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A氏に向けたレビュー | 高畠華宵展 in 弥生美術館

たったひとりに向けて、書こうと思います。

夏だ。美術館に行きたい。弥生美術館でやってる『大正ロマン・昭和モダンのイラストレーター 高畠華宵展 ージェンダーレスなまなざしー』が気になっている。どうしようか、うむ。そんなあなた(仮にA氏とする)に向けて。

大学生の頃、私は「美」に異常な執着を持つ二次元キャラに入れ込み、グッズ収集や二次創作に勤しんでいた。推しが口にする「美しい」の範囲は非常に狭く、「自分以外全員ブス」くらいの極端さだった。

たしかに、希少なものはわかりやすく美しい。美人とか。宝石とか。絶景とか。

でも。

歳を重ねるたび、美しいと感じるものが増えたように思う。炊く前のご飯粒。道端に生えている地味な草。カフェの片隅で死にかけている小虫。……こう並べて見ると、単に私が疲れているだけなのかもしれないけれど、ささやかなものに美しさを見出せることは、幸福な特技であると思いたい。

高畠華宵展がやっている弥生美術館は、東大のすぐ裏にある。

ちょっと前に最終回を迎えた東大受験ドラマ『ドラゴン桜』を観ていた私は、東大のレンガ塀を横切っただけでテンションが上がった。塀でここまで楽しませてくれるなんて。東大ってすごい。

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はじめてお邪魔する、弥生美術館。歴史を感じる素敵な佇まい。竹久夢二美術館が併設されていて、渡り廊下でつながっている。

一枚目の写真にあるように、木の看板に書かれた文字の一部が見えなくなるくらい強い日差しが照りつける、夏の絵日記の1ページ目を飾れそうな日だった。

蝉の鳴き声が、最高に似合う。梅雨の時期に来たら、全然ちがう印象に映るんだろうなと妄想した。

いきなり感想を言ってしまうと、とてもよかったです。

A氏もきっと気に入るはず。発見があった。見応えもあった。なにより、美しかった。

高畠華宵氏の絵柄は知っていたので、隙のない完璧な美が描かれているものだと思い込んでいたけれど、そうじゃなかった。これが発見。

「美しい」が、広かった。

たとえワラを纏って震えている姿でも、吐血している姿でも、その一瞬が美しく愛おしいものとして描かれていると感じた。スタイルがよくてオシャレで明るい美人に限らず、どんな女性も素晴らしく素敵だ、というような言葉ものこされていて、胸がきゅんとなった。

当然だけど、デッサン力も卓越していて。線がきれい。本当にきれい。これが見応え。うっとりと眺めた。

高畠華宵氏が美しいと思って描いた少年少女が、今もここにいる。

1966年に亡くなっている華宵氏と、1985年生まれの私は同じ時間を生きていないけれど、華宵氏の感じた美しさを目にすることができている。絵ってすごい。

美術館で作品を観るのが好きだなと思うのは、こういう共有ができるから。

作品のモチーフなんて、砂漠の砂レベルに果てしなくたくさんあるのに、そのなかから、作家さんが「これ!」と感じて、かたちにのこしたもの。これこそ「尊い」だなと思う。



華宵氏が思う美しさ。かつての推しが思う美しさ。私が思う美しさ。

重なるところも相容れないところもあるから、面白し、知りたくなってしまう。

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コロナの状況もあってか、私がお邪魔した日、展示室は空いていた。落ち着いて観られてありがたいと思う一方、もっと多くの人にこの美しい作品たちを観てほしいとも思った。

いや、でも、こんな状況だし。いやいや、でも。多くとは言わないけれど、たったひとりでも、このnoteをきっかけに弥生美術館へ足を運んでもらえたらいいな。

ここまで読んでくださったことに感謝しつつ、A氏が、あなたであることを願うばかりです。

高畠華宵展
弥生美術館にて2021年7月3日(土)〜9月26日(日)
※事前予約制 ※7月29日現在

追伸。

弥生美術館の敷地内にある、夢二カフェ『港や』にて。高畠華宵展を記念した、カルピスっぽいお味の飲み物をいただきました。その名も『ジェンダーレスなまなざし』。

ちょっとした仕掛けがあるようで、これに、レモンの果汁を入れると、

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ピンクに変わりました。かわいい!

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