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なぜ日本の指導者は共和党を好むのか?

日本の英字新聞「The JapanTimes」の記事です。

Why do Japan's leaders prefer Republicans?(原文)


なぜ日本の指導者は共和党を好むのか?

誰がアメリカをリードすべきか?アメリカ大統領選挙に対する日本人の態度を見ると、日本の指導者と国民の間には、この質問の回答に興味深いギャップがあることがわかる。1984年の大統領選挙から現在に至るまで、日本の指導者たちは、例外を除いて共和党の大統領候補者を好むのに対し、日本国民は民主党の候補者を好むことが多い。

今年の選挙について、ギャラップと読売新聞が2019年11月に実施した世論調査では、日本人の76%が 「2020年にドナルド・トランプ大統領が再選されることは望ましくない 」と回答した。同様に、1月に実施された日経新聞の世論調査では、日本人の72%が「トランプ大統領が再選されることは望ましくない」と答えたのに対し、「再選される」と答えたのは18%にとどまった。2月と3月に実施されたNHKの世論調査では、日本人の57%が「トランプ氏の再選は日本にプラスよりもマイナスの影響を与えるだろう」と答えた(マイナスよりもプラスと答えたのは10.3%にとどまった)。

対照的に、日本の指導部−自民党の議員、官僚、経済界、ジャーナリスト、自民党に近い学者―は、大統領と安倍晋三首相の間に密接な個人的関係が築かれ、中国、ロシア、北朝鮮、国家安全保障などの問題で両者が政策的に一致しているとの認識に基づいていることもあり、トランプ氏の再選を概ね支持してきた。

この傾向は、『アメリカン・インタレスト』誌4月号に掲載された「対峙する中国戦略の美徳」と題する有名な記事で明らかになった。正体不明の「日本政府関係者」が書いたこの記事では、次のように主張している。「トランプ氏の予測不能で取引的なアプローチは、米国が中国に『責任ある利害関係者』になるよう説得する危険性に比べれば、それほど大きな悪ではない」と主張している。著者はどうやら後者が民主党政権のやることだと思っているようだ。


歴史

このように共和党を好む傾向は、常にそうであったわけではない。1960年代には、多くの日本人はジョン・F・ケネディ大統領を敬愛していたが、1970年代になると、多くの日本人はリチャード・M・ニクソン大統領を嫌悪し、特に1971年の「ニクソン・ショック」では、日本に相談することなく中国との関係を樹立し、突然ドルを金本位制から外して一夜にして円高になった。

1980年にロナルド・レーガンが大統領に選ばれたとき、多くの日本人は、元映画俳優が世界最強の国を率いることができるのかと疑問を抱いた。しかし、中曽根康弘首相がレーガンを巧みに操っていたことは、1980年代半ばに米国通商代表部で働いていた私が直接目の当たりにしたことだ。

さらに、共和党は、保護主義的な労働組合に支えられた民主党が二国間貿易紛争の主な原因であると日本に納得させた。1984年の大統領選挙では、ウォルター・モンデール前副大統領がレーガンに対抗して出馬した時、日本の指導部は共和党の方が民主党よりも日本の利益に貢献していると判断した。それはなぜだろうか?


共和党と自民党の親和性

第一に、共和党と自民党は1950年代から、特に冷戦時代にはイデオロギー的なソウルメイトであり、両党は反共産主義、反労働組合、親企業、親軍、親エリート、文化的に保守的であった。

第二に、1980年のレーガン政権から2008年のバラク・オバマ政権までの28年間、共和党がホワイトハウスを占拠した期間は20年間であったのに対し、民主党はわずか8年間であった。継続性、安定性、予測可能性を好む日本の指導者たちは、共和党に馴染み、民主党との関係を深める必要性をあまり感じていなかった。実際、自民党は1950年代から事実上の一党支配が長く続いたため、アメリカでは共和党が「政権を握っている党」であり、民主党がホワイトハウスを占拠していても、民主党は常に「野党」であると考えるようになった。

第三に、共和党は日本に対して、自分たちを自由貿易者、民主党は保護主義者として描いてきた。また、共和党員は日本に対して、日本よりも中国を重視する民主党員に比べ、共和党は中国に厳しいと言ってきた。共和党員の中にも保護主義者は少なくないし、民主党員の中にも中国に好意的な人がいないわけではないが、日本の指導者たちは、1990年代半ばにクリントン政権が行った枠組み協議の下での日本との対立的な貿易交渉や、1998年6月にビル・クリントン大統領が日本を「迂回」して9日間の訪中を行ったことで、今でも悪夢に悩まされていることもあり、このような語りには説得力があると考えているのだ。これは、クリントン大統領が大統領として5回も日本を訪問しているにもかかわらずだ。歴代大統領の中では最も日本への訪問回数が多い。

