あいどる
私はきっと世の中で言う『アイドル』という枠組みにいるのですが,あまり自覚していなくて,活動していく上で「何してる人?」って聞かれても「一般人の学生です」って答えることが多いです。きっと私は『アイドル』って枠組みが苦手なのだと思います。
私は人生で『アイドル』というものに興味を持った事がなく,TVで見る情報くらいしかなくて,そこで見る『アイドル』はみんなキラキラでいつも明るく笑顔でした。人生で結構色々な方に「アイドルやらない?」とか「なればいいのに」と言われる事が多かったですが,その度に「(キラキラしてないし,それを求められても期待に応える事ができないしなあ)」と思ってました。私にとってアイドルになる事が無縁な1番の理由は,この世間で言われる『アイドル像』とか『アイドルらしさ』というものが苦手だったからだと思います。
いつも明るく笑顔でいなきゃいけないとか,純真無垢で恋愛禁止で,ファンの男の人に対しては色恋しなきゃいけないとか。推してもらえるように,好きになってもらうために自分自身を抑圧して,見た目はもちろん発する言葉も行動も性格もやりたいことも,内面から外見まで,社会が求めるものとか需要のためにどれだけ中身の自分を出さずに,自分のようで自分ではない『アイドル』としての自己を確立したものを生み出して,その自分をいかに上手く演じるかのような気がして。
アイドルは人生かけてやらなきゃとか,アイドルなら自分のこと推してくださいって言わなきゃダメとか,『アイドル』になってこういう言葉が沢山耳に入るようになりました。「このアイドルさんに元気をもらって,自分もこんな風に元気を与えられるように!」とか「キラキラしてるのを見て自分もこうなりたいと思って」とか「子どもの頃からアイドルになりたくて」,「人生かけてでもアイドルになりたいです」とかそんな子も見ました。
きっと本当に『アイドル』になりたい子はアイドルとしての自己が確立できていて,素の自分も出しつつ,このようなアイドルとして求められるものが場面や状況で切り替える事ができたり,自分を抑圧するという辛さ以上にアイドルでいる自分とかアイドルに対する価値が高いのだと思います。
私や社会が求める(思う)『アイドル像』は同じだけど,私はその『アイドル像』に当てはまらないから自分がアイドルっていう自覚がなくて,だけどアイドルって肩書きを持った瞬間に『アイドル像』を押し付けられて,アイドルに対する私の意識とか価値観が周りのアイドルとさも同じかのように扱われるので,中身の私は置いてけぼりです。
ミスiDにエントリーする時に興味のある職業とか分野を選ぶ項目があるのですが,私が選んだのは被写体とカウンセラーでアイドルを選びませんでした。エントリーする時一応アイドルだったのにね。こういう場で求められる『アイドル』はきっとこういう社会で求められる職業としてというか,アイドルらしさを持った人の事なんだろうなあと思うと選べなかったです。
私みたいに何にも経験してなくてダンスもろくに踊れなくて,武道館に立ちたいとか,売れたいとか有名になりたいとかすごい理由もなくて,ただ年齢ってもので出来なくなるものを出来なくなる前にやっておこうとか,人生に途中で飽きちゃう前に,人生を楽しむ手段の1つとしてやってみようとか,誰かの記憶に残るためって気持ちで始めた私には『アイドルらしさ』なんてものは微塵もなくて。
『アイドル』ってものになってみて,社会が求めている『アイドル像』に応えられない葛藤とか枠組みに無理やり入れられてる苦しさはあるけれど,それ以上にこうした今があるから出会ったことのない人に会えて,仲良くしてもらえたり,いつもは配信とかでしか会えなかった人がライブっていう機会ができて会えるようになったりしたので,そういう人に会えるのは嬉しい。踊ってみたをこれが自分だったらって見てるだけで避けていた苦手なダンスをやってみて,自分の動きを見ても格好悪いなとか思うように身体が動かなくてもどかしくても,それでも練習する時間は嫌でも苦でもないし,下手くそで見せられるものではないかもしれないけど,それでも自分が好きなように歌とか踊りとかを表現する時間はとても楽しいです。ライブでそれを披露して,表現して,見てくれる方が楽しそうにしていたり,笑顔で見ているのを見る時間は私も楽しくて幸せです。
書いていてアイドルってやつに自分からなりにいったのならちゃんとらしく振る舞う覚悟と責任を持って始めなきゃだよなあと思ってます。本当に自分の気持ちだけで動いちゃって,やりたいようにやりすぎていて周りに申し訳ないです。私のためにかけてくれるお金とか時間とか期待とかを無駄だったって思ってほしくないから,少しでもどんな形でも返せるように,与えて良かったって思ってもらえるように,やっていく上で手を抜いた事は1度もないです。私が私のために始めて,その上好きなようにやっていて,周りに比べると全然出来ていないし,アイドルでどうなりたいとか明確な目標もなくて,『アイドルらしさ』なんて微塵もないのに,そんな私を応援してくれて,良くしてくれて,続けさせてくれて,挑戦する機会をくれてありがとうございます。
「歌って踊れなくても,金髪でも,引きこもりでも,誰かの明日を元気にできれば,それはもう誰かのアイドル」っていう概念的な『アイドル』がもっと広まりますように。社会が求めるキラキラでいつも笑顔で明るい『アイドル』にはなれないけど,少しでも関わって良くしてくれる人にとってこんな風に思ってもらえる『アイドル』に私はなりたいです。
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