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BTSとデュアリパの着想源にケイティペリー?

 2020年ポピュラー音楽といえば、パンデミック危機、それに伴う自粛生活に幸福を届けるかのような「現実逃避」ポップネス旋風が散見されました。その代表格がBTS「Dynamite」、そしてBillboard Japanで特集したデュア・リパ『Future Nostalgia』なのですが、実はこの2つとも、10年前の2010年に活躍したケイティ・ペリーの影響下にあるのではないか、という話です。

 まず「Dynamite」をデイヴ・スチュワートと共に作曲作詞したジェシカ・アゴンナー。Billboardインタビューいわく、まずコロムビア・レコードCEOからBTSが英語楽曲を探している旨を伝えられた際、デイヴとコンセプトを考案したそうです。「今、彼らが世界に向けて言わなければいけないこと。それは、エネルギッシュで、楽しく、希望に満ち溢れ、ポジティブで、ただただ巨大なエナジーの塊でなくてはならない」。ともなると、行き着くのは、絶対的に「爆発的な音楽」……こうして「Dynamite」というタイトルが生まれたそうです。ここで大きなインスピレーションになったのがケイティ・ペリー。

爆発的であることを明確にするため、タイトルが『Dynamite』になった。表現はどうあれ、常に頭にあったのは firework(花火)……ケイティ・ペリーの「Firework」。私はケイティの大ファンだから。ただただハイエナジーなものが欲しかった。特定の歌詞というより、アイデアの束として。爆発的、花火、ダイナマイト、パーティー、楽しさ、エネルギッシュ、ワールドワイド・テイクオーバー。

 そう、「Dynamite」の着想源には、ちょうど10年前、「もっと世の中が簡単に済んでいた時代」の大ヒット「Firework」があったのです! 言われてみると「Dynamite」ってアルバム『Teenage Dream』自体を思い出させる面あるんですよね。ディスコサウンドもそうですが、特にコーラス、「ポップの大砲」の如き高揚を迎えているのにどこか刹那的で儚い高音歌唱とか。あとハイライトの歌詞の並べ方ですね。

"Shinin' through the city with a little funk and soul / So I'ma light it up like dynamite" -BTS"Dynamite"
"You just gotta ignite the light / And let it shine / Just own the night Like the Fourth of July / 'Cause baby, you're a firework" -Katy Perry"Firework"

 そして2020年「自粛の女王」こと、デュア・リパ。Billboard Japanにも書いたように、深く考えず踊れる「現実逃避」のパワーを込めたダンスポップアルバム『Future Nostalgia』が大成功を納めました。

 アルバム自体はカイリー・ミノーグやマドンナ、プリンスなどレトロ志向が強いサウンドなのですが、デュア・リパってインタビューでも結構ケイティ・ペリーのことに触れるんですね。ティーンの頃から大ファンで、今じゃサポートしあう関係。尚かつ、コンサート前にチームでケイティの曲を聴いて「FUN」のパワーを高める……みたいなこと言ってた気がするのですがソース見当たらず。そのため、深く考えずに踊れる「現実逃避」の音楽のパワー主義を貫く『Future Nostalgia』にもケイティ・ペリーの影響はあるのではないかと感じたわけです。テーマの核と語られた「Levitating」はメディアからも「ケイティ・ペリーっぽい」と言われているので。

 ということで、10年経ってケイティ・ペリー再評価が地味に来ているかもしれない話でした。彼女については拙著『アメリカン・セレブリティーズ』のあとがきでゴリ押しフィーチャーして「現実逃避のポップネス」だと書いたのですが、やはり辛く閉じこもる2020年のパンデミックでそうしたエナジーがより必要とされてるのかもしれません。今では(おおむねマジョリティ的視点ながら)「もっと世の中が簡単に済んでいた時代」と回顧される2010年ですが、そうは言っても、世界金融危機が大打撃を与えたあとで、中産階級の経済的困窮を象徴するようなドラマ『ブレイキング・バッド』が人気だった時勢でした。

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