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自分の意思なんてまるで持たない君を、少しずつ、少しずつ消費していく。

君を僕のものにすれば、僕が多少過ちを犯しても君の力でまるで最初からそんなものはなかったかのようにしてくれるでしょ?





頼りがいはなさそうだけど小さくて可愛らしい子,すらっとしていて細かいところまで気の配れそうな子,一つ一つのパーツが色とりどりで個性的な見た目な子。色んな子がいる中から1つ、王道に清楚で純白な君を選ぶ。

結局こういう子が1番扱いやすいんだ。他の子もとても魅力的だが僕が最も求めているものには応えてくれなかった。若い頃はそれぞれに魅力を感じて色んな種類の子を選び、遊んでは途中で飽きて、誰かに譲ったり関わりを切って捨てる、なんて酷い事を繰り返していたが僕ももうそれなりに歳だ。今ではそんな魅力に惹かれることも減った。

普通でいい。君を手に取り店の人にお金を渡す。

姿形も整っていて、真っ白で何の汚れもなくて、ちゃんとした服を身にまとっている。まだ誰も知らない、そんな綺麗な君をこれからどう汚していこうか。

綺麗で形のあるものを僕の手で、僕の欲のためだけに汚して壊す瞬間。少しの緊張と高揚感で息が詰まる。僕以外に汚される君は見たくないし、僕以外の人に僕がまだ手をつけていない君の綺麗な部分を汚されるのなんてごめんだから、大切に、大切に閉じ込めておかなきゃ。





なんて感情は最初だけ。

消費して君が汚れていく度に扱いなんて雑になっていく。「僕だけの」なんて独占欲もなくなって、まあ少しくらいなら友人に使わせてあげてもいいかななんて思ったりなんかして。慣れると所詮こんなもんだということをすっかり忘れていた。

君はどんどんすり減って僕に使われるたびに汚れていく。最初はあんなに綺麗だった服もぼろぼろになってしまったし、サイズも合わなくなってしまったけど、剥き出しのままは寒くて可哀想だし見栄えも悪いから、無理やり縫い付けてでも着させてあげよう。



それから何年君と過ごしたんだろう。あれから君はさらに小さくなってしまった。人生で間違いばかり起こしてしまう僕には君はなくてはならない存在だと改めて実感する。長い期間を経て君をこんな姿にしてきたのは僕なのだと思うとまた徐々に愛着が湧いてくる。

そういえば僕はこれまで色んな子を選んで、それなりにその子に執着しても、その子の最後を見たことがなかった。人生で一度も。だって気づいたらみんな僕の元からいなくなっているのだから。



今度こそ最後がみたい。



初めて同じ相手と長年共に過ごせて、最後を見届けるができるかもしれない。そんな機会ができたんだ。どうせなら君がいい。今度こそそれがどんな風にこの世界から形を消すのか、それが僕の手で消される瞬間を味わいたい。

そう感じてから改めて君を丁寧に扱った。必要な時は外に出して、必要がない時はしっかりとまた閉じ込める。友人にも貸すことは無くなった。

「もう次を探せばいいのに」「なぜまだそれにこだわるのか」なんて言葉すらかけられた。こいつらもどうせ最後を見たことがないのだろうし、見たいだなんて考えたことすらないのだろうと思うと、新しくて綺麗なものにしか目の向かないなんて愚かな奴らだと心の中で馬鹿にする。代わりなんてどこにもいないのだ。



君の扱いにも慣れてきた。そう思い油断した矢先だった。閉じ込めたと思っていた君がいない。最後に君を使った記憶を頼りにあらゆる場所を探す。小さくて白い君は隠れるのが上手くどれだけ探しても見つからない。

君の形がなくなるまで見たかったのに。

案外僕は君のことを気に入っていたらしい。また僕の望みは叶わなかった。最初からやり直しだ。























僕が君だけを見ていた間に、また新しいタイプの子が入ったらしい。気分転換に今度は王道な子じゃなくて少しだけ変わった違うタイプの子にしてみようかな。新しい子を手に持ってお店の人にお金を渡す。

今度は気付いたらいなくなってた、なんて事にならないようにしなきゃ。全部形なんてものがなくなるまで使いきってやろうとまた丁寧に箱に閉じ込める。

















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