第四に、共和党がホワイトハウスを占拠すると、民主党員は通常、大学やシンクタンク、法律事務所に戻る。しかし、民主党がホワイトハウスに入ると、多くの共和党員は商売の世界に戻り、ビジネスをしながら日本との結びつきを継続する。これは、日本人にとって大切な人間関係の継続と、共和党員と日本のビジネス界との間に経済的利益の共有が生まれることにつながる。

第五に、日本人は共和党員は基本的に商いに興味を持っているので、ビジネス契約のような金銭的な報酬を与えることで彼らを満足させることができると結論づけている。一方、民主党員は、アイデアや政策対話、知的な議論に興奮し、感銘を受けていると見られている。

第六に、日本の指導者と共和党員の間には長年にわたって密接な関係が築かれてきたため、日本のジャーナリストや学者の中には共和党員の忠実な支持者となり、マスメディアを通じて日本国民に自分たちの世界観を伝えている人もいる。

第七に、多くの日本人は、共和党員は個人的に寛大で、義理人情や浪花節などの日本の伝統的な人間関係や感情を温かく受け入れるのに対し、民主党員は冷たくて傲慢でドライであることが多いと思っている。

第八に、一部の日本人は民主党の多様性と包摂性に不安を感じ、より均質で排他的な共和党を好む。

最後に、民主党は、普遍的な価値観(人権など)を説き、日本がそれを守ることを期待し、守らないときは非難すると見られているが、日本を扱う共和党は、北朝鮮の日本人拉致問題や日本のクジラ狩りなど、日本特有の問題に理解と共感を示すことが多い。日本人の中には、2013年12月に安倍総理が靖国神社を参拝した際に、オバマ政権とは異なり、共和党政権であれば「失望」を公に表明することはなかっただろうと主張する人もいる。


展望

2016年、32年ぶりに日本の指導者の共和党への選好がシフトした。大統領選時の日本の指導者は、フロリダ州のジェブ・ブッシュ前知事やマルコ・ルビオ上院議員などの共和党員を好んでいたが、総選挙でトランプ氏とヒラリー・クリントン氏の二者択一に直面した時、日本の指導者は、国務長官として安全保障上の同盟国として、また経済的パートナーとして日本を大切にする姿勢を示していたクリントン氏を好んだ。

しかし、トランプ氏の勝利によって、日本のリーダーたちは共和党を支持するという既定の立場に逆戻りしてしまった。そして、安倍総理はかなりの忍耐と粘り強さで、他の多くのG7のリーダーたちよりも、トランプ氏との個人的な関係を良好に築いてきた。自民党内では、トランプ氏が再選された場合、安倍氏が時間と労力を費やして培った親密な人間関係を生かすために、安倍氏は自民党の総裁(兼首相)を3年で4期務めるべきではないかという意見もある。

11月3日にトランプ氏が勝利すれば、日本の指導者たちは、継続性と親しみやすさが勝ると考え、安心するだろう。バイデン氏が勝利すれば、日本の指導者たちは新政権との関係構築に向けて迅速に調整するだろう。2016年に安倍首相がニューヨークに飛び、トランプタワーで次期大統領と会談したように(外国の国家元首としては初めて)、安倍首相は当選から10日も経たない11月17日にトランプタワーで会談した。このように、安倍氏は、ジョージ・W・ブッシュ、オバマ、トランプ、そして現在のバイデンといった多様なアメリカ大統領を相手にしてきたことで、首相としての回復力を示すことができるだろう。


雑感

個人的にはバブル崩壊後に民主党がやった「ジャパン・バッシング」が大きいと思っていたのですが入っていなくて意外でした。
実際にはバブル崩壊前の共和党政権時代からあったのですが、こういったバッシングは悪い時の方が鮮明に覚えています。クリントン時代には市場開放を高圧的に内政干渉にも近い形で要求していますし、結果的にほとんどの米国側の要求が実現されています。また、米国側の要求は一切の妥協をしないという姿勢だったため、日米共にWTOに提訴する事態にまで発展しています。

いずれにしても、安倍首相が退任したために、トランプ大統領の予測不能な動きをを考えると、日本の指導者達にとってはどちらの大統領が良いのかは分からなくなってしまいましたね。

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