリー・クリントンも参加したソーシャルチャレンジ。つまり「何枚買われたか」ではなく「何回再生されたか」が重視されるストリーミング&シェア文化時代、ラップ猛攻のアラート。ネット民に拡散される「ミーム」の強さでいえば、前年のドレイク『Hotline Bling』(2015)ですね。そして2010年代末『7 rings』(2019)』にて「ラップを模範する白人ポップ」と批判も受けたアリアナ・グランデは、インターネット・ミーム文化を押し出す『MONOPOLY』(2019)もリリースしています。

類似: Kanye West - Famous (2016)

リアルタイムなビーフ

これも"Black Beatles"と同じ2016年。『アメリカン・セレブリティーズ』に書きましたが、テイラー・スウィフトとのバトルが勃発した際に出された問題作です。カニエが2000年代に50セントとのビーフで「インターネット時代のポップなビーフビジネス」を切り拓いたことは同書で書きましたが、こちらは「ソーシャルメディア時代のリアルタイム/ファストなビーフ」と言えます。

9. Kendrick Lamar Humble (2017)
ブラック・ジーザス

ブラック・ジーザスというか、ブラック・ポープですね。ラッパー間でロックスター像が流行りまくっている頃、教皇を「特別な存在」としたケンドリックの見事さ。個人的にはゴルフのシーンとか韓国映画っぽくてアガったのですが、目を引くのは『最後の晩餐』を模範したシークエンスですね。西洋において「マジョリティの白人文化」とされた名作をマイノリティであるアフリカン・アメリカンの立場でリブートし、ポップカルチャー最前線でヒットさせてみせる。ハリウッドを代表する女性監督であるグレタ・ガーウィグも「女性版聖書の映画をつくりたい」と構想してるみたいなのですが、王道をこえて「伝統」とされたマジョリティ古典をマイノリティの手で再誕させるクリエイティビティが増えていきました。この後、ブラック・カウボーイとしてラップとカントリーを融合させたリル・ナズ・エックスによる『Old Town Road』(2019)が歴史的なメガヒットを記録します。

類似: Travis Scott - SICKO MODE ft. Drake (2018)
ラップ・ブロックバスター

スーパースターになれど「リアルなノンフィクション作家」を通したのがケンドリックなら、ブラックカルチャーの数字的な頂点を象徴するのはこの曲。2018年リリースながら、Billboard HOT100においてドレイクよりも売れた2010年代16位(まぁドレイク参加曲ですが)。ラップ版『ボヘミアン・ラプソディ』とも謳われた多層構成を作り出したソングライターは30名に及ぶとか。まさにブロックバスター、多人数生産、大量消費されるようになったラップカルチャーの一番星(アストロ)。

10. Childish Gambino - This is America (2018)
これが考察ハイコンテクスト

「黒人アーティストは獲れない」として大きな批判を浴びつづけた2010年代グラミー賞にて初のレコード大賞を獲得したラップソング。同アワードBIG4の「大きく話題になった作品が受賞しやすい性質」は『アメリカン・セレブリティーズ』で説明したのですが、これはまさしく「ミュージックビデオの話題性」でトロフィーに届いた作品だと思います。2010年代TVシーンを座頭した『ゲーム・オブ・スローンズ』の如き、オンライン考察ファンダムを動員させるハイコンテクスト(個人的には『新世紀エヴァンゲリオン』に近い意味深な陰気さ)。それに加えて「シリアスな社会的提起」が散りばめられた構成になっています。当記事4番で紹介したマイリー・サイラス的なスキャンダラス、5番ビヨンセ的なブラック・ソーシャルシュー、8番レイ・シュリマーのようなソーシャルメディア・バイラル適正など、「シェア」が重要となったソーシャルメディア興世の終着地点っぽんですよね。

類似: BTS (방탄소년단) '봄날** (Spring Day) (2017)
越境するオンライン・ファンダム

これ、ただ見ると「エモい感じの綺麗な映像」って感じなのですが。ファンの間では考察合戦を巻き起こした映像でした。螺旋階段はダンテの『神曲』メタファー、ゆえに灯りをともすと「他の世界」のメンバーと一緒になれる……などなど。USメディアでは、K-POPグループのグローバルヒットの成功要因は「オンラインファンダム」構築とよく言われるんですが、そうしたつながりを強化し持続させたのは、こうした考察を喚起させる表現もあったのではないかと思います。だから、その面では、『ゲーム・オブ・スローンズ』やマーベル・シネマティック・ユニバース、そして『This is America』と似たところがあるかもしれない。2009年に始まったドラマ『glee』では、アジア系アメリカ人の女子高生が「アジア系のディーバはいない」と嘆く回があるのですが、それから10年経って「絶対にアメリカでポップスターになれない」東アジア系へのレッテルは耳にしなくなったのでした。

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