ChatworkのUX負債返済の取り組み1 〜課題の整理〜
こんにちは。Chatworkでデザインマネージャーをしている仁科です。
今日は去年の暮れに自社イベントでお話ししたChatworkのUX負債について書いてみようと思います。
イベントの概要はこちらです。
登壇資料はこちらにアップしています。
なぜUX負債なのか
おかげさまで今年10周年を迎えるChatwork。
ビジネスチャットの普及により、導入してくださる企業様が年々増えています。
また導入企業様の傾向として、300名以下のノンテック系の中小企業様が大半を占めています。
そんな中でChatworkのプロダクト開発のメンバーは日々機能開発や改善に励んでいるのですが、普段から意識を高く持たないと、目の前の業務に追われて戦略的にUXを良くすることがおろそかになってしまいがちです。
…とかっこつけてはみたものの、Chatworkのプロダクトデザイン部は立ち上がってまだ2年ほど。
人数的にも体力的にもまだまだ一度に多くのことは進められないため、まずは現状のプロダクトのUX負債を整理して、今自分たちはどこに注力すべきなのか、できるのかを整理してみました。
かの有名な「UXの5段階モデル」になぞらえて、階層ごとに分解していきます。
1. 戦略 〜どんな課題を解決するのか〜
Chatworkには「すべての人に一歩先の働き方を」というビジョンがあります。
このビジョンの通り、自動化やリモートワークを始めとした時間や手間の拘束を極力減らし、やるべき仕事に集中し、仕事を前に進め、より人間らしい活動ができるようユーザーさんをサポートすることが事業に関わる全メンバーのミッションです。
Chatworkではユーザーさんから機能追加や改善要望をいただく仕組みがあり、そこでいただくご意見やご要望を元に、プロダクトチームは日々機能開発や改善に取り組んでいます。
ただ、日本におけるビジネスチャットのマーケットがやっとキャズムを超え、今後さらに一般化していく中で、「Chatworkならではのユーザーさんに寄り添った、"らしい"プロダクトを提供していくには、どんな課題の解決に取り組むべきなんだろう?」についても並行して考えていく必要があります。
いただいたご要望を叶えることも大切ですが、それだけではなかなか期待を超えられず、本質的なプロダクト価値の提供に至りません。
そのため、機会発見のためのUXリサーチや、全社的に認識を合わせるためのペルソナのアップデートなど、できることはたくさんあると考えています。
2. 要件定義 〜どんなストーリーで課題を解決するのか〜
デザイナーが要件定義に関われないと、極端に言えば「開発目線の作りやすさ」が優先され、ユーザーさんの使い勝手が後回しとなり、しばしば悲しい結果になります。
デザイナーは「欲しい」と言われた機能をただ作るのではなく、リサーチ結果やプロダクトのビジョンに基づき、実現したい世界や解決したい課題を定義し、解を見つけていくのがもっとも重要な役割だと考えています。
・この機能を通して解決したい課題はなんなのか
・本当にこの機能が課題解決につながるのか
という「Chatworkを通して、どんなストーリーで課題を解決していくのか?」の定義を、チーム全体が同じ目線で取り組むために働きかけていく必要があります。
フレームワークとしては、ユーザーストーリーマッピングなどを使ってデザイナーが要件定義の前段をファシリテートするなどができるのではないかと考えています。
3. 構造 〜実現できることをどう伝えていくのか〜
情報設計はプロダクトの思想を反映しながら、なおかつ自分たちが価値を届けたいターゲットユーザーの「メンタルモデル」にフィットしている必要があります。
よく、「Chatworkはシンプルな構造だから使いやすい」と言っていただけることがあるのですが、今後追加を検討している機能の体験で、今の構造のままだとどうしても実現できそうにないものが見え始めています。
・右カラムに本当に必要なのは概要欄とタスクなのか?
・チャット画面のあちこちからダイアログが出現する作りは、本当にかなえたい体験になっているのか?
こちらは既存レイアウトの少し細かい例ですが、このように既存のあり方を疑ながら、この先解決したい課題を踏まえた「Chatworkらしい情報構造ってなんだろう?」を議論していく必要があります。
ただ、大きなレイアウトの見直しはユーザーさんの使い勝手に多大に影響し開発コストもかかるため、日々の改善の範囲ではなかなか実現できません。
このようなデザイン主軸のアップデートプロジェクトを動かすチームの体力も必要になってきます。
4. 骨格 〜より早く、より深く価値を感じてもらうには〜
オンボーディンの最適化やKPI向上のためにも、ユーザビリティは重要だと考えています。
新規登録、アクティブ化、継続利用、有料プラン契約などの主要なポイントで、ユーザーさんが何につまづいているか、データとも照らし合わせながらボトルネックを明らかにして改善を回す必要があります。
また既存のいくつかの機能では、MVP(Minimum Viable Product)を優先して開発したまま、最低限の機能リリースで止まっており、定性、定量の両面での「Chatworkらしい使いやすさってなんだろう?」をもっと追求していく必要があります。
そのためには、定常的なユーザビリティテストの実施、数値を元にしたWhyの掘り下げをどんどんやっていきたいと考えています。
5. 表層 〜愛着を持ってもらうには〜
表層上のUX負債といえば、一般的にはプロダクト内のビジュアルデザインのバラつきによる整合性のなさがよく挙げられる印象です。
ですが、Chatworkではフォントサイズ、カラー、スペースの取り方などのベースのデザインガイドラインがあり、デザイナーはそれを元に日々デザインをしています。
なので破滅的な乖離や不整合はおこさずプロダクトの表層面維持できている(はず)なのですが、逆に言うと、このガイドライン自体をここ数年大きくアップデートできていません。
・Chatworkって少し時代遅れな印象
・お役所的な冷たいイメージ
ユーザーインタビューを通してこのようなフィードバックをいただくことも出てきているので、「Chatworkらしいベースデザインってなんだろう?」をいま一度見直す時が来ていると感じています。
💪今後の取り組み
こんな感じでChatworkのUX課題を5階層で整理し、今年から少しずつ負債返却にもチャレンジしています。
上に挙げただけでもこれだけやりたいことがありますが、Chatwork社内のプロダクトデザイナー はまだたったの6人。やりたいことのほんの一部しか着手できていないのが事実です。
・機会発見のためのUXリサーチ
・ペルソナのアップデート
・ユーザーストーリーマッピングの主導
・デザイン主軸プロジェクトの始動
・定常的なユーザビリティテスト
・デザインシステムのアップデートと拡張
またUX負債とは少し軸が異なりますが、Chatworkのプロダクトデザイン部は完全リモートワークに切り替えてそろそろ1年が経とうとしています。
今まで通りのコミュニケーションや、デザインのプロセスでは、スピード感やチーム力の簡単でも限界が来つつあります。
リモートワークでもコミュニケーションやプロセスのあり方も、早急にアップデートして行く必要が出ているなと感じています。
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最後までお読みいただきありがとうございました!
今後、どのように取り組めんだか、失敗談なども細々と書いていく予定です。