真っ暗な楽園から。

 真っ暗なんだけど何だか怖くなくて,明かりもないのに明るい,ただ周りが黒いだけの四角い箱の中。気がついたらそこにいました。

 そこにはおじいさんと小さな女の子と男の子が2人で遊んでました。私は2人に「私も仲間にいれて」と声をかけて,3人で楽器を叩いたり,誰が1番高くジャンプできるか勝負したり,走って壁にぶつかって跳ね返ったり,沢山楽しいことをして遊びました。おじいさんは私達を少し離れたところから見てて,たまに紅茶をいれてくれました。

 ある時おじいさんは女の子に言いました。「あなたはもう行く時間だから。ここからジャンプして下に降りてね。」部屋は全部真っ黒で段差の境目も下も何も見えないはずなのに,前まではただの何もない四角い箱だったのに,そこには確かに段差がありました。
 女の子はおじいさんに返事をして私たちに「また遊ぼうね」と言ってくれました。私と男の子も「また遊ぼうね」と言って手を振ると,女の子はその段差をジャンプして下に降りて行ってしまいました。それが少し寂しくて,おじいさんに「私も一緒に行きたい。降りてもいい?」と聞くとおじいさんは「貴方はまだ行く時間じゃないから。絶対にまた会えるからもう少しだけ待っててね。」と言いました。私はわかったと返事をして,男の子と2人でまた同じように遊んで過ごしました。

 女の子と別れてから少し経った頃,おじいさんが私を呼び言いました。「あなたはもう行く時間だから。ここからジャンプして下に降りてね。」それを聞いた私は,もしかしたら残された男の子が1人で寂しいかもしれないと思い,男の子も一緒に連れていこうとしました。しかしおじいさんに「この子はまだ行く時間じゃない。また会えるから大丈夫。」と言われてしまい,私はそれなら仕方ないと男の子に「また遊ぼうね」と手を振ると,男の子も「また遊ぼうね」と返してくれました。
 さっきまで何もなかったのに気がついたらまた段差がありました。段差の前に立って下を見ると真っ黒で何も見えません。下が見えない段差から落ちるのは少し怖くて,おじいさんの方を見ると「貴方なら大丈夫だよ。」と声をかけてくれたので,目を閉じて勇気を出してジャンプしました。

 ゆっくりと,ゆっくりと下に落ちて,落ちて....。すると目を閉じていてもわかるくらい,段々周りが白く明るくなってきました。「(あっもうすぐだ。)」と思い,眩しい光の中少しずつ目を開けてみると今度は白い部屋の中にいて,次の瞬間お母さんと目が合ったのです。

おわり

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