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キャリー・マリガン演技論、ポップソングは難しい

 映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』の紹介コラムを書いたわけですが↓

 こぼれ話。主演キャリー・マリガン先生にとって「パリス・ヒルトンを歌う90sロマコメ風デートシーン」がものすごく難しかったそうです。

「撮影で泣くことは容易いんです。私の得意分野なので。一方、笑ったり、開放感、幸福を感じる状態……エゴや自のない類は難しい。コメディアンの方々を尊敬してる理由でもあります」

パリス・ヒルトンを歌うデートシーン

 加えて、マリガン先生はダンスをやりたくなかったため、監督兼脚本家エメラルド・フェネルに「キャシーはそんなことやらない」と指摘してカットさせようとする戦法に出たものの、「そんなことやらない」キャラだからこそのシーンと返されたそう↓

「もちろん、そう思うでしょうね。でも、恋に溺れた人は、外からはバカみたいに見える。みんなに正気を失ったと思われる、迷惑な存在になるわけ」

 「そんなことやらない」って息の長い解釈違いミームでもありますが「そんなことやらないからこそ」返し、強い……。

 で、この「恋は盲目」状態を直喩するのが、同シーンで主人公カップルが歌うパリス・ヒルトン「Stars Are Blind」。面白いのは、このバブルガム・ポップソングを歌う演技がものすごく難しかったというマリガン先生のお話。

「とにかく歌詞の習得(learn)が難しい。本当に意味をなさない箇所もある。Radioheadの曲を学ぶようなものです。あれらはナラティブじゃないので。もちろん、素晴らしい曲だし、誤解しないでほしいのは……私もあの曲が大好きです。だけど、習得が困難なので、私達は歌詞を印刷して練習しました」

 これ"learn"の意訳が微妙なんですが、歌詞をただ暗記するだけなら普通にできそうなんで、役者として解釈して取り込む、みたいな作業を含めて言ってるかな?と……。


 キャリー・マリガンほどの役者でもナラティブではなく散漫としたポップソングのリリックをパフォーマンスするのは難しい。これを踏まえると、W Magazine恒例の俳優にポップソングを読ませる企画はより興味深いかもしれません。


  2021年アワードノミニー候補メインながら肝心のマリガン先生いないですが、結構歌っちゃう人もいるなか本業歌手のアンドラ・デイがそちらにいかなかったりと、それぞれのスタイルを感じさせる内容。

 話が戻り、キャリー・マリガン先生なんですが、1985年ロンドンに生まれた彼女のメンターはケネス・ブラナーだったようです。16歳のときブラナー主演『ヘンリー五世』に出て役者になる意志を固め、その旨の手紙を書いたら"if you feel such a strong need to be an actress, you must be an actress."と返答されたよう。

ロザムンド・パイクも出ていた『プライドと偏見』

 しかしながら、当時女子校で演劇をやっていたマリガンは、親に進路を反対されており、ドラマスクールにも入れなかったそう。そこで、最終学年のとき講演にやってきた俳優兼脚本家ジュリアン・フェロウズに助言をもとめるも、彼からも止められ「弁護士と結婚しなさい」と返されたとか……『プロミシング・ヤング・ウーマン』を思い起こすエピソードでウッときますが、マリガン先生は挫けず、熱意を語る手紙を送付。それをフェロウズの妻が読んだことで俳優志望者のパーティーに招待してもらい、キャスティングアシスタントのツテができて映画『プライドと偏見』オーディションにつながったようです。自分の熱意ややりたいことを示していくことの大切さがわかるお話ですね。

よろこびます