アブダクションとは

アブダクション的推論を日々使っていますが、残念ながら日本ではアブダクションについて正確ではない記載をした文書が多いように感じられ、それがとても残念に思うので、これを書きました。

アブダクションに興味を持ったきっかけ

以前(2012年くらい)、社内でコンサル業務をしていた時に、どういう風に論理を組み立てているのかを教えて欲しいと言われたために自身の思考を逆算して、その思考法に名前があるかを確認したところ・・・それが「アブダクション」でした。

アブダクションとは?

演繹法帰納法に続く第三の論理的推論法と言われているものです。演繹法は推論の前にルール・規則(rule)が必要です。帰納法は同様の事象(case)を含む、複数の事例(result)を観察した結果として規則を蓋然的に推論します。帰納法は、同様の事象を含む複数の事例を観察する必要があることがポイントです。

それに対してアブダクションでは異なる複数の事象から背景にあるひとつの事実を推論します。推論されたものは規則であり得ますが、多くの場合、規則ではなく時間・個人・場所などに特有の事実になります。アブダクションはひとつの事例から複数の事象を抽出して、推論をすることが可能なことが帰納法との差異になります。

アブダクションの活用

アブダクションは様々な場面で活用することが可能です。

・ケプラーの法則
現場知られている法則(rule)で説明できないような事象(case)を(複数)発見した時に、その事象を説明する新しい法則を推論するために役立てることが可能です。本来普遍的なルールを推論することには向きませんが、この場合、現実に観測不可能なものを推論することに使うことに価値があります。

・シャーロック・ホームズの推理
ひとつの事件からできるだけ多くの証拠を集め、その証拠をもっとも良く説明するものを事実として推論します。

業務中のトラブル対応などでは一般にひとつの事例の原因を推察したりするでしょう。ですからアブダクションを知り、簡単な解釈に飛びつかず、様々な推論の中からもっともらしいものを選択することが大切なのです。

既存のアブダクションの記事について

https://ferret-plus.com/5631

例えばここの説明ではひとつの事例「朝起きると庭の芝生が濡れていた」から推論しています。そこが違う。できるだけ多くの事象を集めることがまず必要です。

https://www.kikakulabo.com/thinking-abduction/

ここでは普遍的なルールが推論できるかのように記載していますが、上に書いたようにあまり向きません。

https://logmi.jp/business/articles/320246

「アブダクションというのは、一言で言うと、仮説をつくる方法論」とありますが、それが違います。上に書いたように多くの事象を観察し、そこから事実を推論することが必要であり、少ない事象からは精度の高い結論を得られるものではありません。

アブダクションを使いこなしたい方へ

アブダクションを使いこなすには、なによりも「事象の観察」が大切です。現実からどのように事象を読み取るかその能力を磨いてください。聞こえなかったら聞き返し、見逃しがあったかと思ったら立ち戻って見返し、確かな事象をできるだけ数多く確認する。

それこそがアブダクションへの扉を開くでしょう。

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