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納税を猶予する「特例制度」

新型コロナウィルスの影響で収入が減少した事業者向けに、納税を猶予するための特例制度の案が4月20日に公表されました。この特例が実施されるかどうかは関係法令の成立を待ってからにはなりますが、ここでは特例の詳細を解説したいと思います。

特例の内容は?

新型コロナウィルスの影響により「事業等に係る収入」に「相当の減少」があって「一時に納付を行うことが困難」である場合には1年間、国税の納付を猶予することができます。猶予に当たって、担保の提供は不要です。また、延滞税もかかりません。

もちろん、猶予期間内における途中での納付や分割納付はできるので、1年後にまとめて全額を払わなければならないということではありません。

特例が適用できるかどうかの判断するためのキーワードは、「事業等に係る収入」、「相当の減少」、「一時に納付を行うことが困難」の3つです。まずは、事業等に係る収入とは何か説明します。

事業等に係る収入とは?

「事業等に係る収⼊」とは、法⼈の場合には売上⾼を指します。収入なので利益は関係ありません。例え黒字であっても収入の減少要件を満たせば特例を利用できます。青色申告であることも要件にはなっていないので、白色申告でも特例が使えます。

相当の減少とは?

「相当の減少」とは、会社の規模には関係なく、新型コロナウイルスの影響により、令和2年2⽉以降の任意の期間(1か⽉以上)において、売上高が前年同期に⽐べて概ね20%以上減少していることを指します。

1か月以上であれば任意の期間で良いので、月単位である必要はないことになります。売上が前年同期比で最も減少している期間で判定するので、例えば、緊急事態宣言が出された4月16日から5月20日の期間で判定しても良いということです。

一時に納付を行うことが困難とは?

「一時に納付を行うことが困難」とについての判断は、少なくとも向こう半年間の事業資⾦を考慮に⼊れて、申請する会社の置かれた状況に配慮して行われるとのことです。そのため、申請日時点で納税のために十分な資金があるから特例が使えないということはなく、今後半年間の間にその資金が減少するような見込みがあるのであれば、一時に納付を行うことが困難と判断されるのではないかと考えます。

対象となる国税と申請手続き

令和2年2⽉1⽇から令和3年1⽉31⽇までに納期限が到来する所得税、法⼈税、消費税等ほぼすべての税⽬(印紙で納めるもの等を除く)が対象です。

さらに、既に納期限が過ぎている未納の国税(他の猶予を受けているものを含む)についても、遡ってこの特例を利⽤することができます。特例が適用される前には延滞税がかかっていたのなら、その延滞税はなかったことになり、納付した分は還付を受けることができます。

申請手続きは、関係法令の施⾏から2か⽉後、⼜は、納期限(申告納付期限が延⻑された場合は延⻑後の期限)のいずれか遅い⽇までにする必要があります。申請書のほか、収⼊や現預⾦の状況が分かる資料を提出することになります。

終わりに

まだ、最終決定ではないものの、納税の特例についてもだいぶ形が見えてきました。12月決算会社等ですでに納期が来ているが、資金繰りの都合で納税ができていない企業にとっては、大変嬉しい特例になります。融資や給付金といった支援策と組み合わせることで危機を乗り越えていきましょう。

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