転職して考えたこと

仕事を変えたからといって自分自身の本質は変わらない。
これこそ、僕が今もっとも強く感じていることです。

では、僕がそう考えるに至ったまでの経緯をお話ししましょう。

転職まで

今からさかのぼること、約3年前。売り手市場といわれていた就活戦線の中でも、やはり勝者と敗者に否応なく分かれていきます。当時の僕は後者。2015年当時、僕が在籍していた大学では、ほとんどの学生が8月初旬にはいくつか内定を得ていました。

周囲を見渡せば、みんなが内定を得ています。焦ります。ただ焦り続けていました。
「もしかしたら自分は誰にも必要とされてないのではないか?」
「やはり特別な才能や努力をしてこなかった自分が悪いんだ」
こんな思いが日々自分の中を責め続け、息が詰まりそうでした。

しかし、捨てる神あれば拾う神ありです。少なくともあの瞬間は素直にそう思いました。その瞬間、つまり、内定通知が届いた瞬間。それは不意にやってきました。不安や絶望感も一瞬で吹き飛びました。

入社することになった会社は、社員数が約30人程度の歴史の浅い零細企業でした。近年は慢性的な赤字を垂れ流している会社ですが、特殊な事業のため補助金を受けて経営だけは何とか続けていました

さて労働条件についてですが、それはお世辞にも良い条件とは言い難いものでした。初任給は月給制で約16万円ほど。通勤手当こそは支給されるものの、住宅手当はなし。私の周りの友人たちは初任給19万円から21万円ほどだと聞いて、妬ましく悔しく思いました。最大で月50,000円ほど収入に差がつく計算です。正直言ってしまうと、なぜ友人たちの方が多く給与をもらえるのか疑問でした。私が彼らと比較して劣っているわけでもありません。それなのに給与の額は少ないのです。同じ何の実績も無い若者同士なのに、まだ実際に働いてもいないのに、現実として差がある給与。

「ああ、自分はダメな人間なんだな… 性格や人間性が悪いのか、それとも本当は能力が著しく劣っているのか」
当時はずっとこんなことを考え続けました。せっかく内定を得て喜んだのも束の間、大学卒業まで悩み続けどうしようもない劣等感だけが私の頭の中を占めていました。

就職、そして転職へ

就職してから2年半。紆余曲折はあったのですが、結局転職することを決心しました。もちろん、転職する主要な理由は給与に対する不満からです

仕事の傍らや、仕事が終わった後や休みの日に転職の準備を進めます。時には休みをとって面接にも行きました(これだけでまた別の話が書けそうなので割愛しますが)。

実際には、20社ほど書類を提出して、3社面接に行きました。最終的に1社から内定を得て転職することになりました。転職することになった会社は製造業です。給与は月給20万円という条件で、加えて住宅手当も支給されることになりました。新卒で入社した会社の初任給が月給16万円でした。退職するときは17万円ですので、基本給で3万円、住宅手当も含めると約4.5万円ほど収入が上昇しました。

収入を増やすことが目的でしたので、転職が良い条件で決まったときは素直にうれしさを感じました。

しかし、転職が決まって初勤務を終えてから1週間ほど経過すると、ふとある疑問が僕の中に湧いてきました。

疑問

さて転職してみると、これは分かりきったことですが、すぐに与えられた業務をうまくこなすことができません。前職が製造業ではなく異業種でしたので、経験を生かすこともできません。一応社会人3年目にあたるのですが、現在は新卒社員と同様に一から仕事を学びながら働いています。

しかし、なぜまがりなりにも戦力として働いていた前職よりも、まったく戦力になっていない現職のほうが給与が多いのでしょうか?

労働の対価とは、労働者の生み出す成果や能力に支払われるべきものだと僕は考えていました。ですから、能力が高い労働者は高い給与を得られますし、能力の低い労働者は低い給与しか得られない。一般的に、医師の給与は高く、コンビニバイトの給与が低いと言えます。医師には当然のことながら高い知識と技能が求められます。一方で、コンビニバイトは作業がマニュアル化されており誰でもできる仕事です(コンビニバイトの仕事が楽だと言っているわけではありません。念のため)。このような周知な事実からも、高い能力をもつ人間にはより多くの給与を得られると思っていました。

つまり、能力や成果に応じて給与は決まる。

しかしそうではありますが、このようにも考えられます。
「会社が違うのだから給与も違うんだ」

つまり、医者とコンビニバイトほど能力差がない限り、労働者の給与は能力に応じてではなく、就職する会社の経営状態や経営者の考えなどによって決まると、僕は今のところ、そう結論付けています。きっと医師間の給与差は勤務先の病院や研究機関に左右される面が大きいはずですし、コンビニバイトはどのオーナーが経営するコンビニに勤めるかで給与に差がつくでしょう。

会社と雇用契約を結んでいる限り、能力や成果に応じて給与が大きく異なることはないでしょう。ですから、大企業のほうが中小零細企業よりも多くの給与がもらえるケースが多いと思います。しかし、能力や成果に依拠して給与が決まっているわけではないからこそ、すべての労働者が一定の生活を保障されて暮らせるのです。

一般労働者が会社に売っているものは、能力や成果ではなく、その組織のメンバーとして一定時間企業に時間の使用決定権を委ねることなのです。

そしてこれから

約3年間をかけて、言語で考えるだけではなく、実際に学生時代の就活から今に至る転職を身体で経験して、労働と給与の関係性について一定の理解を得られた経験は大きいと感じています。

給与こそ転職してたまたま今の企業の業績が前職の会社よりも良かったため上昇しました。しかし、給与だけが上昇しただけで僕自身や生活自体は転職によって何も変化していません(給与が上がって家計が楽になったのは事実ですがそれだけです)。今後僕自身がどう成長するか、そして何を成し遂げていくか、これらが問われていくと思います。

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