ショートショート『メロンパン』

食いだめができない人間は、毎日何かしら口に入れてそれが消化されるまで活動を行う。それは数時間、人によっては半日くらいだろうか。
とにかく何かを「食べたい」と感じられているのなら、感じられるなりに、時々は特別なものを与えないと人は食べる気力をも失いそうになる。

だから私はひとり、メロンパンを食べる。
メロンパンは、食事なのかおやつなのか分からない部類だからだ。
大体は大きくて、クッキーのような歯切りのよい生地に、ゆっくり噛めるように意図的に設定されたようなフワフワの中身。中には周りに砂糖がかかっているものもあり大人になっても絶対に口の周りに付く。その瞬間にすこし年が若くなったような感じがするのだ。

ふと視線を横に向けると、同じように頬張る子供が一人。
まだつま先のつかない短い足をバタバタとさせると、メロンパンで顔を
いないいないばあとさせている。
いかにも温度が高そうなほっぺを母親に見せてにっこりとほほえんだ。
今は同じひとときを感じている。
子どもの気持ちになっている。

それは、スキップのように軽やかだった。





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